恐怖の始まり
クリスマス。
去年までは、友達と一緒によくパーティーを開いていた。
みんなで次の日の夜まで遊んだ。
今年は高校を受験して、遠い地まではるばるやってきた。
だから、今年のクリスマスはまた違う人たちと過ごそうと思う。
・・・ここは、日本国第八防衛拠点・・・「福岡」
小学校のころに習ったけど、昔鉄をたくさん作ってたんだとか。
今は知らないけど。
僕・・・対馬 暁は、名字をみればわかるけど・・・北海道出身。
今、この福岡に来て9ヶ月目。
高校一年生・・・といっても、学生が変わって、1年で卒業できるコースもあるので、それをとったんだけどね。
なんでここに来たかって?
答えは「出稼ぎ」をするため。
両親はどっかに消えちゃってよくわからないし、15年間育ててくれた親戚も仕事が忙しい。
てことではるばるここまで来た。
学校に通いつつ、夜はとあるカフェでバイトして生活費を稼ぐ日々。
あと3カ月して卒業すれば、工場に勤められるんだけどね。
ま、それまでの辛抱かな・・・
バイト先のカフェの名前は「イーグルフォース」。
店長さんが鷲が大好きらしい。(あったことないけど)
「アキさん、お客さん来たよ。接待接待!」
「あ、了解。いらっしゃいませ!」
「アキさん」と僕のことを呼んだのは、竜田息吹さん。
通商竜さん。
この店ができた当時から働くベテランさん。
僕をバイトに誘ってくれた恩人。
今日は、そんな竜さんと二人で接客していた。
バイトしながら思ったのだが、今日はクリスマスとあって客が多い。
(クリスマスなのに二人って、店長は何考えてんだ・・・)
深夜0時、閉店して鍵をかけた。
「二人ともお疲れ様。今日は大変だったな」
「店長は何考えてるんでしょうね。クリスマスに店員二人とコック一人って・・・」
「ふむ、それはあとで店長に抗議せねばな」
僕に話しかけてきたのは、この店のコック兼、教官。
名前は蝶野紅一。
この店で、店長よりも仕事が大変なんだとか。
「教官」と呼ばれるだけあり、すごい情報量た知識を誇る人だ。
「アキはこの後時間あるか?」
「あ、まあはい。明日は学校休みなので」
「ふむ、そうか。では、その椅子に掛けたまえ」
カウンター越しに、長い話は始まった。
「最近、またこの拠点内に「難人」が出たとの情報が入った」
え・・・?
「難人」。
この世で僕ら普通の人間が恐れる存在。
人体を改造され、魔物のように暴れ、盗み、殺し、争う。
僕らにとっては「敵」みたいなものだ。
「アキはみたことあるかね?「難人」を」
「いえ、見たことないです」
「あんなのには近寄っちゃいけないし、見たと思ったらたぶん殺されてますよ」
「まあ、そうだな」
蝶野さんはつづけた。
「では、それに対する対抗手段は知っているかな?」
「・・・あるんですか」
ないと思っていた。やつらを倒す手段は。
「我々、難人に改造されていない人間のみができることでね。簡単に言えば、鉄で体を武装する「超能力」と言うべきかな」
蝶野さんは、真剣な顔で話を続けた。
「ある日突然、体に六角形の紋章が現れてね、その部分が硬くなるそうだ。んで、その紋章が出た者には、全身を鋼で武装する超能力が使えるらしい」
「いろいろ質問したいのですが・・・なんでそんな風に、突然超能力が使えるんですか?」
「・・・さあな。まだ謎に包まれているな」
予感的中だった。
「ただ・・・」
ただ・・・?
「難人に改造された者はこうはならないらしいから、それが関係しているのかもな」
まあ、化け物が強化されちゃ困るもんね。
「それと・・・これは噂だが、能力が目覚めたときに声が聞こえるらしい」
「例えば?」
「よくは分からんが・・・とにかく、鉄でできた物・・・例えば戦闘機、刀・・・あとは、神様の名前とかな」
「難かどこぞやのテレビゲームで見る展開ですね」
「私も、最初はそう思ったよ。ただ、このおかげで科学的な根拠ができた。」
「というと?」
「人の血液には、鉄分が含まれているだろ?あれに、なんだかの形でその・・・魂みたいなのが宿り、そいつで鉄を操るのではないかとね」
ごめん蝶野さん、僕理科の成積悪いんだよ・・・(泣)
「実際、能力が使えるものの大半が血液中の鉄分の濃度が濃いらしいぞ」
「へー」
で、そろそろ言おう。
「ごめんなさい、今日は終わりにしませんか?」
もう夜中の2時だった。
「それじゃ、難人に気をつけてな」
「はーい」
アパートへの帰り道、僕ははっと気付いた。
(竜さん・・・いつの間にいなくなったっけ?)
今さらだが、蝶野さんと話してる間に消えていた。
ま、いいか。
アパートまであと100mとなった。
最後の丘を登ろうとした・・・その時だった。
上から、血が降ってきた。
見上げると、二人の青年が立っていた。
一人は体を鉄で武装し、刀をもった・・・鋼鉄の能力者。
もう一人は、背中から触手が生え、その先端が刃のように尖っている。
そう「難人」だ。




