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ラッキースケベもとい無意識の事故と不都合とは

 「エシリアさん?」

部屋を訪ねてきたエシリアさんに俺は言った。

「どうしたの?皆と一緒に晩御飯を待ってなよ。

アレな部分は多いけど悪い奴らじゃないからさ」

「いえ、皆様の前では言いにくいこともあります。

改めて今回の件についてお礼を申し上げておこうかと」

そういうことか。

「じゃあ、断っておくけど何も考えて無いから。

とりあえず部屋の中で話そうか?」

「そうさせて頂けると助かります」

エシリアさんは独特の雰囲気があるなぁ。


 「では、改めまして今回の件をご了承頂きましてありがとうございます。

社交辞令ではなく、私は心から椎名様に感謝しております」

エシリアさんは改まり畏まって俺に再度そう言った。

「いやいいよ、こちらにだってメリットが無いわけじゃないし。

それに両親には既に承諾を得ていたんでしょ?

俺が家主ってわけじゃないし、ホームステイだと思えば気楽なものだよ」

どっかの星の王女様ということを除けばだが黙っておこう。

「えぇ、ご両親にはこの星に来る前に承諾を得ておりました。

こちらに来たはいいけども行く宛が無いのも困りますし

かといって長期間ホテル暮らしというのも王女には負担になるかと考えておりましたので。

それに、先程は言えませんでしたが王女にとってもいい経験が積めるかと思います。

結果がどうあれ」

「結果?」

「椎名様のことです」

「あぁなるほど、一緒に暮らせば人間性もわかりやすいってことかな」

「それもありますが、王女はああ見えて見たまんまですから」

そういうことか。

「嫌な言い方をすれば、世間知らずのお嬢様育ちってところか」

代弁してあげた。

「ですので、少しでも異性のことを知るチャンスでもあります。

先程も申し上げましたが後継者のこともありますので」

否定してやれよ。

「それなんだけど、王女様の後継者ってことは

兄弟とかいないの?」

「いえ、王女様は一人です」

「なるほどねぇ、血筋を途絶えさせるわけにはいかないのか。

そういうのって俺みたいな人間には全く想像もつかないんだけどな。

そう言えばマザーコンピューターがどうとか言ってたけど

俺みたいな人間でいいの?

例え遺伝子が優秀でも昔からそういう教育を受けている人間のほうが良い気がするんだけどな」

「大変申し訳ありません、先に謝っておきますが

私としましては椎名様は全く問題が無いと考えております。

ですが、この度はそれも見定めさせて頂ければと」

何故かわからないけれど信頼してくれてるのが謎なんだよな。

悪い気はしないけどさ。

「エシリアさんは俺の何を知って、そう考えてくれてるの?

勿論信頼はとてもありがたいけど、勝手に信用されて勝手に裏切られることだってあるだろ?」

「はい、それについては多少理解が難しいかと思われますが

私共の星ではある特定の能力を持つ者が稀に産まれます。

その能力とは『魂』を見るというものです、極めてアバウトな言い方で申し訳ありませんが」

「いや、謝ることじゃないよ。

でも魂?そういえば『いい魂をお持ち』だとかなんとか言ってたね。

あれってそういうこと?」

「ご理解が早くて助かります。

受け取り方や見え方はそれぞれですが私の場合は『色』として

その者の魂の特色を見ることが出来ます。

例えば椎名様は暖色で非常に穏やかでいて落ち着く『色』をしておりますね。

いつでも見えているわけではありませんが、集中すれば見ることが出来ます。

魂には嘘は付けません。ですので情報としてはある程度信頼が置けます」

にわかには信じ難いけれど、謎の信頼はそのためか。

「合わせて、その人に接触すれば自ずと見えるものもあるというものです。

この能力は王女もお持ちになられております」

「へぇ、クラニーちゃんにも見えてるのか」

なるほど、委員長やゆずを見てもあまり警戒している様子が無かったのは

ある程度ひと目見れば危険人物かはわかるってことか。

「人の魂は移ろいゆくものです。

あることがきっかけで魂は汚れたりします。

勿論逆に淀んだ魂が輝きを取り戻すこともあります。

王女様にはそういったことも学んで頂きたいのです」

「ふ~ん、まぁそういったことなら平民社会に馴染むのはいいかもね。

良くわかったよ、別に俺としては異論は無い。

後継者がどうとかはさておいて、ゆっくり出来れば何よりだと思う。

時間をかけて理解することもあるだろうし、さっきも言ったけど断る理由も無いしな。

それと、クラニーちゃんとエシリアさんって昔から一緒にいるの?」

「はい?……えぇ、昔はですね。

王女様とはよく一緒に遊んだものです」

……ん?


 その時、遠くからゆずの声が聞こえてきた。

カレーが出来上がったのかな。

「呼んでるみたいだ、行こうかエシリアさん」

「はい、そうですね。

また何かありましたら後日お時間を頂ければと思います。

勿論椎名様が気になることがございましたらいつでも」

「あぁ、わかった。

じゃあ、改めてこれから宜しく。

俺は男だからよくわからないこともあるけど、その辺は気をつけてくれよ」

手を差し出すとエシリアさんも笑顔で応えてくれた。

「宜しくお願い致します。私も王女様も」


 「お~い、晩御飯のお時間ですよ~。

お腹が減った子はどこか~~!?」

ノックもせずに俺の部屋を開けた幼馴染であった。

「おいおいおい、逢引ですかお二人さん?!」

「そんなんじゃねぇ、今回の件でちょっと話してただけだ。

何でもそういうのに結びつけるな」

そう言いながら俺はゆずの頭にチョップした。

「いでぁ!も~、我々のオリジナル創作料理が出来ましたから。

お呼びに馳せ参じた次第ですぜ旦那」

「カレーじゃなかったの!?」

任せるものじゃなかったか。

「各国のカレーを再現してみましたが」

「それを早く言えよ。ありがとう、じゃあいただきますかね。

エシリアさんも、行こう」

なんとなくだが、俺はエシリアさんに敬語を使わないようにしようと思った。

この人はまだ何か俺に話すべきことがあるような気がするが

かといって、警戒するようなものでも無いはずだ。

俺には魂なんて見えないが、直感を信じてみてもいいだろう。

話すべき時がきたら話してくれるはず、それを信じよう。

何かあったら、その時はその時だ。

これが俺の生き方なのだから仕方がない。

「はい、椎名様・新宮様ありがとうございます」

「も~、ゆずでいいってエシリアちゃん!!

食事は皆で食べたほうが美味しいからね!気にすることねぇデス!!」

「お前は自分の家があるだろ」

そう言いながら、ゆずはゆずで恐らく新しい友だちを歓迎する意味もあるのだろう。


 「おせーデス!テメーら一体部屋でこそこそ何してたデスか?

ついていこうとしたらエシリアに睨まれるデスし……うぅ~!!」

リビングに戻るとクラニーちゃんがじたばたしていた。

「それはまた後で話すから、別に特別秘密にするようなことを話したわけじゃないよ。

両親にどう説明するのかとか色々あるだろ。

あとそうやってると普通にパンツ見えるから」

「なっ!!エロ!エロです!!HENTAIです!」

「ていっ」

クラニーちゃんの頭にチョップした。

「いたっ!こいついきなり何するデスか!?

不敬罪デス!!引っ捕らえるデス!!」

「クラニーちゃん、これから宜しく」

半ば強引に握手してみた。

「お、おぅ……よろしく頼むデスよ」

可愛いなこいつ。


 「皆さんおまたせしました。妊娠するくらい美味しいよこれ~」

委員長が皆に配膳する。

「……何か入ってないよね?」

八代さんの例えはよくわからないよ。

「普通のカレーだよ?子宮に響く感じの」

「カレーってそんな感じの例え使わないでしょ!?」

「じゃあ、なんだろう。美味しいよ?」

「普通!残念な普通!!」

「テメーら、いいからさっさと頂くデス。

うるせーデスよ、カレーとやらにワタシは興味があるデス。

はよ食わせろ、デス」

「わーかったよ、悪かった。じゃあ頂きます」

……普通に美味しいカレーだった。


 「さてさて、我々は帰りましょーか!

クラニーちゃん、私お隣さんだから!これから宜しくね~」

「テメーまでちゃん付けデスか……まぁいいです。

こっちじゃワタシも一市民とかわんねーデス。

困った時はお互いよろしく頼むデス」

ゆずが満面の笑みでクラニーちゃんの手を振っていた。

「では私も帰ります、ごちそうさまでした」

「あぁ、別に気にしなくていいよ八代さん。

ピッキングの件はもっと気にして欲しいけど」

「オトメの嗜みというやつです」

「オトメは民家に勝手に入ったりしないよ!?」

「すみません、謎の発光が気になったものですからつい」

なるほど、確かにアレは目立ったかもしれない。

「いやいや、ウチに入る理由になってないから」

騙されるところだった。

「では、皆さんさようなら」

「じゃあねーシーナ。エロいことするなら私を置いてっちゃダメだよ?」

ゆずが上目遣いでこちらを見る。

「しねぇよ、死にたくないからな。

自分も混ざるみたいな言い方をするな」

勝手にそんなことしたら本当に頚椎を折られそうだ。

「だって!私!!」

「いいから、今日はもう帰りなさい」

「へ~い、じゃあまたね!!」

「また来るといいデス!!存外楽しめたデス!!」

「皆様、本日はありがとうございます」

意外なことと言えなくもないが

結局クラニーちゃんとエシリアさんの歓迎会のようになってしまった。

八代さんもゆずも人見知りするタイプではないし

いい活性剤になってくれて俺としては非常に助かった次第だ。

「ふぅ、じゃあ俺達も戻ろうか」

「そうですね」

「テレビを見るデス!こっちの番組は楽しいデス!!」

馴染むの早いなおい。


 そういえば、風呂とか洗濯とかどうするつもりなんだこの人達。

え、もしかして同じ風呂使うの?

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