ラッキースケベを真摯に受け入れるこの生真面目な委員長は
今朝方のゆずとの出来事のせいで不幸にも遅刻が確定した俺なのだが
諦めてずるずると遅れることを良しとするわけにもいかず
些か急いては登校するハメになった次第である。
ようやく学園に到着し、憂いる目にあった股間も落ち着きを取り戻したのもつかの間
教室へと続く廊下、この角を曲がれば担任に一言謝って席につけようとも言うその瞬間
俺は何者かの影とぶつかってしまった。
「あ、ごめ」と言い切る間もなく瞬時に首筋を刈り取られ
そのまま為す術もなくその影は肘関節で俺の首を刈り取ったにも関わらず
何故か事もスムーズに腕から胸、股間を俺の顔に埋める結果になったのであろう。
その後のことを考えれば。
目の前が突如として暗闇に襲われ視界を奪われた俺は地面に背中から叩きつけられ
「ぬはぁっ!!!!!!」
という実に妙な声を上げてしまった、同時に肺の中の空気を吐き出してしまったらしい。
(息・・・というか真っ暗だ!呼吸、空気はどこだ!息をしなくては!)
「あ!そこ!あったかい!息当たる!!!」
(その声は、委員長!!まさかこの暗闇は!)
俺は俺から光を奪ったグリグリ動く物体を押しのけ急速に肺へと空気を送り込む。
「はぁはぁ、委員長……人の顔に股間を押し付ける前に許可を取ってくれないと」
当然そんな許可は下りるわけが無いし、
そもそもが間違っている気はしないでもないがこの場合はこう言わなければ仕方がない。
「あぁ、事故とはいえもうちょっと椎名君の呼吸を味わっていたかったのに、あぁ勿体無い。
どうしてどけちゃうの貴方という人は一体どうしてチャンスというものなのに、一体痛ッい」
ほらな、こういうやつだ。
彼女の名前は八代 依代俺のクラスの学級委員長である。
規律正しく、性に対して露骨に真面目に真摯に取り組む孕みたガール。
性についても突発的な事故に対しても真面目に考えすぎてしまう性分らしく
今のようなことが起こると途端に思考回路がショートしていしまう傾向にある。
身長154cm、やや貧乳。
ポニーテールがよく似合っている、
幼い頃に好物のさつまいもを食べすぎたため髪の色が先の方だけ黄色に変色したらしい。
ベースの色はブラウン。弓道部に所属している。
時と場所くらい選んで欲しい嫌いが無くは無いが、欲求に正直なのは彼女の美点でもある。
ただ正直に生きるとこうなってしまう悪い例なのだろうか
「どうして?生きるということは性の問題だって避けては通れないじゃない。
私にはどうしてそれをやましいことと捉えているのかわからない」
とはいつか聞いた彼女の弁であるが、よそう。
「それにしても椎名君、私はホームルームに使う名簿を先生が忘れたから
代わりに取りに行っている最中に貴方にぶつかって転んでしまったわけだけれど
そう言えばどうして貴方はこんな時間に登校してきているの?遅刻じゃない?」
先程の淫靡はどこへやら、唐突に俺の遅刻について言及してきた、何だこいつ。
とはいえ、真面目に説明するのも気が引ける。
「いや、ボーッとしてたらこんな時間になってしまったんだ。それだけだよ。
だから早く一刻も早く教室へ行かないと、先生にも同じ言い訳をしないといけないからさ」
そう言うと
「あぁ、いつもの癖なの。そう、いつもの。いつもの?あぁなるほど」
と合点がいっている感じを見るとどうやら察したらしい、いつもこうならいいのだけれど彼女はいつも。
「でもそれじゃあ私が股間を埋めさせてもらった貴方の顔を立てないと申し訳がないじゃない。
あぁそれなら、将来的に私は穴があったら入りたくなる貴方に孕ませてもらうことになったりするのかな。そうでもないと採算が取れなくなってしまうでしょう男性としてのそれはとても重要だと思うのそれは」
「委員長、委員長さん。八代さん、ごめん正気に戻って俺は教室に行くんだから早く戻って」
どうしてこの子はこうなんだろう、真面目、故にしょっちゅうこうなるのだ。
わけがわからない。
「あぁ、ごめん。遅刻してたんだったね、じゃあ私は行くから早く教室に行ったほうがいいよ」
正気に戻ってくれれば委員長は委員長だ、下が絡まければまっとうな人間である。
「それじゃあ、俺はこれで。ごめんな、ぶつかっちゃって」
「私としては二重の意味で不本意なのだけれど、いいよ。それじゃあ」
行ってしまった。
ただ登校するだけなのにいつもこうだ、つい先程までよりよほど重くなった足を引きずりながら
俺は教室に向かった。どうしていつもこうなんだ。
事故が女性にとっての物種である以上、彼女はただ真面目なだけなのである。
そして素直なのだ。