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ラッキースケベはキノコを連想させる

 学園から徒歩数十分、電車で行けば2駅程度の所には

セレクトショップやらレコードショップが立ち並びショッピングモールもある。

俺を含むこの辺りに住む人間ならば大抵の用事や(ウィンドウ)ショッピングをこの辺りで済ませるであろう。

というより、この辺に集中しすぎていて他のところに行っても中々良いものに当たらなかったりするわけなのだが。

最近では技術の発達発展もあり、3Dモデルが自宅で閲覧出来たりVRで体感出来たりするので

通販でという人も少なくは無くなっているのは店舗側の悩みらしい。

俺としてはいくら体感出来たとしてもやっぱり実際に見て回りたいのが率直な意見だ。

特に貴重なCDやら紙ジャケを発見した時なんか結構感動するものである。

検索して通販で、なんて邪道だ。


 出会い頭からやたら距離感が近かったことも会って全く王女様という実感が沸かない王女様は

「せっかくだから歩いて街並みを見ておきたい」との希望ではあったが

今回は帰宅途中でそんな時間は無い、ということで公共の交通機関を使っての移動である。

途中、インターネットの海に沈んだ伝説の動画がどうだなどといった下らない雑談やら

グレコが公共交通機関を使うと痴女行為に及んでしまいたくなる衝動を(祈りを捧げて)鎮めたり

自分のおならがたまに凄く良い匂いな気がする、わかる二度嗅ぎ三度嗅ぎする

といった他愛ない会話を楽しみながら俺達はそこへ向かった。

「シーナ」

「ん?」

目的地に着くとグレコと一方的に戯れるクラニーちゃんを他所にゆずが話しかけてきた。

団体で行動する時は輪の中での会話を好むこいつにとっては珍しいかもしれない。

とはいえ、そのようなこともあるのだろうが。

「与次郎先生から聞いたんだけど、聞いちゃって悪いのかそうじゃないのか。

シーナにも確認しておきたいなって思ってね~。

先生もアレだよね、そういうのってシーナに確認してからの方が良いんじゃないかなって思うんだけど

私達が仲睦まじいから、って、あは~、私達ってそういう風に見えるのかな~?」

「それ、脱線してないか?」

「おぉっと~、そうだそうだ。なんか難しいお話?遺伝子がどうとか」

「あぁ、なんだその話か」

「おやおや、あんまり気にしてない様子かな~。

まぁまぁ、クラニーちゃんも名目上はってお話だったけど遺伝子が欲しいってことみたいだしね。

成る程合点がいっちゃったよ、凄く珍し~何かなんだってね」

あの後、先生には個人的に尋ねてみたのだが

生体にリンクしている間はそんなに影響が無いだとかまだ分からないだとかで

あまり詳しい話しは聞けなかったというところなのだが。

「あぁ、なんか難しいけど貴重、ってことくらいしか知らないな。

俺としてはもっとこう、特別な血筋から特殊な能力に目覚めたり影で暗躍する組織と戦ったり」

「お前……まさか……、『あの』?」

「……やれやれ、ご存知だったか。

俺としては平凡な日常を謳歌するつもりで事を荒げるつもりは無いんだがな、仕方ない」

「知ってしまって放っておけないよね~、みたいな?」

「ことは全然無いんだなこれが」

実際身の回りで変わったことと言えばクラニーちゃんとエシリアさんくらいのものだ。

それもどうやって知ったのかは知らないが、……そう言えば何で知ってたんだろう。

「あは~、与次郎先生は『知らせるようなことでも無かったかも』とか

『あれで椎名君が悩んだりしてたら先生の責任ですから』とか逆に悩んじゃってたみたいだけど」

「全然、むしろ良い影響しか無くて悩む必要なんて無いんじゃないか?」

「言いながら脱いでたけどね、まぁそっか。私としてはシーナがそれでいいならいいっかな~。

シーナのそれのおかげでクラニーちゃん達に会えたと思えるならそれが一番だしね~」

「なんだ、お前はもうちょっとご立腹なのかと」

「え~、なんでなんで?」

「いや……まぁ、それなら別にいいんだけどね」

同居の件とか。

最初は割と張り合ってた気がするんだけれど、窓も割りやがって。

「そう言えば、窓直せよ。いや本当、マジで」

「すまんこってす、ついね、魔の者に刺されてね」

「魔が差したのは俺かお前か」

「そう言えばキノコ食べたい、どうしたんだろ~急に」

大丈夫かこいつ、油断するとすぐ。

ん、んー、事故、事故か。

でも

「ありがとう」

感謝している、こいつには。

本人は別に~って感じ~?らしいけれど。


 「シーナ!!シーナ!!オイ、ちょっとこっち来るデス!!」

「え~、クラッち~もーいいじゃん行こ~よ~アタシこういうの興味無いデスよ~」

ふと、ゆずと話している内に距離が空いていたようだ。

彼女らの場合戯れが過ぎるというのもあるのだろうが、それにしても。

というか、なんか一人増えてる。

「見るがいいデス!シーナ、私の魅力はやはり万星共通デス!!」

「あれ~、クラニーちゃん達ナンパされてる~?」

「あぁ、いやでもあれってどちらかと言うと」

何故か大変喜んでいらっしゃる王女様よりも隣の方を狙いなさってる様子なんですが。

言ってるし。

「……というか、何であれを俺に見せたいんだろうな」

「ん~、お子様扱い多いというか、被害者になること多いからかな~?」

主にイタズラのか、主犯は別にいると思うのだが。

「とはいえ、放置するのも。ちょっとゆずはここにいろ」

「へ~い、いってらっしゃ~」

まぁ賑やかな場所に出ればこういうこともあるだろう。

今回の場合どちらかと言えば偉そうにしている人よりもエロい人のせいだと思うんだ。


 「すみません、彼女ら僕の連れなんで勘弁して下さい」

やたら『慣れ』てそうな男に頭を下げつつ彼女の手を引いて連れて行こうとすると。

「ちょっと待ってくんね、君なんなのさ?俺は彼女に話してるんだよねー」

「そうデス!私がナンパされてるんデス!!」

「いや、君じゃなくてさ、そっちの子ね?二人組とは思わなくて悪いけどさ」

若干気が悪そうに男がグレコの方を指した。

「何でクラニーちゃんが偉そうに……」

「アタシは興味無いっての~、もういいかな?あんましつこいとさぁ」

あぁ、ベタだろ?ごちゃごちゃしてきた。

しかし、こういうのも俺の何とかってやつと関係あったりするのかね。

もうグレコいるなら別にいい気がしてきたんだけどな。

こういった事案って結局誰が悪いと帰結することも無いからタチが悪いよ。

「グレコ、やめとけ」

「え~いいじゃん、止めるなシーナっち」

「今日は違うだろ。歓迎するために来た、暴力も好かん」

「全くしつこいヤツデス、美しいということは罪デスネ!!

これもワタシの背負った咎というモノデス!!」

「何でそんな元気なんだろう」

「俺のこと無視しないでくれないかな、ねぇちょっとだけでいいからさ?

こっちもそういう態度取られるとちょっとねぇ」

どうやらそっちのけで話しをされているのが気に食わなかったらしい。

確かに動機やきっかけがどうあれいい気がするものじゃないだろう。

「すみません、ゴチャゴチャと。でも僕らは」

「あ~、おたくには言ってないから」

言うやいなや強引に俺を押しのけグレコの方へと。

あれ、思ったより好戦的な方?

「いやだから、連れなんで。もう行きますからすみません」

再度間に割り込む、するとちょっと頭に来たようで

「だから、もういいだろ!邪魔なんだよ!」

と、まぁこれで済むならいいか。

「ちょっと話ししたいだけだからさ、ねぇあっち行こうや、あッ、はぁ……」

「え、どうしたの?」

強引にグレコの手を取ろうとした男が急に地面におすわりなさった、教育の賜物?

「ふっふーん、ナンパもいいデスが、ちょっとしつこいデス!

ワタシはオメーのものになる気は無いデスカラ!!一回断られたら引き下がるモンデスヨ!」

「クラニーちゃん、何したの……」

「聞いて驚けデス!良く眠れるお薬!我がロズベルグ家秘伝のスープ!!

『昨日、4時間くらいしか眠れなかったデスぅでもパーティーに行かなきゃならん』

そんな日にはこれ!!疲れ目やだるさも30分でバッチリデス!!」

「クラニーちゃん家ってラーメン屋さんなの?」


 「ナンパにはもうちょっと付き合っていたかったデスけど

ワタシにはこの街を探索するという使命があるデス!残念デスが諦めてもらうデス」

クラニーちゃんが目的ではなかったと思うのだが

会話が渋滞してきたあの場を手っ取り早く穏便に済ませるため、ということで

あの人にはちょっと道路脇で眠っていてもらうことにした。

幸い身体に害は無く、むしろ健康になるということなので安心だ。30分で起きるらしいしな。

「おっかえり~、いや~美少女とそのお供は大変っすな~」

遠目から見てむしろ楽しんでいたらしいこの少女こそが俺の幼馴染である。

「アタシはぶっ飛ばして良かったんだけどね、シーナっちがさぁ」

「ホント、頼りにならねー男デス!伴侶として情けねーことこの上無しデス!!」

「すみませんね、弱くて。あと伴侶じゃねぇよ」

てい、一応頭にチョップしておく。

そもそもいきなり暴力で解決するなんて御免だし、

俺が一発殴られる程度で終わるのであればそれでも構わないと思うのは間違っているだろうか。


 「流石に武器とか持っていたら話しは別だけどな、一般人だろお互い」

「ですが、あのまま長引かせてもあの男が引いてくれるとは思えませんでした。

クラニー様が例の気持ち良くなるやつを打たなければと考えると、より事態は悪化していたでしょう。

いえ、その前に治安維持のための人々が駆けつけてくれたかとは思いますが」

「どっから沸いてきたのさ……そんなことだろうとは思っていたけどね」

「ふふふ、私はいつでも貴方とクラニー様を一滴一滴見つめていますよ」

いつの間にか隣で歩いているエシリアさんはスーツ姿で指し棒を持っていた。

「エシリアは話がわかるヤツデス、流石デス、褒めてやるデス」

「ふふ、光栄ですクラニー王女」

「なんか教師として転任してきたとは聞いてたけど、そのモードだとちょっと違うね」

「大人の余裕というやつです、ふふ」

余裕というよりは色気といったほうが正しいのではないだろうか。

「とはいえ、椎名様。確かに即決で暴力に頼る人間は如何なものかとは思いますが、

大切なモノを守るのもまた力、一考の余地はあると考えて下さいませ」

「わーかってるよ、その辺の線引はできてるつもりだ」

「では、私から言うことは何も。あ、女性の盾になろうとする姿は格好良かったですよ。

とだけ言っておきます」

「……ありがとう」

あまり格好良くは無かったのは彼女らの反応から察するところ。

「では私はまだ業務が残っておりますので。また後ほど」

壁の中に消えていったんだけれど、何なのあの人。

あれが次元の断層だとか境目を使った技術ってやつか、便利な。


 「あービックリさせるんだから~も~エシリアさんってば~」

「壁に貼り付いてたよなお前」

「あれが教師っしょ?お堅いイメージとは裏腹にベッドの上ではアタシが上位に……」

こいつ本当にいつか殺されるんじゃないだろうか。

「ワタシはカフェでコーシーが飲みてーデス!!!ケークも!!」

「マイペースだよね君」

砂糖たっぷりじゃないとコーヒーも紅茶も飲めないのに何故カフェろうとするのだろう。

あれか、帰りに皆でお茶しましょう的な憧れでもあるのだろうか。

王室育ち……周囲からの圧力、解放という意味もあるのかもしれないな。

「じゃあ今日はクラニーちゃんの行きたいとこにしようか」

概ね異論は無いようで俺達は寄り道ってやつを大いに楽しんだのであった。

「シーナ!オメーの行きたいところにも連れてけデス!!」

「あ~アタシは新しい下着が欲しいなぁ。擦り切れちゃってさ、あはは」

「何したら擦り切れるのかな~、そこんとこ不思議だっよね~」

「俺は遠くにいるからな」

「あ、じゃあクラっちの下着選んだげようかな!!黒でどうでしょう!!」

「クラッち言うな!!決め技かけられてるみてーで微妙なんデスそれ!!セクシーなものを所望する!!」

「あ~、私もサイズ合わなくなって来ちゃったからどうしよっかな~変えようかな~」

俺達は今日も明日を迎える

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