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ラッキースケベとエロスの香り

 「そう言えばオメー達、放課後どこかで遊んだりはしないんデス?」

転入して間もなくある日の放課後、ふいにクラニーちゃんがそんなことを言い出した。

俺とゆずは放課後になれば特にやることがあるわけでも

学園に残る理由があるわけでもないし

比較的仲の良い友人はそれぞれ用事があったりで。

「言われてみると最近あんまり遊んだりしてないかもな、俺は。

前は結構遊んでた気もするけれど」

「私もシーナと一緒に帰ってることが多いからな~、最近遊んでないかも」

20歳までに感じる時間の密度とそれ以降は大きく違うらしいが

そんなことを今現在の俺達に言われても現実として感じられるわけじゃあない。

しかし真っ当な(何を持って真っ当とするかは別として)青春を送れなかった人からすると

勿体無い時間の使い方なのかもしれない。殺したいほどに。

「これといってというわけじゃあないけれど

いつの間にか1日が終わってるよな」

「ね~、私もご飯作ったりなんだりでして、でへへ」

「オッメーら、そんなことでどーするデス!!

きちょーな学園生活!!青春!!仲間達!!河原!!河川敷!!

もったいねーことこの上ねーデス!!社畜が聞いたらゲー吐くデス!!!」

「河川敷!?まぁ、言わんとすることはわかったよ。

つまり、クラニーちゃんは遊びに行きたいんだな?」

「よーく言った!そのとーりデス!!私は寄り道がしたいデス!!

具体的には買い食い!そう!たこやーき!!!等デス!」

今日のクラニーちゃんはいつにも増して元気がよろしい。

この星に来る前にいくらか予習してきたとは言っていたが

その中で彼女なりのやりたいことリストのようなものが出来上がっているのだろう。

たこ焼きというのはピンポイントすぎて何を参考にしたのかわからないが。

「じゃあ、今日は転入祝いもやってなかったし

それも兼ねてクラニーちゃんを俺とゆずが案内しようか。

久しぶりに街の方にも出かけたいし、見たいものもあるしな。

ゆずはこの後予定があったりする?先に言っといてなんだけど」

「私は大丈夫だよ~、わかってるくせに~!」

「知らねぇだろ普通。じゃあ、色々と不審な出処ではあるけれど

小遣いも貰ったことで」

「オゴリってやつデスね!!」

「はえーよ、その通りデスよこの野郎」

俺としては曰く付きの収入ではあるけれど、俺の両親は大層現金に現金で喜んだらしく

かといってその辺りのことはエシリアさんが慎重にやったんだろうけれど。

流石に息子の同居人に適当で素性の知れない人間を受け入れはしないくらいの考えはあるし

偽造のことまで考え出すとキリが無いがホームステイとしての滞在証明書なんかを手配していた彼女らだ。


 「ぐ!!!!」

じゃあ行こうかというその時、突然王女さんが口に手を当てて声を上げた。

「大丈夫?」

ゆずが心配そうにクラニーちゃんの顔を覗き込んでいる。

「どうしたんだ?気分が悪くなったのか?

流石にトイレにはついていけないけどゆずもいるし、

それとも保健室か?病院に行ったほうがいいのかな?喋れるか?」

「それよりエシリアさんを呼んだ方が早いかも。シーナ悪いけど行ってきてくれない?」

確かに、異星人だしな。

職員室に行けば。

「わかった、とりあえずただ事じゃないみたいだし急過ぎる。

俺が呼んでくるから少し待っててくれ」

「ウゥ……だ、大丈夫、デス……。その必要は、ハァハァ……。

油断したデス、誰もいないと思って……。

こんな強烈な匂いの奴がいるとは、思ってなかったデス……」

「匂い?俺は別に……」

「私もだけど、もしかして例のヤツ?

人混みがどうとか、意識すれば大丈夫って言ってたけど」

「あぁ、なるほど」

この子らはそういう力があるんだったな。

「察しがよくて助かるデス、ハァハァ……。

もう大丈夫デス、心配かけてすまねーデス。

しかしこんな奇天烈且つ凄まじい匂いを発するヤツなんて滅多にいるもんじゃ」

「あ、私ちょっと、30分くらい出かけてこようかな~ハハハなるほど……」

ゆずのヤツが何かを見つけたようで急に目を泳がせている。

こいつが苦手な人間なんてそうはいないはず、いや。

「そういうことね、あぁ成る程。アイツならそうかもなぁ」

魂の匂いとかいうモノも、成る程と言わざるを得ない。

何故ならそいつは。


 「おやおや!皆さんおそろいでどーも!!アタシが来たよ!

転入生の抜群に可愛いエサ、もとい女の子が来たって聞いて早速来た!!!

初めまして、アタシです!!!」

いつの間にかゆずは居なくなっていたが仕方がない。

苦手とかそういうことじゃないんだからな。

「アタシです!じゃわかんねーだろ!?

あと言葉!エサって言うな!」

「あは!それもそうだね!!でも安心!アタシは男は食べないからね!!」

勢いでズンズン歩き俺達の目の前にきた、こいつは。

「初めまして!アタシは土喰!土喰つちくれ 心澄こすみ!!

親しい人からはグレコって呼ばれてます!!好物は女の子の精気!!

対象年齢は9歳からだよ!!宜しくね!!!」

「オメーグイグイくんじゃねーデス!!こっちは準備が!!!

精気って何のことデス!?」

「あぁ~、妙な匂いってのもその辺が原因かもな。

こいつ、グレコはサキュバス……でいいのか?」

「匂い?お風呂はちゃんと入ってますけど。まぁそういうニュアンスでだいじょぶだよ!

ホントはちょっと違うんだけどね!本番はNGです!!」

別にNGというわけではないと思うんだが。

「そういうことを言っちゃうからお前は。

ゆずが怖がって逃げちゃっただろうが」

「あちゃー、そいつは残念!!いつも美味しいご飯をありがとうって伝えといて!!」

「ご飯って、食事は普通にするだろお前も。

あといつもそんなことしてんのか、5年後刑務所にいるんじゃないのか?」

「辛辣だね!流石この学園で4指に入る巨根の持ち主!!旦那今日もカッコイイですぜ!」

「何でそんな中途半端な数なんだ!?それと適当な事言うな、見たことないだろ」

「へへ、アタシの観察眼を舐めちゃいけませんぜ。

歩くときの挙動や座った時なんかの微妙な膨らみ加減でそのくらいわかっちゃうのさ!」

「……マジ?」

この人怖い、俺も逃げようかな。どうせこいつの目当ては。

「ワタシを無視して進めんじゃねーデス!!」

この人なんだろうし。

「サキュバス!?せ、精気!?一体何言ってやがるデス!?

全くついていけねーデス!!はぅ!!!」

「も~、焦らなくてもゆっくり説明してあげるから心配しなくていいよ~。

クラニーちゃん、ハァハァ噂通りの可愛い美人さんだねぇ」

言うやいなやクラニーちゃんのシャツのボタンを瞬時に外し手を入れていた。

見ないようにしよう。

「ハッ!!ウッ……あ!!!ちょ、やめ……これ……も……ウゥ~~!!!!!

ハ、アーーーーーー!!!!!!デス!!!離れやがれコンチクショーデス!!!」

おぉ、強いなクラニーちゃん引き剥がしたようだ。

「あ、惜しいなぁもう。やっぱり若い子は乳首のハリも違うよね~コリコリで」

「妙なこと言ってんじゃねぇデス!警戒レベルを上げるデス、そっから近づくんじゃねーデスよ」

クラニーちゃんがジリジリと距離を取り俺を盾にして構えている。


 「とまぁ、こういうやつなんだ」

「理解したデスっつーか先に言えデス。これならあの思い出したくもね~変な匂いも納得デス。

エシリアに『見せて』やりてーデスよ。

というか、こんな危険なヤツを野放しにしとくなんて考えらんねーデス。税金仕事しろデス」

「いやまぁ、体験した方が早いかなと思って。説明するよりな」

「同感デスが、時と場合を選ぶといいと忠告しておくデス」

「そういうこと!ダメだね~傍観者気取っちゃ~シーナっち~」

「お前に言われる筋合いはねぇよ、つーか本人の問題だし本当にやばくなったら助けるさ。

けどそれまでは自分の力でどうにかするもんだろ。……この場合は、うんでも目覚めなくて良かったよ!」

それなら最初から近づけなければいい、という話しではあるのだが

かといって『The・悪人』ってわけでもないからあんまり口を出すのもなぁ。

こいつだってそんなことされたら傷つく心はあるはずだ、それならやるなというのは正論として。

「まぁそんなわけで、女の子がきもちくなるとワタシは元気になるのさ!!

そこんとこはまた詳しく!ワタシはいつでも美少女のいるところに現れるんだからね!!

今日のところはちょっと感度と挨拶にきただけってワケさ!!

シーナっちの顔も見ておきたかったしね!!」

「俺はついでだろ、幸いと言って人の不幸、でもないか」

「その通り!私にどっぷりハマっちゃった子だって沢山いるんだから!!

きっとクラニーちゃん、でいいかな?もハマってくれると思うんだが!?」

「ぜって~ありえネーから心配すんなデス、間に合ってるデス。

ただしシーナ巨根説は今度詳しく教えやがれデス」

「そんな説は存在しないから気にするんじゃあない」

しっかり聞いていたようである、意外と仲良くは出来るんじゃないかこいつら。


 「ところで、俺達はこれからゆずと三人で遊びに行く予定だったんだけど

良かったらグレコも来るか?」

「なぁ!!!こんな危険人物誘ってんじゃね~デス!!何考えてるデス!?」

「ちょっと冗談キツかったかもしれないけれど、そんな悪いヤツじゃないし危険でも無いって。

どっぷりハマったってのも、こいつ同性から結構モテるからそのせいだ。

気持ちはわかるけどな……やらなきゃいいのにっていつも思うよ」

身長も比較的高くスタイルも抜群、学力も高くスポーツもこなせる。

そんな彼女はありがちに同性から人気がある、それに加えて趣味がガッツリハマったというわけだ。

「あの~、もう終わりましたかね」

「おやまぁ、ゆずっち!いやー終わった終わった。

今日のところはね!!良い身体をお持ちでしたよ!!」

「やっぱりやられちゃったんだね~、あはは」

30分も経ってないが柄にもなくおずおずとゆずが戻ってきた。

「ちょうどいいからこいつも誘ったんだ。

せっかくだし皆でどこか行ったほうがいいだろ」

「それはいい提案だね~、クラニーちゃんがトラウマになって……

もしくは」

「ワタシはこんなヤツに堕ちたりしね~デス、遊びに行くのは構わねーデスが」

「ですよね~、良かった良かった」

「アタシは諦めない!クラっちをいつか必ず快楽に目覚めさせて見せるんだからね!!」

「クラっち言うなデス、オメーそんなことばっかしてたらいつか殺されるデスよ」

「……冗談にならないな」

王女様って知ってるんだっけか、まぁ何だかんだエシリアさんが見過ごさないだろうしな。

謎の信頼感。

こうしてグレコを仲間に加えて遊びに出かけるのであった。

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