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ラッキースケベは朝日と共に

……なんだか今日は随分身体が重い。

もう朝なのだろうか、窓から光が差し込んでいるようだ。

起きなければ、今日からまた学園に通わなければならない。

社会で働いていらっしゃる方々には敵わないだろうが

学生だって週明けの初日は結構憂鬱だったりするわけで

まだ心地よい布団の中で目を開けたくないという気持ちが勝る。

しかしそんなことも言っていられない、俺だって社会を構成する人間の一人。

仮病で休むわけにもいくわけがない、それにしてもこう身体が重いと……。

これが金縛りってやつか?


 ――そこはTバックを履いた尻だった。

足は脇、尻は胸、頭は股間。

「ほうほう、この松茸、撫でると匂いが増すんですな、すぅ」

「何言ってんだお前!!」

勢いよく起き上がり、重さの原因だった物体をどける。

どうしてこの状況で安らかに寝ていられるんだこいつは。

いやそれよりも

「何でゆずがここで寝ているんだ。おい起きろ!!」

「……んぅ、もう朝ですか。もうちょい、もうちょい勘弁して」

「言ってる場合か!!」

頭を揺らしながらまだ寝ぼけているゆずに目を覚ましてもらう。

「お、おぉ。シーナ、シーナじゃん。おはゆう」

「どうやってこの部屋に入った」

「それは~、そこ~」

ゆずが指差す先には綺麗な円形にくり抜かれた窓があった。

「おい、窓!穴開いてる!」

「それはあれです、ほら、コンパスのようなガラスがよく切れるアイテムと

音を立てないようにガムテープを貼ってですね」

「そんなことを聞いてるんじゃないだろ!?」

「えぇ……じゃあ一体」

「えぇってお前、弁償しろよ」

「そんな……お金が無ければ身体で払えと?」

「そうじゃない!そうじゃないんだ!!」

「朝からそんな五月蝿くしちゃダメだよシーナ」

「誰のせいだと!」

「そうは言ってもね、私だって一人で寝るのは寂しい夜もあるんだよ?

だから、ね?朝ごはん食べよ?」

「どうして俺がワガママ言ってるみたいに!!」

「私だって恥ずかしかったんだけど、我慢したんだよ?」

「それなら一人で寝てくれよ!もう大人だろ!」

「大人だから……だよ?」

「だよ?じゃなくて!もう!」

俺は悔しくてベッドを叩いた。

「それにどうしてその、お前、あんなの履いてるの……」

「あんなのって?えぇ!?見たの!!??」

「見せられたんだろ!!」

「せ、せ、セクシャルハラスメント!!」

「違う!!どうしてお前が恥ずかしいんだ!!!」

俺は悲しくてベッドを叩いた。

「まさか見せる側になろうとはね……私の敗けだよ」

「勝負なんてしてない!どうなったら俺の敗けなんだ!!」

俺は諦めることにした。


 「どうぞ」

エシリアさんが丁寧に配膳をしてくれる。

こういう朝ももう慣れたな、そんなことまでしなくていいって言ってもやるしこの人。

聞かないんだもん。

「いや~、ありがとね~私までごちそうになっちゃって~」

「それはお前が、いや、ありがとうエシリアさん」

「いえ、当然のことですので。それより昨夜はお楽しみだったんですか?」

「そんなわけないでしょ、というより、知ってたんでしょエシリアさん」

「バレてましたか」

「そりゃーね」

一応クラニーちゃんの護衛でもあるわけだし、把握していないとは思えない。

「うめーデス!流石エシリア!超優秀デス!!」

「クラニー王女に褒められてもあまり嬉しくありませんね」

「どーしてデス!?」

なんだかここに来てからやりたい放題な気もするけど。

いやもしかして前から二人はこんな感じだったのだろうか。

「そういえば、クラニーちゃんって16歳だよね?

向こうでは教育ってどうなってたの?やっぱ特別な感じ?」

「そうデスね、この星で必要な教育過程くらいはもう終了してるデス。

オメーが考えてるよりずっとワタシは優秀なんデスよ、尊ぶといいデス」

またこの子は調子に乗ってまぁ。

「じゃあ同じ学園に通うってワケでもないのか。

それはそれでベタではあるけどさ」

「そういうことデス。オメーらはまぁせいぜい学業に精を出すといいデス。

精を出すとは言っても子孫を残すようなことではねー、何を言わすんデス!!」

「やらないと気が済まないのか!?」

「犯ル!?」

「そうじゃない!!」

悪い気はしない、確かに。


 「じゃあ、わかってるとは思うけど俺は行くから」

「じゃあね~二人共~」

「はい、行ってらっしゃいませ」

「あぁ、行ってきます。ありがとね」

やっと着替えてきたゆずと二人でエシリアさん達に挨拶。

俺達は学園に向かうことにした。

「二人も同じ学園に通えたら良かったんだけどね~」

それは俺もまぁ、そう思わないでもない。

エシリアさんはともかくとしてクラニーちゃんは暇しそうだしな。

「必要無いってんだから、仕方がないんじゃないか?」

「まぁね~、でもクラニーちゃんて意外と頭良かったんだね。

がっかりだよ私は」

「お前失礼なやつだな、俺もそう思うけど」

普段の態度から考えるとてもじゃないが彼女がそんなに賢いとは思えない。

しかし考えてみると、それなりの立場である人間なのだから

一般人より高度な教育を受けていても不思議ではないし

修めていなければ資質も認められないということなのだろう。

「ああ見えて、王女なんだよな」

「大変なんだよね~、私達小市民にはわからないくらいには」

「こっちに来た理由も理由、まぁあれは建前だって話でもあるけど」

「でもさ~、不在にするのってそんなに簡単なのかなぁ」

「それこそ俺達には考えてもわからないだろ」

「ですね~」

ようやく慣れ、親しみも出来た道路を歩く。

最初の頃は不安もあった、上手くやれるだろうかと。

「でもまぁ、騒がしいけど嫌いじゃないよ俺は」

唐突に現れた時は何事かと思ったけれど。

「あはぁ、私もそうかな~。

どうなることかと思ったんだけどね」

「な、普通はそうだよ」

「だよねぇ、遺伝子が欲しいってね。何事かと思うよね。

でも何でシーナのなんだろう」

「あぁ、それは俺も気になってはいるんだけどまだよくわかってないんだ。

自分が特別とは思えないしな、話半分ではあるよ」

「でもよっぽどの理由がないとわざわざシーナのとこに来ないよね~。

それとも偶然が偶然ってことも?それは考えにくい気がするなぁ~」

「まぁ、偶然が偶然とは言えないことも無いんだけどな」

「どういうこと~?」

「ん~、今度聞いてみたらどうだ?」

自分で説明するのもなんだか違う気がする。

かといって、わざわざ他の星からとなると信じざるを得ないんだよな。

影響は無いらしい、だけれど貴重、よくわからないな。

与次郎先生にでも聞いてみようか、異世界でもこういう人間がいるのだろうか。

文字通り次元が違う人なら知っていることも、何より先生自身が信用されていることも。

考えていても仕方がないか。


 「あ、椎名君。新宮さんも?おはよう」

「あぁ八代さん、珍しい?」

質問を質問で返すとテストは0点になるらしい。

「この前は突然家におしかけちゃってごめんね」

「気にしてないよ、八代さんの発作にはもう慣れたから」

「発作じゃないんだけど、そういうことにしてくれるならそれでいいよ。

それはそうと椎名君は休みの間に精を出した?

例えばの話だけど椎名君って可愛い女の子が周りにいてああやって世話を焼いてくれたりするわけだから

それはもう大変なことだってあると思うの。全然そういう意味じゃないんだけど

そういう意味だと捉えてもらって全然構わない。むしろして欲しい。

いえ、して欲しいというよりしたいのかも。確かに私としては悪くないのだけれど」

「ステイ!八代さん!正気に戻って!!」

「はっ、ごめんなさい。つい……」

「大丈夫、八代さんは大丈夫だよ」

頻度が多い気がするが。


 「みなさん、おはようございます!いい朝ですね!」

与次郎先生が今日も元気よく挨拶をしてくれる。

こういう場所で見なければ決して大人には見えないのだが

立ち振舞いを見るとこの人も立派な大人、とは思えない。

「先生、その格好はなんですか?」

手を上げて聞いてみた。

「パンティストッキングです」

「いいから、履いて下さい」

「バカには」

「見えるんです」

「それもそうですね」

よかった、前より短いやり取りで済むようになってくれたようだ。

先生も楽しんでいるのではないだろうか、見せたがりなのか?

捕まったりするのだろうか、その時どういう顔をすればいいのだろう。

「とはいえ!皆さんに紹介したい!するべき人が先生にはいます!

さぁ転校生!お待ちかねですよ~、ではどうぞ~」

「フハハハハハ!!シーナ!ゆず!ワタシが転入してきてやったデス!!

敬え崇めろ奉れデス!!!」

随分尊大な態度の知らない人が来た。

エシリアさんはどこかなぁ。

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