ラッキースケベは少量でも濃度が違う
「アイツは一体何を始める気なんデス?」
何とか時代とやらに流行った服を着て何やら体操を始めたデス。
「ん~、シーナは昔剣道をやってたからね~。
今はもう辞めちゃったけど素振りだけは毎週やってるんだよ~」
ナルホド、剣の道ってやつデスか。
素振りだけをやるよりも普通に練習したほうがいい気がしマスが。
「一人でやってんデス?」
「そうだよ~、地元の剣道場に行くこともたまにあるけど基本的にね。
シーナって昔から他人と競うのとかはあんまり好きじゃないみたい。
弱いってわけじゃなかったし、大会にも出てたんだけど
練習よりも力が出せなくて敗けちゃうことも多かったんだ~。
向いてないんだって、そういうの」
「お前、知りすぎてて怖いデス。
幼馴染とは聞いたデスが距離が近すぎる気がするデス」
「そうかなぁ。昔から一緒にいるからね、普通だよ普通~」
そういうものデスか。
幼馴染なんてエシリアくらいしかいねーからわかんねーデス、同性デスし。
とはいえ、こうして間近で見ると中々にキマってる気がするデス。
ただ見てるだけデスが、悪くない気分デス。
「オメーもこうして昔っから見てるだけ何デス?」
「そだよ、私は運動とかあんまり出来ないからね。
といって勉強が得意ってわけでもないんだけど、あは~」
「笑いごっちゃねーデス。
オメーは一人で生きていけるのかデス」
「それクラニーちゃんが言っちゃうの?
それと、私のことは親しみを込めてゆずって呼んで欲しいな~」
「うるせぇデス。わかったデスから顔を近づけるんじゃねぇデス」
ゆずがグイグイ顔を近づけてくるから気が気でねーデス。
シーナの野郎が一人で練習してやがるデスから大きな声もあんまり出せねーデスし。
全く、こいつは悪いやつじゃなさそーデスが。
「ワーッたデス、ゆず。わかったからもうちょい離れるデス。
うっとうしくてしょーがねーデス」
「へいへい~。まぁ本人は気にしてないみたいだけどね。
普通に誰かとやるのも段位取った時にやめちゃったんだよ」
一人で黙々と素振りするのがそんなに楽しいデスかね。
まぁ……似合ってねーわけじゃねーデスが、ちげーデス、そんなんじゃねーデス。
「中々様になっていますね。椎名様の剣を振る姿は」
「いたデスか」
「えぇ、紅茶を淹れて参りました。
お茶菓子も」
「気が効くデス、流石エシリアデス」
「ありがとうございます」
「ありがと~エシリアちゃん」
「光栄です、新宮様」
「あはは、私のことはゆずでいいよ~。私もエシリアちゃんって呼ぶからさ~」
「畏まりました、ゆず」
いつの間にかゆずが人間関係を構築していくデス。
「それと剣じゃねーデス、ただの木で出来た棒デス」
「あれは竹刀っていうんだよ~クラニーちゃ~ん」
わーってるデス、言ってみただけデス。
「にしても、オメーも暇なやつデス。
今日はワタシらがいるからマシデスが、一人でこんなの見ててもつまんねーんじゃねーデス?」
つまんねーわけじゃねーデスが暇なのは変わりねーデス。
ゆずは物好きにも程があるやつデス。
「そうでもないかな~、私もやること出来て嬉しいしね。
お弁当とか作る機会無いしさ。
それに、ああいうシーナってあんまり見られないからレアなんだよ~。
幼馴染の特権その1ってヤツかな~、今はクラニーちゃん達もいるけどね~」
「ワタシらが邪魔デス?」
「そんなことないし、そんなわけないよ~。
私、クラニーちゃんとエシリアちゃんみたいに可愛い子と友達になれて嬉しいよ?」
「な、かわ……またテメーらはそういうことばっか……」
「お褒めに預かり光栄です、ゆず」
「照れるなって~。まぁそんなわけでね、
私はレアなシーナを今も見続けているわけだよ」
理由は聞くまでも無くわかってるデス。
「そんなシーナがテメーは好きってわけデスか」
「なっ!?えぇ!?」
「別に聞かなくてもわかるデス。
魂に聞くまでもねぇデス」
「まぁ否定するようなことでも無いんだけどね~そう言われると照れちゃうね~」
顔真っ赤にして何言ってるデス。
「あんなヤツのどこがそんなにいいのか理解に苦しむデス」
何か面白くねーデス。
ため息混じりに嫌味でも言ってみるかデス。
「ん~、そうだね。言われてみるとそんなに特徴って無いのかもね~」
「バカ言ってんじゃねーデス。
人を好きになるのに理由は無いとは言いますガ
理由もなく好かれる人間なんていねーデス」
「あはは、確かに。クラニーちゃん良い事言う~」
「やめろデス、当然のことを言っただけデス。
常識デス」
「まぁ言いたくなる気持ちもわかるんだけどね。
顔だけならもっといい人はいくらでもいるだろうし、
特別勉強が出来るとかスポーツが出来るってわけでもないし、
平凡って言われたらそうかもね~」
「デス、普通もいいとこデス」
「でもねー、そういうのも魅力かな~って思うんだよ~。
普通だけど普通に努力出来て、今だってね。
誰も見て無くてもやるじゃない?きっとね。
普通に頑張って普通に挫折することもあるんだろうし、私にはそこまでわかんないけどね。
でも、それでも人に優しく出来てね、何とも言えないけど
シーナにはシーナにしか無い空気ってやつがあってね、それが心地良かったり。
そういうのもまとめてね、普通に普通だけど、だから普通にカッコイイのかもね。
何言ってんだろうね、私。はは」
「むぅ、それならカッコイイことするカッコイイヤツなんてそこら辺探せばいると思うデスが」
「そうだね、いるだろうね。
でも、だからってシーナの魅力を否定する理由にはならないと思うんだ~。
私はそう思ってるよ~」
「自分で言っててなんデスが、わざわざそういう男を探し回るのも嫌デスね」
自然ってことデスか。
「それを言ったらクラニーちゃんもシーナのこと好きなんじゃないの?」
「は!?何言ってやがるデス。そんなわけねーデス」
「じゃあどうしてシーナの家に住むなんてことになったの?
ホテル暮らしでもいいし、こっちに来るって決まった時に考えなかったわけじゃないでしょ~?」
「それはそうですが、むぅ。
あんまり言いたかねーんデスが、これから言うことはガチのマジデス。
疑うんじゃねーデス、信じられねーかもしれねーデスが」
「えぇ、何それ?どうしたのかな、いいよ~わかった」
あっさりと言ってくれるデス。
「まぁいいデス。
んー、ワタシらの住むトコでは魂を感じることが出来るヤツが稀にいるデス」
「それって昨日エシリアさんが言ってた『いい魂ですね』ってヤツ?」
「そうデス、エシリアもそういう能力があるデス。
端的に言えばエシリアはそのものの魂の色を感じて見ることが出来るデス。
私の場合は……それが匂いってだけデス」
「匂い?」
「そうデス、これがエシリアみたいに便利のいいもんじゃねーデス。
善悪の判断はワタシ基準にはなってしまうデスが、
悪いヤツはくせ~し、逆に良い奴は良い匂いがするデス。
かなりアバウトな言い方デスが間違っちゃねーはずデス」
「それはなんか、大変そうだね。政に携わる人間だと特にさ」
「やけにあっさり信じるデスね」
こんな簡単に人の言うことを信じて大丈夫デスかこいつ。
「まぁね~、私は私の見る人を私で判断するからさー。
クラニーちゃんって嘘ついてまで何かをしようって人じゃないって思うんだ~」
「何言ってやがるデス、ワタシらじゃねーんデスから
そういう直感を信じすぎるといつか痛い目見るデス」
「その時はその時、助けを呼ぶし逃げるし泣くし、大丈夫だよ~」
屈託のない笑顔でそういうこと言うとこっちが照れるデスね全く。
「それでデスね、ワタシの場合はまぁ、意図せずそういう匂いを感じることもあるデス。
意識的に感覚を閉じることも出来なくはねーデスが、油断してると痛い目見るデス。
だから、人混みとか不特定多数の人間が行き来するホテルとかは苦手デス」
「なるほどね~、じゃあ私達は良い匂いがするってこと?
シーナはよっぽど?もしかしてクラニーちゃんって匂いフェチ?」
「へっ!?」
「だって、今の話しからするとよっぽど信頼に足るような人間じゃ無いとダメじゃない?」
中々、こいつあんまりバカじゃねーデス。
「まま、まぁ、それについては伏せとくデス。
あと匂いフェチとかじゃねーデス。手についた匂いをしこたま嗅いだりしねーデス」
「手についた匂い?」
「はっ!いや、何でも!何でもねーデス。
とにかく!ま……シーナもゆずもエシリアも悪い匂いは……しねーデスよ」
「え~!何それ!クラニーちゃん可愛いー!もっと私を!私の匂いを嗅いで!!」
「うるっせーデス!押し付けてくんじゃねーデス!!」
「……どういう話してんの二人共」
「あ、シーナ!もう終わり?」
「あぁ午前中は。昼ごはん食べたらもうちょっとだけ運動するよ。
狭い庭だけど助かるなこういう時は」
「へへ~、今日もゆずちゃん頑張ってお昼ご飯作っちゃうよ~?」
「あぁ、ありがとう。助かるよ」
ふぅ、助かったデス。
その日は何故か
「シーナ!いい汗流したデス!今日はワタシが背中でも流してやるデス!!
感謝するといいデス!!」
と張り切って白スク水でエシリアさんと一緒に風呂に乱入してきたわけであった。