ラッキースケベは日を跨いでも終わることは無く
「帰ったのに何でいるんだよ。
というか、先に入ってるとは思わなかった」
平静を取り戻した俺は幼馴染に尋ねた。
「いや~、私もお風呂に入ろうと思ったところで
都合よくエシリアさんから水着温泉を開設したって聞いてね~!
クラニーちゃんもマニアックな水着着ちゃって!透けてないそれ!?」
「ひゃぁ!!やめるデス!!おい!こいつ何とかするデス!!
助けろデス!!」
なるほど、エシリアさんが連絡したのか。
八代さんは水着とか持ってきてないだろうしな。
お隣さんだしこの機会に仲良くしとこうってことか。
それにしてもどこまで読んでんだ、本当に人間ですかねあの人。
「おい!何考えてるデス!!この鬱陶しいヤツどうにかしろデス!!」
「あ、すまん。こいつは新宮ゆずっつって俺とは昔からの友達だ。
お隣さんだから仲良くしてやってよ」
「だ~れがそんな説明を求めたデス!!ちょっと!!」
「ほ~う、クラニーちゃんはツルツルですね!!こいつぁ放っておけませんぜ!?」
後ろからクラニーちゃんの脇から手を入れ胸をを揉んでいる幼馴染だった。
「やめたれ、そういうのは二人っきりの時にやれ。目の毒、目の毒デス」
真似しながら頭を持ってクラニーちゃんから引き離してやった。
こいつ誰にでもセクハラしてんのか?
「ひどい目に会ったデスぅ……」
「ご愁傷様です、クラニー王女」
「元はと言えばオメーが呼ぶからじゃねぇんですか。
というか、自然に見てないで助けろデス」
「楽しそうでしたので」
「どこがデス!?普通に襲われてたデス!!」
「皆で水着温泉に入るなんてズルいよ!!私も混ぜてくれなきゃ嫌だよ!?」
「お前は黙ってろ、誰にでもあんなことするんじゃないって」
「ごめんなさい、つい手を挿して」
「魔が差してな!?」
「魔が差しまして」
ようやくゆっくり風呂(温泉ではない)に浸かることが出来た。
「それにしても、これどうなってんの?
お湯とかどっから引いてきてんだろ」
「それはあの場所の名湯を次元パイプを利用して流しております」
温泉だった。
「あの場所って、まぁこの際不思議には目をつぶるとして。
犯罪じゃなければいいよ、犯罪じゃないよね?」
「まだ誰も利用していないはずです」
「曖昧だな。まぁこういうのって誰も利用してないはずだろうしなんともないだろうけどさ。
とりあえずウチの風呂を広くしてくれてありがとうと言っておくよ」
「とんでもないことでございます。
私共も皆様とこのような形で親睦を深めることが出来てありがたいことです」
「ワタシは呼んでね~デス」
「まぁまぁクラニーちゃん。お隣さんなんだから仲良くしようよ~ぅ」
「近づくんじゃねぇデス!!つーか、お前までクラニーちゃんって呼ぶなデス!
崇め奉るデス!!」
「そんな神格は無いだろうに」
エシリアさんの後ろに隠れるクラニーちゃんだった。
「帰れといっても今更な話しだし、この際諦めよう。
クラニーちゃんもそんな怯えないで、ゆずに悪気は無いから」
「悪気が無けりゃ何してもいいわけじゃねぇデス。
お前はワタシの味方するデス」
「確かに。俺もさっき尻を触られたしな」
二人でゆずを睨んでみた。
「お、私悪者!?そんな~、いいじゃん減るもんじゃなし~~!」
「そういう問題じゃねぇしそういう台詞はお前が言うな」
「そーデス!セクハラで訴えられてもしらねーデス!!」
「お!?ってことはクラニーちゃんは訴えないんだ~。やっさし~!!」
「抱きつくなデス!!別にそういうつもりじゃねーデス!!
シーナのヤツの幼馴染デスし今回は特別に許してやるだけデス!!
二度目はねーデス!」
両手でゆずを制しながらクラニーちゃんがいつの間にか俺のことをシーナと呼んでいた。
「騒がしい風呂だった」
「皆様楽しんで頂けたようで嬉しく思います」
「もうこいつとは嫌デス」
「また来るからね!!」
感想は様々だが、風呂好きな俺としては正直嬉しい。
皆で一緒にというのは勘弁して欲しいが。
「クラニーちゃん、アイス買ってきたから食べよう!」
「む、ちょっとは気が利くデスね。じゃああっちで食べるデス。
興味あるデス」
結構すんなり打ち解けているようである。
俺も大概だが、状況を受け入れるのが早いよなアイツ。
しかし。
「ああ見えて気にされているようですよ」
「ゆずのこと?」
そりゃあまぁ、そうだろうな。
俺が逆の立場でも気にする。
客観的に考えれば得体の知れない人間が
幼馴染の家に住み着く、それも異性が。
「いえ、そういう意味では無く」
「また心を読む」
「まぁ、それはさておいて。
同じ時間を過ごして頂くことは有意義だと思いまして」
「険悪になってくれるよりはこちらも気が楽ではあるかな。
でもエシリアさん達って遺伝子が目的とか言ってなかったっけ?」
それは普通に看過出来ない問題だろう。
「はい、最終的にそうなって頂ければとは思います。
けれども、私としては強引に事を運ぼうとは考えておりません。
クラニー様のご両親も同じでございます。
先程も申し上げましたが、クラニー様は少々世間に疎いところがありますので
その辺りも含めて経験になれば今はそれで良い、と。
クラニー様のご両親は大変お優しい方です。
私も幼い頃随分とお世話になりました。
現在侍女として働かせて頂けるようになったのも
クラニー様と私の事をお考えくださった故に、でございます。
感謝してもしきれません」
「後継者の問題がどうとか、俺には想像つかないけど
時間は残されてないからとかそういうことは無いって考えていいの?」
「無い、とは言い切れませんが少なくとも多少の猶予は頂いております」
「じゃあ今回のことは本当に」
「えぇ、クラニー様のことを考えてのことかと。
本日少しご一緒させて頂いただけですが皆様のことはよくわかりました。
あのようなご学友を持たれて椎名様を羨ましく思います。
けれど、それも椎名様が皆様から慕われている故ということも」
「そう言われると照れるけど良く言われるのは嬉しいかな。
慕われているかどうかは置いといて」
尻とか触ってくるし。今朝のことは事故だけどさ。
だけども友人を良く言われるのは悪い気がしない。
「そういうものです。友人が友人でいるのに特別な理由は必要無いかと思います」
「そうだね、確かにそうだ。
じゃあ尚更巡り合わせってやつ、運が良かったんだよ俺は」
「そうですね、私共も同じです」
「……おう、そろそろあっちでゆっくりしよう。
せっかくいい風呂作ってもらったわけだし湯冷めしてもね」
「はい」
「うめぇデス!」
「これ新しいやつだって~。コンビニで売ってたんだ~」
リビングに戻ると二人でアイスを食べていた。
「エシリアさんの分はないの?」
「冷凍庫に入ってるよ~?開けさせて頂きました」
「あぁ、いいよ別に」
冷凍庫の中に2つ入っていたのでエシリアさんの分を取り出して渡す。
「ありがとうございます、頂きます」
「シーナは食べないの?」
「今はいいよ」
「じゃあワタシがシーナの分も頂くデス!!」
「食べたいならいいけど、王女様は庶民派だな」
100円やそこらのアイスで上機嫌になる姿には親しみが沸く。
「私も庶民派だよ!」
「お前は元から庶民だろうが」
そんな軽口を叩きながら時間を過ごした。
こういう穏やかに流れる時間は何者にも代えがたい。
後は自分の部屋で音楽でも聞ければ良いんだけどな。
「じゃあシーナ、まったねー。
エシリアさんとクラニーちゃんもありがとーう!」
「あぁ、またな」
「アイス買ってきたら次回も免除してやるデス!!」
「お前の家じゃねぇだろうが」
「新宮様、こちらこそありがとうございました。
良い夜を」
結局アイス二個食ったクラニーちゃんらと共にゆずを見送る。
あいつ水着で風呂に入っただけだったな、
これだったら別に一旦家に帰らなくても良かったんじゃないか?
いや、水着を持ってきてなかったか。
「そういえば、クラニーちゃん達って部屋はどうするつもりなの?
もしかして、また例のやつ?」
「はい、二階廊下の奥に部屋を作らせて頂きました」
「また勝手なことを」
「安全なんだからこまけーこと言うんじゃねーデス、全く」
やれやれといった表情でクラニーちゃんが呟く。
「まぁ部屋が余ってるってわけでもないしな。
二人がそれでいいんだったらそれでいいよ。
家を改造するのも程々にな、っつーかちょっと待て。
これって元に戻せるんだよな?」
「その点も問題ありません。
あくまで境界断層に擬似空間を作っているだけですので
取り除けばもとに戻ります。
お風呂に関しても、元の浴室が消えているわけではなく
外から見るとおわかり頂けるかと思いますが存在はしております。
脱衣所からだとあそこへ通れるというだけです」
「なるほど、確かに外からあんなのが見えても……
まぁ見るヤツなんて限られてるだろうけど困るからな。
でも存在はしてるんなら掃除とかどうしよう」
「ご心配なく、私が務めさせて頂きます」
「そういうことデス!」
「クラニーちゃんは元気いいなぁ」
「それでは椎名様、私共は部屋に戻りますので」
「あぁ、それじゃあまた明日」
「明日は確かおやすみでしたよね?」
「そうだよ、土日は休みだ。
だから朝も起きて来ないと思う」
「そうですか、畏まりました」
「だらしね~ヤツデス」
「いいだろ、普段はこれでも頑張ってる。と思うんだ俺は」
本音を言えば週休は5日くらいが望ましい。
そんなこといったら怠けててるとか言われそうだから言わないけどな。
「じゃあ、また明日。今日は楽しかったよ、ありがとな」
クラニーちゃんの頭をくしゃくしゃにしてやった。
「や、やめ……やめろデス!子ども扱いすんなデス!!」
「照れるなって」
そんなことを言いながら俺は二人と分かれて部屋に戻った。
今日はとてつもない勢いで色んなことがありすぎたな。
朝から数えきれないくらい、それから俺の遺伝子……なんつったっけ。
学園に行ったら先生にまた聞いてみよう、
あれ、でもエシリアさんに聞いたらわかるのか。
生体とリンクしている場合影響はさほど無いらしいが
エシリアさん達から見ると他の星に来てでも欲しいものらしい。
最もあちらの場合、そういう名目でやってきたというだけで
本当のところはクラニーちゃんに対して色々と思うところがあったのだろう。
八代さんは相変わらずよくわからんが、ゆずは安心したようで助かる。
クラニーちゃんはともかく、エシリアさんはそこら辺全部把握してそうなんだよな。
たまに心まで読んでくる、一体どういう教育を受けたらそんなことが出来るようになるんだろう。
それにしても、他の星から来た……か。
見た目が俺達と差異が無いように感じるから実感が無い。
風呂の時のような技術を見せられると成る程とは思うが、あれっていくらくらい掛かるんだろう。
それともクラニーちゃん達のところは普通なんだろうか。
国土が狭いところ程重宝しそうだし、こちらでも普及して欲しいくらいだ。
「……寝るか」
考えていても答えが出るはずもない、疲れたし今日はもう寝よう。
俺はお気に入りであるインストゥルメンタルを流しながら布団に入った。
遠くで何か音がする。
寝る前に流した音楽だろうか、いや人の声のようだ。
なんだろう、聞き取ろうと思っても意識は遠ざかっていく。
朝目覚めるとふにふにと俺の股間で手が動く。
「……どういう意味?」
全裸のクラニーちゃんが隣で健やかに安らかな寝息を立てていた。
俺のズボンに手を突っ込んで。




