ラッキースケベが偶然にも多発するこの幼馴染は
「昔はそんなんじゃなかった」「昔はよかったんだけれどなぁ」
その時代を生きていなかった時代の若年層である我々には理解出来ない……
いや、頭では理解出来ていたとしても心では理解出来ていないと言えば良いのだろうか。
事ある毎に我々が敬意を払うべきである年配の方々からはこういった言葉を頂く機会が多いわけなのだが
今を生きる俺にはそんなことはどうでもよく、また今を生きなければいけない俺にとってみれば
「昔はどうだった」なんて関係ない、と些か冷めた態度で「はいそうですか」、と聞き流すわけである。
とりわけ、過去に女性の社会進出だとか地位の向上を務めていった
敬愛すべき我々の先輩方からすると信じられないことであるようなのだが
我々の世代、つまり俺達は先輩方とは随分モノの見方や考え方がすっかり変わってしまって
時にはまるで別の生き物でも見るかのような冷ややかな眼差しを送られることもあるのだが
この世の中はすっかり変わってしまったらしい。
文明が進んだ結果、宇宙人だとか異世界人だとかがすんなり受け入れられてしまったようで
(それでも当時はえらく問題にはなったらしいのだが)
次代の俺達の時代では違和感などまるで無く
普通に学校なんかに通いテレビショーにも出まくっている次第である。
そして背中から小気味良い革靴の音を軽快に鳴らしながら駆け寄ってくるこの
「あ、シーナ!!おはよぁぁっぁあぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
しまった、油断していた
「ぐっ!」
骨と骨、ではなく骨と肉がぶつかり壮大に物理法則を無視しながらもみくちゃに転がった結果
……俺の目の前には、なんと純白の布、あたり一面の銀世界が広がっていた。
「苦しい、胸……胸が……」
股間を押しつぶしている
「ご、ごめん!!!つい慌てて転んじゃって!!!!!!」
瞬時に体勢を立て直し、乱れた衣服を正しながら言い訳をするこのショウジョは
新宮 ゆず (しんぐう ゆず)、俺の幼馴染だ。
身長は162cm、帰宅部。
何もないところでよく転び、よく物理法則を無視する。
所謂ドジっ子というやつだ。
動物が好きで、昔時空の歪みで見つけた奇妙な生物を飼って世話をしている。
余談ではあるが、その生物から俺は猥褻な行為を受けることがある。
「ちょ、ちょっとゆず。。。手、離してくれると嬉しいかな・・・」
起き上がって衣服を正した後に、手をおいた位置でしっかりと俺の股間を握っていた。
「ごごごごごごめん!!!!!決してわざとじゃないんです!!!!すみませんでしたまた後で!!」
先程の軽快かつ小気味良いあれはどこへやら
いきなり最高速で挨拶する間もなく学園へいってしまった。
はぁ、ドキドキした。
「わざとじゃないんだから、そんなに謝ることでも無いんだけどね」
それにしても恥ずかしかった、幼馴染とは言え客観的に見ても美少女の部類に入るあんな子に
登校早々挨拶をと思いきやぶつかられ、銀世界を見せられ、尚且つ股間まで。
思い出すだけで顔が紅潮してしまうのが自分でもわかるのが悔しい、でも恥ずかしい。
早々、俺の名前は椎名 和歌、
友人からはカタカナ発音でシーナと呼ばれているのは知っての通りだ。
俺の時代では、貞操観念がすっかり逆転してしまっていて
所謂「ラッキースケベ」というのは女性が男性の股間を揉んだり
乳房を押し当てたり揉ませたりすることを言うらしい。
先程ゆずが見せた事後(仮)のリアクションはそういうわけだ。
さて、そんなことをしていたら遠くで鐘の音が。
「あぁ、入学して間もないのに……また遅刻かぁ」
こうして俺は重たい足取りを一歩踏み出すのだった、何もないところで転ぶなよ、なぁ?