恋の始まり
「わたしのゆめは、かっこよくて、せがたかくてエリートで、やさしいひととケッコンすることです!」
小学生の頃、みんなの前で将来の夢を話すという授業があった。
私の夢をクラスのみんなは笑ったけど、当時の担任の、独身だった宏美先生は1人だけ複雑そうな顔をしていた。
「そんなやついねーよ!」
「みことちゃんってリソウたかすぎ!」
私は至って本気だった。
本気でそんな人がいると思っていたし、大人になれば自然とそんな人と恋ができるものだと思っていた。
女の子ひとりにつき、ひとりの運命の王子様が待っていて、女の子はみんな可愛くて愛されて幸せになれるものだと思っていた。
甘かった。
「…王子様がいない!!」
私は子供の頃の夢を果たすべく、最もエリートへとの近道であろう〇大への進学率98%いう高校に入学したのだが、そこにはエリートの卵はいても、優しくてカッコよくて…なんていう、私の理想の王子様はいなかった。
「高校生にもなって何言ってんの?」
高校の同級生達は運命の人探しに躍起になる私を見て呆れていた。
「この学校に君みたいなおバカな子がいるなんて笑」
高校の同級生はみんな私のことを笑った。
小学生の頃、クラスメイトたちが将来の夢を話す私に向けていたような顔で。
「…いるもん、絶対。
私だけの王子様。」
私は決して夢見がちなわけでも、イタイ女子なわけでもない。
そう信じていた。
ただ、成長にするにつれて理想と現実のギャップをひどく痛感するようになった。
そんな時だった。
現れたのだ。
私だけの王子様が。
「…くすのき…くん。」
友達にそう呼ばれていた彼に一目惚れをした。
その時の話はまた今度。