楠田君は彼女持ち
楠田君side 再び
「楠田君っ、今日一緒に帰ろう!」
放課後、真っ先に俺の席に来て転校生はこう言った。
「え、なんで俺…?」
謎。
今日ずっと見られてた理由も分からないし、
「楠田」ってやつに会いにわざわざ転校してきたというこいつの脳内の意味がわからない。
「だって、楠田君と一緒に帰りたいんだもん」
周りの男子からの視線が痛い。
なんでお前なんだよ
くそ、俺らの足立さんが
そんな声が聞こえてきそうな悲痛な視線だった。
「…?てか、俺今日彼女と帰るから無理だわ。ごめん。」
その瞬間転校生が固まった。
「か、カノジョ…?」
「うん。他にもお前と帰りたいやついっぱいいるだろ。あいつとかあいつとか…あ、おいお前ちょっと来て」
近くにいた信也を呼ぶ。
「ん?なにー、って、お前足立さんと喋ってんの?
さっそくかよ…くそ、またこいつに先をこされ…」
「何言ってんの。あのさ、今日足立さんと帰ってあげて」
このやりとりの間、足立さんの発した言葉ゼロ。
ずっとポカーンとしている。
「え?!俺が足立さんと?!よろこんで!
…って、足立さん。大丈夫?」
おーい
足立さんの前で手を振るけど反応無し。
「え、どうしたの…?」
「分からん。なんか急に固まった。
あ、やべ、遥に怒られる。じゃ、あとは頼んだ」
約束の時間はとっくに過ぎてる。
俺の彼女の遥は時間に厳しい。
遥の怒った顔こえーからなー…。
少し憂鬱になりながらも、俺は足立さんと信也を置いて教室を後にした。