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違和感

 謹慎を言い渡されたティーファが部屋から出れたのはそれからわずか2時間たらずのことだった。

「国王がお呼びです」と、召し使いに連れられ、王室へと向かった。


 そこには、両親とラークとセレス、大臣のベルゴールの姿があった。


「こっちに来なさい」

ラークに呼ばれティーファは三人の前へ来た。

「何か用ですか?お父様」

ティーファは恐る恐る尋ねた。


 先ほど叱責を受け、謹慎を言い渡された身としては、なにを言われるのか怖かった。


「こちらに来た異世界人の件だ」

「……」

ティーファは何も言わなかった。

ラークはティーファが来る前に決めたことを説明した。


「捕獲…ですか…」

「そうだ」

「そのあとは、どうするんですか?」

ティーファは聞いた。


「門を何度も使うと怪しまれる。しばらくは我が城の地下に監禁しておく」

「そんなっ…」

 いくらなんでも、そう言おうとしたが口にはできなかった。


(そんなこと、私が言えた義理ではありませんわね…)

ティーファはうつむき、それ以上何も言わなかった。


「準備が整い次第隊を派遣する。以上だ、部屋に戻ってなさい」

「はい…」

ラークからそう言い渡されるとティーファは再び、召し使いに連れられ部屋を出た。


 ティーファが出た後

「生きているでしょうか?その異世界人」

ベルゴールが言った。


「可能性としてはほぼないだろう」

ラークはあっさりと言った。

異世界人がいるとされる山は危険な生物が大勢いる。そこに普通の一般人が飛ばされたとなると、生きているとは思えなかった。


「だが念のためだ、門が出てまだ2日だからな」


 ラークは椅子の背もたれに背を預け、大きく息を吐いた。


(護衛兵からあった、向こうの世界での報告…)

[異世界人の抵抗により、一名軽傷]


 仮にも兵である。娘を無事に連れて帰るためこの国でもかなりの実力者をラークは選んでいた。


(油断していたとはいえ傷を負わすとは…なかなか異世界人も侮れんな)


もしかすると、生きているかもしれないという可能性もラークは考えた。




ーーーーーーーー

 部屋の外が騒がしくなってきた。これから出発なのだろう。

 窓の外を見ると、ジェラル王国の二つある飛行艇に多くの兵士が行き交っていた。


 ティーファはそれをただただ、見ているだけだった。

(お父様の話ではとても危険な場所だとか…)

ティーファは心配だった。あの異世界人もそうだが、兵士のこともだ。

「皆さんどうか無事に…」

ティーファは両手を組み、祈った。

ーーーーーーーー


 出発の準備が着々と進められている中、一人の男がそれを少し離れた所で見ていた。

 異世界からティーファを連れ戻すために来た護衛の一人だった。


(あの異世界人…他の人間との違いはさほどなかった。戦闘能力だって私の方が上だった)


 男は自らの顎をさすりながら、異世界での出来事を思い返していた。


 急所である脛を殴られ、痛みを感じ、僅かな隙を見せた直後に顎を蹴り抜かれた。

脳を揺らされ、一時的に立てなくなった。


 ダメージは大したことはない。今では痛みなどとうに消えていた。

しかし、

(違和感が残る…)


 念のため医者にも診てもらった、異常などどこにもないとのことだった。ならば、自分自信の精神が違和感を感じさせているのか。


 武器も持たず、戦闘能力では足下にも及ばない奴に一時的とはいえ、膝をつかされたことに屈辱を感じているのか。もしくは、油断し、隙を見せてしまった自分への情けなさからくる怒りか。

 

この違和感がなにからくるものなのか、分からなかった。


「バソー、そろそろだぜ」

男は自分の名前を呼ばれて振り向いた。そこには、共に異世界からティーファを連れ戻した兵士だった。


「そうか、わかった ウド」

ウドと呼ばれた男は顎を擦っているバソーを見て

「新しい癖でも出来たか?」

軽く笑いながら言った。


 バソーは少しムッとしながらも

「そういうものじゃない」

そう答えた。

「痛むわけじゃないんだろ?身体のどこにも異常ないんだし」

「そう、なのだかな…」

「一番艇はもう出発する。その次は俺達だぜ」

「あぁ…」

「あの男、どうなってると思う?」

ウドはバソーの隣に立ち、聞いた


「場所が場所だからな」

「だよなぁ~、なんてったって各国が決めた立ち入り禁止区域の場所だ。今回の志願者も少なかったって話だぜ。あの異世界人もよりによってあんな所に飛ばされるなんてな~」

「…まぁ、生存はほぼあり得ないだろうがな」


 向こうで二人を呼ぶ声がした。出発とのことだ。

「行くぞ。ウド、気を引き締めろよ」

「あぁ、分かってるよ」

二人は勇み足で飛行艇へと乗り込んだ。


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