真・恋姫無双 ~魏EDアフター~
あの戦いが終わり、大陸には魏を中心とした平和がおとずれた。
この物語はその2年後のお話。
今日は終戦記念日ということで魏の首都、洛陽で立食パーティが行われようとしていた。
華琳は、前日からいろいろと孫策、劉備が中心に皆が準備してくれた「立食ぱーてぃ」会場に
自室を出て向かおうとしていたところを、孫策、劉備に出会った。自室にいる
華琳を呼びにいくところだったらしく、合流して三人でそのまま会場まで歩き出した。
孫策「そういえば、華琳、十文字の旗の主は結局誰のだったの?
戦が終わったとはいえ、あの知はなかなかのものだから覚えてたのだけど。
洛陽にきて修練場いっても旗は揚がってないし。」
劉備「あー、それ!私も思いました。
なんか妙に威圧感のある軍勢でしたしー、駆け引きも上手でしたよね。
その人、今どこにいるんですか?」
二人がふと思い出したように華琳に話しかける。
それはあまりにも唐突で、あまり嬉しくは無い質問だった。
華琳「あぁ・・・、彼ね。戦が終わったらいつのまにかいなくなっていたのよ・・・。」
そう言った華琳の声は少しトーンが低く、掠れ気味だった。
確かに彼がいなくなり、ある程度体調や精神も安定してきたとはいえあまり触れられたくない
話題であった。
(ちなみに、劉備は顔をみているが酔っていた上、遠めだったということで覚えてない)
孫策や劉備はその少しの動揺に気づき、これ以上追求することはなかった。
劉備「そっかー、なら仕方ないねー。でも、どこかへいっただけなら
また会えるかもしれませんしね!それを待ちましょう。」
笑顔で劉備が華琳に話しかけた。
孫策「ま、いろんな国を旅していいお土産を買ってきてくれるかもしれないし
気長に待ちましょうか。」
孫策もおどけながら華琳を気遣う。
華琳「えぇ、帰ってきたらみっちり絞り上げてやるわ・・・・ふふ。」
二人の気遣いにまた華琳も気づき、笑顔を見せた。
その言葉の真意は定かではないが・・・・。
5分ほど歩くとパーティー会場からいろいろな声が響いてきた。
叫び声、泣き声、笑い声。いろいろな声が三人の耳に届いた。
孫策「なになになんかあったのかしら。」
劉備「わぁ~、たのしそうだな~。」
華琳「うるさいわね・・・・。」
三人が同じタイミングでそれぞれ違う感情を口にした。と、同時に
孫策&劉備&華琳「ぷっ・・・・」
三人が顔を見合して微笑みあった。
孫策「こうしちゃいられない!
私たちも合流するわよ!走るわよ、桃香、華琳!!」
劉備「えっ、ちょっ、まってくださいよぉ~、雪蓮さぁ~ん。」
その言葉を口火に走り出す孫策、それに続いて劉備が走り出した。
しかし、華琳は走ることなくゆっくり歩いたままだった。
華琳「(ふぅ・・・、いくらああいう風に嘘を言って体裁を繕うにしても、虚を突かれるとどうしても
うまく言えずに辛くなっちゃうわね・・・、この曹孟徳ともあろうものが・・・・はぁ。)」
そう、心の中で呟きながら、華琳は会場へと足を運んだ。
会場に着くと二人の武将が一斉に華琳に抱きつきにきた。
春蘭&桂花「華琳さまぁぁ~~~~。」
華琳「はいはい、待たしてごめんなさい。」
じゃれつくかわいい犬をあやすように二人の頭を撫でた。
春蘭&桂花「華琳様ぁ・・・。」
頬を桃色に染め、二人はとても満足そうだった。
華琳「秋蘭、皆”立食ぱぁーてぃ”というものを楽しめているのかしら?」
華琳のそばにいつのまにか秋蘭が立っていた、料理を乗せた皿と一緒に。
秋蘭「えぇ、皆中々楽しんでいるようです、食事を各自でとり、それをもって
話あったり、笑いあったりと、この催し物は予想以上にいいものだとおもいます。
あと、これをどうぞ。琉々や諸葛亮が腕を振るった料理です。」
華琳「あら、ありがと、さすが秋蘭、気が利くわね。
そうね、今までに無いものだし、意外と面白そうね。
三国すべての武将が集まって食事会を、ましてや立って自由に
動き回るなんて、今まで誰もやったことがないでしょうしね。
それと・・・・、春蘭、桂花、動きにくいのだけれど、どいてくれないかしら?」
春&桂「えぇ~~?」
華琳「二人とも?」
春&桂「はい・・・・。」
春蘭たちの不満の声も、華琳の眉間によるシワには勝てなかった。
秋蘭「ふふ、姉者、あっちに姉者の好きな桃饅があったぞ、一緒に食べに行かないか?」
春蘭「おお、そうか!良いことを聞いたぞ秋蘭!すぐ行こう、その桃饅、すべて私が食べてやるぅ~。」
秋蘭「姉者・・・・・。」
はぁ、とため息をつきながら嬉しそうに秋蘭は春蘭と一緒に桃饅のある机まで向かっていった。
桂花「私も凛や風のところにいっています、何かあったらすぐ呼んでくださいね!!華琳様!」
華琳「はいはい、いってらっしゃい。折角なのだから貴女もちゃんと楽しみなさい。」
そう言うと笑顔で華琳が桂花に手を振ると、最高の笑顔で桂花もその場を後にした。
その後、多くの武将が会場の入り口に訪れては、主催の華琳に挨拶をして
式場へ入っていった。すべての武将が挨拶を終えたのを確認して
華琳もその場を離れ、皆が見渡せる城壁に移動して
そこに座り、手にしたお酒と料理をそばに置いた。
華琳「ふぅ・・・・、でもどうして中々、皆楽しそうにやってるじゃない。
つい2年前までは命を懸けて殺しあった相手だっていうのに。
でも、こういう世界も悪くない、って思うのも我が覇業が成ったからかしらね。
どうであれ、この大陸には平和が訪れた。あとはこの平和を維持していかなくちゃね・・。」
今までのこと、これからのこと、どれも全て軽いものではない。
だが今はこうして配下だけでなく、共にこの国の将来を考える多くの仲間がいるし、
悩みもそんなに大きなものではない。
と、この国を制した覇王ながら心からそう思えるのであった。
華琳「私は一人じゃない、か・・・、そういえば一刀にもそういうふうに言われたわね。」
ふと心の中の思いがついつい口にでていた。
華琳「あのバカ、ずっとそばにいるって言ったのにいなくなるし・・・・。
私のかわいい部下たちには手を出すし・・・。
まさか、流々たちにまで手を出すとは思わなかったわ。」
(それはまぁ・・・、俺の所為でもあるが俺だけの所為じゃないってのも知ってほしいんだがな・・・・・)
華琳「・・?、何か聞こえたような・・・。」
華琳が周囲を見回すが、自分の近くには誰の姿も無かった。
華琳「あぁまぁ・・・、でもある意味、今の状況に一刀がいなくてよかったかも知れないわ。
どこの国の武将もかわいい子ばっかりだから、節操なくちょっかいだしそうだし。」
(おいおい・・・、俺でもさすがにそこまで節操無しじゃないぞ?)
華琳「ん・・・・??、また?」
先ほどのように周りを見渡すが、やはり誰もいなかった。
華琳「お酒の飲みすぎかしらね、このお酒おいしいけどなかなか強いわ。」
手にした徳利と杯を見ながら華琳が自分に言い聞かすように空耳をごまかした。
華琳「ほんと・・・・、あの時からもう二年にもなるのね。
ずいぶんと早い気がするわ。内政や外交に日々を追われていたせいかしらね。」
思い出すように華琳が呟く。
華琳「もう2年・・・・か、いつまで待たせる気かしら。あのエロバカは。
ていうか、天の国で新しい女作ってるんじゃないでしょうねぇ、あの節操なし。
ありうるわね・・・・、かわいい子ときたら目が無いもの。はぁ・・・・・・
なんであんなのを選んだのかしら、私は。
でも、そろそろどっか馬の骨でも見つけないと困るわね・・・・。
さすがに跡取りを残さないのは問題だわ。」
??「いやいや、さすがに愛してる人がいるのにほかの女にいくわけないだろ?
ていうか、ほかの誰かと一緒になったら俺、許さないぞ?」
華琳「えっ!!!?」
幻聴じゃない、自分の耳を揺らす振動は紛れも無い誰かの肉声。
聞き覚えのあるその肉声を聞いた瞬間、あたりを瞬時に見渡す。
左右前後には姿は無い、上かと思い上を向くもそこに彼の姿は無かった。
しかし、上を向いた瞬間、体に暖かいものが触れる、懐かしいぬくもり。
膝の上に置いていた手に誰かの手が重なったのだ。
それは-----------------
一刀「ただいま、華琳。」
その声に反応して華琳がふっと見上げた顔を下ろし目の前の人物を確かめた。
切に願い続けた夢が目の前にあるのかと・・・。
そこにある笑顔は紛れも無い自分のすべてを掛けてでもかなえたかった夢があった。
華琳「かず・・・・と・・・・・・。」
ふいに・・・、華琳の瞳から大きな雫が零れた。
あの日、二人を別つあの日に流した涙より大きな涙。
だが、悲しみの涙ではない、嬉しさからでてくる涙だった。
一刀「お・・・おい!華琳、急に何泣いてるんだよ。
俺がビックリするだろ!?」
華琳「うるさいわよ・・ヒゥ・・・、ばかぁ・・・。」
涙でくしゃくしゃの顔、一刀に握られている手とは違う手が顔を覆う。
一刀に恥ずかしい素顔を見られまいと一生懸命に。
しかしそんな努力も一刀には通じなかった。
一刀「華琳、俺が現れて泣かれたら俺嫌われてるみたいじゃないか?」
華琳「ばかぁ・・・、そんなわけ・・・ないでしょ・・、ヒッ・・・。」
華琳の涙がそういうことではないとわかっている上で軽くおどける一刀。
一刀「華琳」
華琳「何・・・よ・・・?」
おどけた様子ではない一刀の声に華琳が視線を合わせれるよう
顔を隠す腕を目からずらした。
一刀「俺は、愛しい華琳の笑顔が見たい。あっちの世界でそれを願ってずっと・・・・
ずっと・・・・・、がんばってきたんだ。だから・・・さ?」
華琳「そ・・・・そんな言い方卑怯じゃないかしら・ヒゥ・・?」
一刀「卑怯でもいい、君の笑顔が見れるなら。」
華琳「じゃあ・・・・、見せてあげないわ。」
一刀「えーーー、それはなしだろ!?」
華琳「あら、そんな長いこと願ってた夢をすぐにあなたは見たかったのかしら?」
さっきまでの嗚咽はどこへやら。華琳はいつもの姿に戻りつつあった。顔は真っ赤ではあるのだが。
その態度が少し面白くなかいのは、一刀であった。
一刀「ふー・・・ん、そういうこというのか。華琳のそういう意地悪なところは変わってなさそうだな。」
嫌味たっぷりに一刀が華琳に言い放った。
華琳「あら・・・、一刀程ではないとおもうのだけれど?」
そう言い返す華琳、二人の間には少しの沈黙が流れた。
その後、二人の間に生まれた感情は・・・
一刀・華琳「あはは・・・・・、かわんないなぁ・・・、華琳は
かわらないのね・・・、あなたも」
喜びの感情が二人を包む。
一刀「華琳・・・・。」
そういうと一刀は握っていた手を離し、その代わり大きく両腕を広げた。
それはまさに愛しい人との抱擁を望む姿だった。
華琳「バカ・・・・。」
そう悪態をついたあと、すっと座っていた城壁を降り、そして・・・・。
一刀「ただいま、華琳。」
華琳「おかえり・・・、一刀。」
強く強く・・・・・、二人の想いのように、解けることの無い赤い糸のように抱きしめあった。
互いのぬくもりが、一刀のぬくもりが、今まで張り続けていた華琳の緊張の糸を切った。
華琳「ひっ・・・・、うっ・・・・・。」
一刀「お、おい、華琳?!・・・・さっきのリピートですか?」
なんてデジャヴー。
じゃなくて!というくだらないことを考えながら華琳の頭をなで上げた。
と、抱きしめた華琳の変化に気づいた。
華琳の頭の位置が二年前とは違う、
胸の感触も前よりずっと多きい・・・・。
この二年で腕の中でなきじゃくる彼女はこんなにも変わっていた。
変わってなかったようなあの態度もただの強がりなのだと気づいた。
そう感じてるうちに一刀のあの制服が華琳の涙で胸元がぐしょぐしょになっていた。
それだけ、これだけ、華琳が自分の存在を喜んでくれている証だった・・・・・。
一刀「ごめんな・・・・・、華琳。」
華琳「まったくよ・・・・・ひぅ・・。」
一刀「華琳・・・、それでも俺は君には泣いて欲しくない。
華琳の顔には、涙は似合わない。」
華琳「・・・、おお・・・きなお世話よ・・・。」
一刀の言葉に嬉しいのだが、意地でも嬉しいとは言わない華琳だった。
ちょっと煮え切らなくなってきた一刀は華琳の肩を掴み、うつむきながら自分から引き離した。
華琳「一・・・刀・・・・・・・?」
不意に引き離され、俯いた一刀が気になり顔をのぞこうとしたその瞬間---
華琳の唇を一刀が奪った。
華琳「かじゅ・・・ん・・・ちゅぷ・・・・、はっ・・ぁ・・・、んぅ・・・」
一刀に不意を突かれた華琳は抵抗することもできずそのまま城壁に
もたれかかるように背中を押し付けられた。
その後、一刀の腕が華琳の腰、後頭部にまわった。
華琳「ん・・・ちゅぷ・・・、じゅず・・ぷぁ・・・・、ん~・・・!」
一刀の舌が華琳の構内に侵入し、全体を撫でるように動き回る。
激しく交わす口付けは以前交わしたものより一段と激しかった。
それだけ一刀の想いが強いのだろうか。
抱きしめられ一刀からの口付けに惚けそうになりながら、華琳は一刀の変化に気づいた。
こんなに、一刀の体は力強かっただろうか・・・・・、顔の位置も、以前より高い気がした。
腕も前より太くなっていた・・・・・・。
自分といなかった2年間で一刀も以前よりずっと男らしくなっているのだと、華琳は思っのだった。
一刀「んっ・・・・・、ぷはっ・・・・、ふぅ・・・。」
一瞬のようで永久のように長い口付けが終わり、離れた二人の唇の間には白い糸がつながったままだった。
華琳「エロバカ・・・・・・、ね、ほんと一刀は。」
一刀「はは・・・・、ほめ言葉として受け取っとくよ。」
悪態をつく華琳だったが、嫌そうな顔はせず、むしろ喜んでいるようにも見えた。
一刀も満足そうな顔で華琳を見つめていた。
華琳「あら、見境もなく襲ってくるものだとおもっていたのだけれど?」
軽くひどいことを華琳が一刀にたずねるように言った。
一刀「俺も一応時と場所を選ぶようにしてるけど・・・、なんだ華琳、してほしいの?」
おどけるように一刀が華琳に質問返しをした。
華琳「あら・・・・、あなたは私がそんなこというとでも・・・・・?」
さっきまでの穏やかな空気はどこへやら、華琳の瞳には殺意の炎が小さく宿っていた。
一刀「じょ・・・、冗談だよ、それぐらい軽く流してくれよー。」
華琳「あら、冗談だったの。半分くらいは本気だと感じたわ。」
一刀「ギクッ・・・・」
華琳「ほらみなさい、一刀の考えることなんてお見通しよ。」
勝ち誇ったような顔で一刀を見上げる華琳。一刀はふっと視線をそらす。
一刀「やっぱり、華琳には勝てないなぁ・・・。」
華琳「ふふん。あなたの主たるこの私が負けるわけないでしょう。」
一刀「だよなぁ・・・・ははは。」
二人を暖かな空気が包み、もっとお互いを求めるよう口付けを再開しようとしていたそのとき・・・・・
???「たいちょおおおおおおおおおううううううううううううううううううう!!!」
後ろのほうから大きな声が聞こえてきた-----------------------------
後ろから聞こえてくる声に一刀が振り返ったそのとき
大きな衝撃が一刀を襲った。
壁際で更に自分の前に華琳がいたため、なんとか踏ん張ろうと衝撃に耐え、位置を変わることなくその場でとどまった。
後ろからの衝撃になんとか耐えて状況を確認すると、自分の体に三人の体がしがみついているのに気づいた。
沙和「ほんとにほんとに、隊長なのぉ~!!」
凪「たいちょお・・・う。」
真桜「嘘やないんやな、ほんまに隊長帰ってきたんやな!」
衝撃の正体は自分の部下達であった三人の女の子だった。
気づいたのはいいがどんどん自分の体が彼女達に締め上げられ
骨が軋む音がしだし、さらには息が詰まりだしたのだった。
一刀「ちょ・・・、お前ら俺を・・・ころす・・・気か!」
一刀は締め上げられながらもなんとか声を絞り出して三人に声を掛けた。
沙和「よかったのー、ほんとによかったの~!」
凪「やっと帰ってきてくれたのですね・・・・隊長。」
真桜「ほんま急にいのうなって心配したんやで~・・!」
三人が三人共一刀の切ない声にも気づかず自分の思いのたけを
一刀に伝えようと声を上げていた。皆の瞳には大きな雫でいっぱいだった。
しかし、想いが大きくなるにつれ一刀の身体も悲鳴をあげ始めた。
一刀「」い・・や・・・、まじで死にそうだ・・・から・・・。」
華琳「あらあら・・・、私にも気づかずここまでするなんて、ほんとに愛されてるわねぇ・・・、一刀?」
華琳がやきもちをやいたのか、少し怒っているような口調で一刀に尋ねた。
一刀「おま・・・、かり・・・、そういうのはいいからたす・・・け・・・。」
華琳「あら・・・、そういうのとは失礼ねぇ。まぁ、そうね・・・、好きにするといいわ。」
そういうと華琳は城壁にまた登って座ったのだった。
一刀「これとそれとは話が別じゃぁ・・・・ない・・・か・ぐはっ。」
それはもう吐血しそうな勢いだったのだが、三人の抱きしめる力は嬉しさに否応なく強まっていった。
が、そこに思わぬ助け舟が飛んできた、そう言葉どおり飛んできたのだった。
???「一刀~~~~~~~~~~~!!!!」
砂埃を巻き上げ一刀に飛び込んできた人物がいた。
きれいな紫色の髪。豪快な羽織、袴。そうその姿をしているのは魏軍では只一人だけ。
霞「一刀~~~~~!」
一刀「まさか霞かああああああああああああああああああああああ!!!!???」
一刀がそう叫んだ瞬間、一刀の頭めがけて霞がダイブしてきたのであった。
その衝撃にはさすがに耐え切れず三人組を巻き込みながらその場に倒れこんだ。
華琳がいれば一緒に巻き添えになっていたかもしれない。
むしろそれに気づいて城壁に登ったのかもしれなかった。
なにせ、それが見える方向を向いていたのだから。
倒れこみながらもそう思っておぼろげながら華琳の方を見上げると
華琳は勝ち誇った顔で一刀を見下ろしていた。
華琳「ふふん・・・・、もっと苦しむといいわ・・・、ばか・・・・。」
とでも言っているように華琳の口が動いて、お酒が入った杯を口の添えながら一刀から視線を逸らした。
霞「一刀、一刀~~~~~、急におらんようなるからめっちゃさみしかったんやで~~~~~~!!!!」
凪達にぶつからないように飛び込んで後ろ側に回り込んだのはさすが張文遼と言うべきか、
身体ではなく頭を膝枕をしている状態で、一刀の頭を胸で絞めあげながら霞が歓喜の声を上げた。
一刀「ちょ・・・、気持ちいい・・・じゃなくて、そこまで締め上げられたら俺しん・・・・じゃうから!」
霞「ええやんええやん~~!!やっと会えたんやんか~~、これぐらいゆるしてぇな~。」
凪「そうです隊長!いままで私達に何も言わずに消えた罰です!」
沙和「そうなの!凪ちゃんの言うとおりなの!」
真桜「そういうこっちゃ!今ぐらいは男なら我慢するんやで、隊長!」
霞、三人組の勢いにはさすがの一刀も勝てず、4人からの激しい抱擁に我慢するしかなかった。
・・・・、というのは2年前までの自分だ。今の一刀はあのころとは違い心身共に鍛え上げ
ずいぶんとたくましくなっていたのだった。
一刀「せーめーてー、ひーとーりずぅつーにしーてくぅれ~!」
と呻き声をあげながら4人に抱きしめられながらも肘を支点になんとか立ち上がった。
4人「えぇっ!?」
一刀「ふふふ・・・・、俺だっていつまでもそこそこな男じゃいられないんだぜ?」
自慢げに言うと一刀は4人を自分から引き離した。
豪傑4人が抵抗したものの競り負けたか、驚いたのか、相手が一刀だからなのか、
そんなに抵抗することもなくあっさり引いたのだった。
4人を引き離して微妙な空気になりそうなところを一刀が切り開いた。
一刀「でもまぁ、皆の言うとおりだよな、うん。急にいなくなってごめんな。
だけどこうやって今皆の前に立ててること、俺すっげぇ嬉しいんだ。
だからまぁ・・・・、その、なんだ、ただいま!」
そう一刀が4人に告げると4人ともその場で固まってしまったのだった。
その状況にどうしたらいいかわからない一刀だった。が、さすがに先ほど以上のこの空気には
耐えれなくなったのか皆の顔を見渡しながら、おずおずと口を開いた。
一刀「あ・・・あれ、俺変な事言っちゃった・・・か?」
そう言った瞬間4人の一人がボロボロと泣き出してしまった。
それは・・・・・・・・・・・・・・・
凪だった。
いつもクールで冷静な凪がここまで感情をあらわにするのはとても珍しいことだった。
それを理解している一刀に、この涙は大きな衝撃を与えた。
凪「たい・・・ちょう、ほん・・とに・・・よかった・・、かえって・・・ひくっ・・・きてくれ・・・て・・・。」
一刀「凪・・・・・。」
大粒の涙を手で拭いながら、一刀に言った。
凪の発言に皆頷いたり、凪の頭を撫でてあげたりと、凪の意見に同感、という顔で一刀を見つめた。
真桜「凪泣かしてもてほんまに隊長はぁ・・・・。よしよし凪・・ようがんばったな。」
沙和「そうなの!隊長いなくなって皆悲しかったけど、一番悲しんでたの凪ちゃんなの!」
霞「そや・・・・、平気そうやったんは桂花ぐらいやったな・・・・・。(むしろ喜んでたようななきもするけどな)」
3人が一刀に向かって気持ちを言葉に代えて伝えた。
4人の気持ちを聞いてどうしたらいいのか・・・・、わからなかった。
俺なんかのために涙を流してくれる彼女達に自分は何ができるのだろうか。
考えても答えなんてでてこなかった。でもこんな自分にもしてあげれることはあるのだと、気づいた。
一刀「凪。」
凪「は・・・い・・・。」
下を向いていた凪の顔が一刀に向けられた。三人も一刀の言葉を聴いて一刀を見つめなおした。
一刀は華琳にもしたように腕を拡げて彼女の名前を呼んだ。
これが自分が今してあげられることで最高のことなんじゃないか、と。
一刀「おいで。」
そういわれたとき、凪は一刀に向かって走り出した、愛しい人の胸の中へ。
凪「たいちょ・・・、隊長!」
自分の胸に飛び込んできた凪を一刀はやさしく受け止めた。
一刀「ありがとう、こんな俺のためにそこまで泣いてくれて。俺、すごいうれしい。」
凪の頭を撫でながら、囁いた。
凪「私も・・・・、とてもうれしいです、この喜びを言葉にできないぐらい・・・。」
なきじゃくってぐしゃぐしゃの顔も、喜びに震える体も、その全てが一刀は愛しく思えたのだった。
その抱擁は2~3分続いただろうか、
ふと顔を見上げると3人が恋しそうに一刀と凪を見ていた。
自分も同じように愛されたいと、懇願するような顔で。
一刀「凪、いいよな?ちょっと我慢してくれよ・・・・。」
凪「はい・・・・、皆隊長を愛していますから。」
そういうと凪は一刀の腕から離れ、一刀の後ろのほうに回った。
一刀は先ほどのように腕を拡げることは無く、真桜の前に手を差し出した。
一刀「真桜・・・・・、くるか?」
真桜「とうぜん・・・・やんか!」
真桜も走りはしなかったが、凪のように一刀の胸に飛び込んだ。
真桜「うちかて・・・・・、うちかてめっちゃかなしかったんやからな・・・・!」
一刀「ごめんな・・・・・、ありがとう。ありがとう・・・、真桜。」
抱きしめあう体は本物なんだと、真桜は実感した。
実感したからこそ、強く・・・、より強く腕に力がこもった。より一刀を感じたくて。
一刀「(うわ・・・、真桜また胸でかくなってないか?ここまで近いと感触がもろにきてしまう・・・・。ぐはっ、
この場でそれはまずいぞ・・・、俺、がんばれ!耐えろ、我が半身よ・・・・!)」
我慢できそうに無くなったところで、一刀が真桜に囁いた。
一刀「真桜、この続きはまた今度・・な?」
真桜「ははーん・・・隊長はやっぱ隊長やなぁ・・・・。しゃあない、また今度やな。」
ニシシという顔で笑う真桜、しかし、そこまで気づいたのでゆっくり体を離し
一刀から離れて、凪の横に並んだ。
次は・・・・・
沙和に向かって一刀は手を差し伸べていた。 横で霞が少し落ち込んでいたが、今は無視しといた。
一刀「きてくれるよな? 沙和」
わざと疑問系にして沙和に投げかける。
沙和「当然なの!」
満面の笑みで一刀に小走りで駆け寄って抱きついた。
沙和「隊長のにおい・・・・、懐かしいの~。」
そういうとグリグリと一刀の胸に頬を摺り寄せた。
沙和の行動が微笑ましくて、一方はお返しに沙和のセットされた頭をグリグリと撫で回した。
一刀「うりゃうりゃ・・・。」
沙和「あぁ~!!隊長ひどいの~!」
一刀「はははっ・・・・、沙和がかわいいことするからだ。」
沙和「ぶぅ~ぶぅ~。」
むくれっつらになりながらもどこかうれしそうな沙和であった。
抱擁が2~3分続いただろうか、前方よりすごい念のようなものを感じふと顔を上げると
霞が怒っているのか、寂しいのか、なんともいえない顔で二人を見つめていた。
霞「(うちかて・・・・うちかて・・・・・・・。)」
それに気づいた一刀はすかさず頭を下に戻し、沙和にささやきかけた。
一刀「またあとで、いろんな話しような。」
沙和「うん、わかったのぉ!」
そう言った後沙和は一刀から離れて、一刀の後ろにいた二人に並んだ。
ふぅ~、と深呼吸して一刀が霞のほうをむいた。
そこには猫のように耳を立てしっぽを振っている霞の姿があった。
さっきのような表情とは違い、歓喜の表情であった。
霞「(残るはうちひとり・・・・、もちろんうちをだきしめてくれるはず・・・!)」
その表情を見て一刀が安堵の息を吐いた。
一刀「(襲いかかられたらどうしようかとおもったよ・・・・・、危ない危ない。)」
と、二人の心の声が
聞こえてきそうだった。
一刀「霞。」
霞「あい!」
一刀「こっちにこないように!」
霞「えぇ~~~~~~~!!・・・そりゃないで一刀ぉ~ん・・・・・・。」
一刀の声にガックリときこえてくるような感じで、霞の肩はうなだれた。
もちろん、一刀も意地悪でいっているわけではないわけで・・・。
一刀「目を、閉じなさい。」
霞「は・・・?」
一刀「いいから、閉じなさい。」
霞「こ・・・、これでええか・・・?」
目を瞑って一刀に霞が確認をとった。
一刀「うん、それでいいよ。」
霞「(うぅ・・・・、なにするつもりなんやぁ・・・・。)」
一刀の行動がまったく理解できない霞には不安でしかたなかったが
数秒後には、その不安も消えさっているのであった。
目を瞑ったままの霞の前にふと影が落ちる。
霞「(ん?・・・急にくらなっ・・・・・・。)」
そう考えた瞬間、体にぬくもりと優しさが走った。
一刀は、霞の方まで歩み寄り、霞を抱きしめたのだった。
霞「にゃ・・・・、にゃんと・・・。」
一刀「雰囲気って、大切だろ?」
くくっと、笑いながら一刀が霞の耳元で呟いた。
あっけにとられて、喜びを通り越して呆けてしまった霞だったのだが
すぐさま、正気を取り戻し、抱きしめられた腕を一刀の後ろに回し、より密着できるよう
力をこめて、一刀の体を自分のほうへ寄せた。
霞「一刀ぉ・・・、一刀ぉ・・・・。うちめっちゃさみしかってんからなぁ・・・・。」
一刀「うん・・・、ごめんな。でも今はこうしてお前を抱きしめられるぐらいそばにいるよ。」
霞「うん・・・、うん・・・。そうやなぁ・・・・。ほんまにかえってきたんやなぁ・・・。めっちゃ嬉しい・・・。」
お互いに喜びをかみ締めあい、ほつれることの無い糸のように
互いの体を強く結び合った。
一刀「あぁ~・・・、久しぶりに霞の匂いかいだなぁ~・・・。いいにおいだ。」
霞「か・・・かずと。なんか変態みたいやで・・・・、その言い方やと。」
一刀「だなぁ・・・、ははは。」
霞「にゃはは~。でも一刀らしいわぁ~。」
一刀「な ん だ っ て。」
他愛無い会話から発せられる穏やかな雰囲気が二人の世界を作り出そうとしていた
のだが、それも一瞬にして砕け散った。
一人の乱入者によって。
???「北郷~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!」
とても聞き覚えのある声であり、とても懐かしい声。と砂埃。
誰かが一目散にこちらに向かって走ってくるのがわかった。
もちろんそれは・・・そう、春蘭だ。
春蘭「きさまぁぁぁ、どんな顔してもどってきたあああああああああああ!!?」
と、叫びながら一刀に向かって走ってくる、とてつもないスピードで。
それに気づいた一刀が腕の中にいた霞を瞬時に横に突き飛ばした。
一刀「悪い、霞。おまえのためだ!」
霞「ちょっ、かずとそんな乱暴・・・に・・・・。」
一刀「げぼばぁぁ!?」
突き飛ばされた霞が一刀のほうを向くとそこに一刀ではなく春蘭のみが立っていた。
腕を突き上げた形で。
三人組「隊長!!!?」
華琳「一刀!?」
霞がその声に気づいて視線を落とすとそこには春蘭に見事にラリアットを決められた
一刀が危ない顔色で倒れこんでいた。
霞「か・・・、一刀!」
春蘭「なんだ北郷!帰ってきてもなさけないやつめ!」
霞「惇ちゃん!そういう問題やないやろーー!!」
一刀にラリアットを決め、そのまま墜ちた一刀に指を指しながら春蘭が怒号を浴びせた。
三人組「隊長!隊長! 大丈夫ですか!?」
霞「一刀!一刀! しっかりしい!まだ死んだらあかんで!」
倒れこんだ一刀に4人が駆け寄り介抱しだした。
春蘭「はっはっは、これぐらいで気絶していたら華琳様をお守りすることはできないぞ?」
腕組みを組んで満足げに一刀に語りかけるが、一刀に届くことは無いのであった。
凪「隊長が・・・、い・・・・息をしておられません!」
凪が深刻な面持ちで声を出した。
春蘭「お・・・・、おい・・・・、凪そんな嘘を言うものではないぞ?」
あの凪がいうのだ、冗談ではないのだろう、そう感じて春蘭の顔には冷や汗がだらだらと流れ出した。
真桜「夏侯惇将軍! 嬉しいのはわかりますが、なんでここまでする必要があるんですかぁ~。」
沙和「隊長~、おいてかないでなのぉ~。」
沙和、真桜がおお泣きするのに気づいて、春蘭の体中の血の気が引いたのだった。
春蘭「ほ・・・・、ほんとに息してないのか?」
秋蘭「ハァハァ・・・、姉者・・・、いくらなんでも早すぎるぞ。ん、なにかあったの・・・・か?」
春蘭のダッシュにやっと追いついた秋蘭だったのだが、この場の異様な空気に気づいた。
ふと春蘭の前にいる4人の真ん中にいる一刀の姿をみて、ほとんどわかってしまった。
秋蘭「姉者、なんてばかなことを・・・・・・。おい!早く医者を呼べ!だれか!!」
春蘭「い・・・いや、私はそんなつもりで・・・・・。」
ガシッと誰かが春蘭の肩を掴んだ。
華琳「春蘭・・・・・・・、何てことをしてくれるの・・・・・、あなたは?」
春蘭「かかかかかかっ・・・、華琳様!!!?」
羅刹が如きオーラを纏わせ、鬼神のような瞳で華琳が微笑みかけた。
その逆の手にはなぜか「絶」が握りしめられていて、絶からはミシミシと悲鳴が聞こえた。
春蘭「華琳様、違うんです!つい嬉しくて・・・・・!こんなことするつもりじゃ・・・・。」
華琳「そう・・・・・、でも、こうなったのは貴女のせいよね・・・・?」
春蘭「い・・・いや・・・、こやつの鍛え方がなってないだけで・・・・・。」
どうしようもない状況であったが華琳に嫌われたくないが一心で春蘭が言葉を繋げた。が
ふぅ・・・、と華琳はため息をついて、満面の笑みで春蘭の顔を見た。
華琳「春蘭。」
春蘭「はい、なんでしょうか!」
満面の笑みに安心したのか春蘭が笑顔で華琳の顔をみて尋ねた。
華琳「頭を冷やしてきなさあああああああああああああああああい!」
華琳が叫んだ瞬間、絶がバットのようにしなり春蘭の体を空のかなたへ打ち上げた。
春蘭「そんなあああああああああああああああああああああああ!!!」
その飛び方はギャグマンガでよくみる光景であり、キランと音をたて空のかなたへ春蘭が消えていった。
そういう行為を二人が行っているうちに
秋蘭が皆をなだめながら医者がいないか探し始めた、が
今日のこの立食パーティーに来ている友人に一人心当たりがあり、ポロリと言葉がこぼれた。
秋蘭「医者・・・・、医者・・、あ! そういえば、今日は華蛇が来ていたな!」
凪「ああぁ、そういえば!」
真桜「ならいますぐにでも華蛇を探しに」
沙和「探しにいかなくちゃなの~!」
???「ん、俺をおさがしかい?」
その声にばっと5人が声のするほうに振り向いた。
その先には探そうとしていた華蛇がお皿に料理をのせまくって
バクバクとお肉を食べている姿があった。
どうやら、騒ぎが聞こえてきたので近くまで野次馬にいこうとしていたらしかった。
チャンスといわんばかりに、秋蘭が一刀を起こして指を指して華蛇に向かっていった。
秋蘭「至急コイツの様子をみてくれないか? 今生死の狭間をさまよっているんだ!」
華蛇「なんだなんだ・・・、おだやかじゃないな、ちょっとまってくれよ、皿置いてくるから。」
そういうと先ほどまで華琳が座っていた城壁まで自分の取り皿をおきて一刀の方へ向きを変えた。
華蛇「ちょっと患者を診たいから離れてくれるかな?5人とも。」
そう言われた5人は一刀から離れて、華蛇に一刀を託した。
華蛇「ん、なんだ、こいつの状況・・・・、普通じゃないぞ?」
秋蘭「ど、どういうことだ?」
華蛇の一言に驚いて秋蘭が華蛇に尋ねた。
華蛇「なに、簡単なことだ、体の中から魂が抜けかかってるんだ。もし俺がここにいなかったら
もう少しで天国逝きだったな。」
5人「なっ・・・!」
凪「隊長は助かるんですか!?」
華蛇「だから言ったろ? 俺がここにいなかったらってな!」
霞「なら一刀は助かるんやな!?」
華蛇「おう! 華琳ちゃんの時みたいに邪魔が無ければ完璧に治せるよ。今回は針もちゃんとあるしな!!」
沙和「よかったなのぉ~!」
華蛇「だから今回は皆離れていてくれよ、さすがに半死人状態の彼を呼びとめ引き戻す技は
激しいから巻き込みかけないんだ。」
真桜「わかった、皆で離れるさかい、ちゃんと隊長呼び戻してや!」
華蛇「おう、任せろ!前のような失敗はしないぜ!!」
5人の願いを背中に受けて華蛇が「あの」黄金の鍼をはじめから取り出し、心の底から
五斗米道の真髄である雄叫びをあげて技を繰り出した。
華蛇「はぁぁぁ!! 一鍼同体! 全力全快!! 必察必治癒 !!!
元気に・・・・なぁれえええええええええええええええええええええええ!!!!!」
華蛇の手中にある鍼が一刀の体に刺さった瞬間、一刀の体が黄金色に輝きだした。
5人「おおおおっ!」
その輝きに固唾を呑んで華蛇の様子をみてた5人がその輝きに驚いた。
華蛇「これで・・・よしっ!」
輝きが一刀の体から薄れていくにつれ、一刀の顔色がみるみるうちに回復していった。
一刀「ん~・・・・・。」
一刀が目を覚ましたのか、小さいが声を漏らした。
-----------その輝きを見た華琳がこちらの様子に気づき、走りよってきた。
華琳「どうしたの!? 何かあったの?」
秋蘭「華琳様! 華蛇のおかげで本郷殿が無事よみがえりました!」
華蛇「俺に任してくれてありがとう!いい治療ができたぜ!」
華蛇が笑顔でGJサインを皆に突き出した。
その後、ゆっくりと一刀が体を起こした。
一刀「あいたたた・・・・、ほんと春蘭は変わらないな・・・・・・。
ん・・・、どうしたんだ皆、そんな顔して? もしかして、俺の顔変形してるとか・・・・?」
そういって頭をポリポリと掻いた一刀に一人だけ、毅然として歩み寄るものがいた。
ほかの皆は蘇ったことに安堵し、また涙するものもいて、動けずにいたのだが。
歩み寄るものそれは・・・・、もちろん華琳だ。
華蛇「おっと・・・・、俺はお邪魔かな。」
小さく言うと、華蛇が身を引いた。
一刀「か・・・・、華琳?」
華琳「・・・・・・・。」
一刀の前で華琳がひざを下ろし、一刀をじっと見つめた。
ドキドキして華琳の方をみていた一刀に戦慄が走った。
目の前で華琳が右手をヒュッと音が聞こえるぐらいの速さで振り上げたのだ。
一刀が反射的にグッと目をつぶった。ほかのものたちはあちゃーっという顔でその光景を見ていた。
が、その後予期していた事態とは違う状況になった。
華琳のその手は顔にではなく胸元へいき、一刀の学ランを強く握っていた。
華琳が俯いてつぶやいた。
華琳「ほんと・・・・・、心配ばっかりかけるんだから・・・・、あなたは・・・・。」
一刀がキョトンとした顔をしていたのだが・・・・、ふっとやさしい顔になった。
一刀「華琳・・・・・・、ありがとう、俺なんかのために心配してくれて。」
そういうと一刀が華琳の体に腕を回し、引き寄せた。伸ばした足の上に華琳を誘い込み
そのまま座ってもらったのだが、珍しく華琳が怒ることもなく、そのまま座って一刀に抱きしめられた。
一刀「(あぁ・・・、ほんとかわらないな・・・・・、こういうところも全部・・・・。なんて・・・・愛おしい。)」
一刀がその優しさに触れて、劣情が沸いたのか・・・・、愛おしすぎたのか
先ほどのように華琳の顔を持ち上げてキスをしようとしたとき、またもや闖入者が
飛び込んできた。双子のように仲のいい、あの二人組みだ。
流々「兄様! 帰ってこられたのですか!?」
季衣「兄ちゃん! おかえり!!?」
肩で息をしながら元気のいい声で二人が現場に到着した。
今にもキスできそうな瞬間にこられたのでもったいない気はしたが、
久しぶりに会えた二人に喜びを伝えたくて、一刀もそれに答えた。
一刀「おう、ただいま!」
二人「おかえりなさい!」
互いに元気に手を上げて喜びを分かち合った。
そのあと更に後ろからも懐かしい声が聞こえてきた。
風「おぉ・・・・おにいさんではないですか~。おかえりなさいですょ~。」
凜「おや・・・、帰ってきたのですね。」
桂花「ちっ・・・・・・、帰ってこなくてもよかったのに・・・。」
一刀の帰還を喜ぶ二人と、喜んでない一人が並んで歩いてきたのだった。
魏の知能ともいえる、軍師が勢ぞろいであった。
一刀「うっす、ただいま。」
気づけば魏の将軍すべてが一刀の周りに集まっていた(飛んでった一人を除き)。
華琳を抱きしめながら自分の周りに集まったみんなを見回して一刀が一言。
一刀「皆・・・・・、よりかわいくなったなぁ・・・・・・。」
皆「なんでそこでその言葉!?」
一刀「はははっ・・・・、でもほんとのことじゃないか。」
華琳「ほんと・・・・・、あなたの口からはそういうことばかり出てくるのね・・・・・・。」
一刀「あだだだっ!」
華琳が抱きしめられていたのを解いて一刀の頬をつねった、ものすごい力で。
華琳「で・・・・、私との約束を破って、帰ってきて・・・・、何か言葉はないの?」
そういうと、パッと頬を抓っていた指を離して、一刀に問いかけた。
いたたた・・・・、というポーズをとっていた一刀がまじめな顔をして華琳の方を向いて
言葉を発した。
一刀「約束を破ってごめん。」
華琳「それで?」
一刀「あの後、元の世界に戻って、後悔もしたけど逆によかったと思えたんだ。」
華琳「それで?」
一刀「また皆に会うために、俺もこっちの世界でやれること全部やろうって気持ちになれたから。」
華琳「それで?」
一刀「あっちでやれることやって、今なら恥ずかしくない姿で会える!って思ったんだ」
華琳「それで?」
一刀「そう思ったらこっちの世界にいつのまにかいたんだ。」
華琳「それで・・・?」
華琳の目じりに小さな雫が溢れ出した。少しずつ声も小さくなっていた。
一刀「だから今度こそ、絶対に守る、みんなとの約束を、なによりも、君との約束を。」
華琳「それ・・・で・・・・?」
一刀「そのためにいま、俺はここにいる。皆の下に、君のそばに、ね。」
笑顔で一刀が華琳に言った。迷うことなく、思いのたけをすべて。それは皆にも聞こえていた。
華琳「馬鹿・・・・・ばかぁ・・・・・・・・。寂しかったのよ・・・・・あんたがいな・・・くなってか・・・ら・・・ずっと!」
堰を切った様に華琳が涙を流しながら、一刀に寄りかかった。
一刀「俺も寂しかったってば!あっちでめちゃくちゃおちこんだんだぜ・・・?これでも。」
ふんっ、と鼻息を鳴らしながらなぜか誇る一刀。そのまま言葉をつなげた。
一刀「でも、もう大丈夫だ、これからはずっとここにいるよ、皆の下に。この命が尽き果てるまで。」
だから・・・・・
一刀「みんな、ただいま。これからもまたよろしく!」
皆「おかえり!」
------------------こうして一刀はまたこの世界に帰ってくることができた。
これ以降、彼らがどういう世界を作り歩んでいくのかはわからない。
なぜなら彼らの世界の先に私たちがいないからだ。
新しい世界で彼らは生きていく。これからもずっと。
だが、ふと目を閉じ、心に念じれば彼らはそこにいるだろう。
だからどうか、これからも見守っていて欲しい、彼らの歩む世界を。
この世界とあちらの世界を繋ぐ鍵は貴方達の心の中にあるのだから。