第4話 愚連隊なんて呼ばせません!
前よりいい雰囲気で話せるようになっている。
彼女いない歴イコール年齢の俺にも春がやって来た!
まだ正式に付き合ってないけどいいよね? いいよね!
イリーナさんの事が好っきでぇーす!
胸に頭を擦り付けたのなんてマーキングでしょ! 間違いなく!
イリーナさん確か狼の遺伝子を組み込まれたって言ってたし!
自惚れても良いよね? 自惚れちゃうよ? 自惚れちゃえ!
まだ知り合って二日目だけど時間なんて関係ないよね?
早速イリーナさん探しにレッツ・ゴー!
「アル! イリーナさん今どこ?」
「格納庫です。」
ホントアルってば使えるなぁ・・・。
居た居た。
イリーナさん、何してるんですか?
「ヨシトさん。この子を見てたんです。」
そう言って自分の愛機を指さす。
「こんなに綺麗にしてもらったの久しぶりだから・・・。」
「? 普通、オーバーホールしたときに綺麗にしません?」
俺の言葉に表情が暗くなる。
ホントどこに地雷が埋まってるか事前に教えてほしい・・・。
「・・・私達の部隊は貧乏ですから。他の部隊がオーバーホールしていても定期点検で済ませられるんです・・・。」
はい!? 何その差別!?
「私達は特務隊と言う名の愚連隊扱いですから・・・。」
「愚連隊って・・・。」
繁華街とかを何人かで纏まって練り歩いて不正な事をする不良連中の事ですよね?
なんでイリーナさんが愚連隊なのよ!?
意味わからん! 意味わからん!
「私達はもう一つ別な呼び名があるんです・・・。」
! そっちの方が原因と見た! 何て呼ばれてるのよ!
「醜女部隊と・・・。」
? しこめ? ってあの醜女!? 醜いって意味のあの醜女!?
さらに意味が分からん! ホントに意味が分からん!
イリーナさんって十分美人だよ!? どこを取って醜女なのよ!
メルフィル王国っていうか惑星イウーロ全部の評価なの?
「残念ながらイウーロ全般の評価です・・・。」
ちょ! 俺のイリーナさんが悲しみに沈んでる!
許すまじ!
イリーナさんの部隊を愚連隊なんて呼ばせません!
ましてや醜女部隊なんて以ての外!
必ず見返してやる!!
だから気になった事を素直に聞く事にした。
「この機体ってアシガルで呼び名あってますか?」
「? はい、そうです。アシガルです。」
「このアシガルって最新ヴァージョン何で配備してないんですか?」
「・・・精鋭部隊には配備されてます。私達はさっきも言った通り嫌われてますからいつも旧ヴァージョンが配備されるんです。」
「ちなみにその精鋭部隊に配備されたアシガルの写真とかありますか?」
「ありますけど・・・。」
「見せてください。」
「では、機体の中に入ってください。」
よし! 狭い空間に二人っきり!
映像を見せられてがっかりした。
この最新鋭のアシガルも俺からしたら十分旧式だ。
俺のアシガルをイリーナさんの部隊に配備したら面白くなるんじゃね?
とりあえずいきなり実践は無理だからシュミレーターを使おう。
「イリーナさん、シュミレーター使って練習しましょう! プログラムの書き換えで機体の反応が大分上がったはずですから慣れておきましょう! その内そっちのサムライの機種転換の訓練もしておきましょう! でもその前に俺が持っている最新鋭機を乗りこなす方が先かな? とにかくイリーナさんの愛機のデータでシュミレーターを使いましょう!」
そう言ってイリーナさんの手を掴む。
嫌がられて無いよね。
そっと振り返ると顔を真っ赤にしたイリーナさんがいる。
これって恥ずかしがってるだけだよね? 怒ってる訳じゃないよね?
だって、もじもじしてるんだもん! 可愛いわ。ホント可愛いわ!
そんでもってシュミレーターを使ってみました。
イリーナさん、感想は?
「機体の反応速度が段違いでした! 思ったように回避が出来ます! ヨシトさんってすごいです!」
おっしゃぁぁぁぁぁ!
俺の株が爆上げ!!
交際にまた一歩近づいたぞぉぉぉぉぉ!
この調子で機体を使いこなせたら名誉挽回、汚名返上も近づく!
もう二度と愚連隊とか醜女部隊なんて呼ばせません!
楽しい昼食時にアルが割り込んでくる。
「イリーナ様、あと3時間で指定されたランデブー・ポイントに着きます。」
え? 嘘? そんなに経ったの?
名残惜しさにイリーナさんを見ると寂しそうにしている。
勇気を持って手を握ったらきちんと握り返してくれた!
顔を上げると顔を真っ赤にしてそれでもニッコリと笑ってくれる。
うん! 俺、自惚れても良いよね! イリーナさんに好かれてるって!
指定ポイントに到着したが誰も居ない。
誰も来ない。
嫌な静けさに包まれた。
指定時間を2時間も経過した。
誰も居ない。
誰も来ない。
3時間経過。
俺たち以外誰も居ない。
誰も来ない。
4時間経過。
「引き上げましょう・・・。」
すんげぇ悲しそうに言うイリーナさん。
仲間に待っていて欲しかったはずだ。
迎えに来てほしかったはずだ。
チクショウ・・・。 俺って無力だ・・・。
「次の合流ポイントはここです。」
イリーナさんとアルとで合流地点の場所を確認している。
それを見て俺は嫌な感じを覚える。
「アル、この合流ポイントの詳細な立体データを映像化できるか?」
「映像化します。」
何とも無いようにすんなりと映像化するアル。
お前これってすごく難しい事なんだぞ?
とにかく立体映像を確認する。
イリーナさんを見ると驚いている。
「凄いです・・・。ここまで詳細にデータを映像化出来るなんて・・・。」
やはりこの映像はリアルと大差がないという事だ。
うん、やっぱりそうだ、不味い。
俺だったらここを急襲して敵の補給部隊を叩く。
待ち伏せするのに絶好のポイントだ。
「俺だったら十面埋伏陣を張って殲滅戦を展開する。」
イリーナさんがギョッとしてオレを見る。
殲滅戦という言葉に驚いているのだろう。
何でこんな待ち伏せしてくださいというところに陣地を構えるかなぁ。
もしこれがワザとなら相当肝が太い。
逆に分からずにここに陣を布いたのならそんな奴に軍の指揮など取らせるわけにはいかない。無駄な死人が出る。
「アル、合流ポイントまで急げ。イリーナさんたちの部隊が全滅する前に着かなきゃ意味が無いぞ。」
俺は格納庫に急ぐ。
「サムライの出撃準備を急いでくれ。」
「! 私も出ます! 姉さんたちを助けに行きます!」
よし! 俺のホントの意味での初陣だ!
愚連隊なんて呼ばせません!