落葉命
揺れる落ち葉は、ある時自分が落ちるばかりで、浮き上がる事のない事に気付いた。愛する、母体たる木より放たれて後、自分はただひたすらに地を駆け巡る運命にあるのだ、と。
落ち葉は、母体の木を愛していた。できる事ならば離れたくないと願っていた。しかし、季節の変わり目とは残酷で、二つはごく自然に二つに分かたれる。落ち葉は木には戻らない。それが自然の摂理だった。
急に、それに逆らいたくなった。何故自分は、落ち葉は落ちるのだという運命に迎合して、愛する木より離れてから、二度と近付くまいと決心していたのだろう。
そこへ一陣のつむじ風がやってきて、彼を祝福するように上へ上へと押し上げた。ああ、あの場所は、あの枝の先のあの場所は、我が故郷だ。落ち葉は大いに、歓喜した。
だが、そこに落ち葉の居場所は残されていなかった。新芽が、わずかに顔を覗かせていたのである。やがて祝霊たるつむじ風も止み、落ち葉は地へとただただ落ちていった。