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008 エレノア様にご用心!(前編)

 ジグたちが港町を後にし、旅を始めてから数日が経過した。

 道中、天を割るような大雨に見舞われ、森の洞窟で湿った火を囲む夜もあったが、あの地下遺跡で遭遇したような「歪んだ魔獣」の影を見ることはなかった。


「……アルス、お前、意外に手際がいいんだな」


 洞窟での野宿の際、手慣れた様子で薬草を煎じ、寝床を整えるアルスの姿に、ガウルは素直な感心を寄せていた。浮世離れした美貌に反して、その指先には過酷な自然の中で生きてきた者特有の、確かな知恵が宿っている。


 雨が上がり、湿った土の匂いが立ち込める森を抜けると、視界が開けた。


「すごい……。見てください二人とも。あの丘の上にあるのは、祭壇でしょうか?」


 アルスが指差す先、小高い山に沿うように築かれた街の頂に、白磁の石材で造られた立派な祭壇が鎮座していた。


「あれはこの街の行事に使われる祭壇だな。……神聖王国との付き合いが深い場所だと聞いている」


 ガウルは「神聖王国」という言葉を口にする際、わずかに眉間に皺を寄せた。二十年前の戦乱の記憶が、苦いかすとなって胸を焼く。だが、今はそれを表に出さぬよう、努めて平穏を装った。


「はえー……。あんなてっぺんで何やるんだか。物好きもいたもんだな」


 ジグは呆れたような、それでいてどこか感心したような調子で巨大な構造物を見上げている。


 この辺りは山と森に囲まれているせいか、行き交う人々は女性であっても動きやすく、実用的な衣服を纏っていた。活気ある街並みに目を輝かせるアルスを保護者のような視線で見守りながら、ジグとガウルもまた、長旅の泥を落とすべく宿屋へと足を向けた。


 ----------


 ちょうどその頃、街を一望する丘の上の屋敷では、静謐な朝の時間が流れていた。

 領主のものと思われるその屋敷の食堂には、柔らかな陽光が差し込み、雨露に濡れた庭園の緑が窓の外で美しく輝いている。


「いい朝ですわねえ……」


 亜麻色の長い髪を揺らし、うっとりと外を眺めるのは、可憐な少女エレノア。その気品に満ちた佇まいは、誰が見ても一級の貴族であることを物語っている。


「……エレノア。実は君に、頼みたいことがあってね」

「なんでしょう? アルフレッドお兄様」


 食卓の向かいに座る兄、アルフレッドが妹を見つめて切り出した。二人は驚くほどよく似た兄妹であり、その端正な顔立ちは朝陽を浴びて神々しいほどだ。


「実は、次期領主を受け継ぐ『宝剣の儀式』を、そろそろ行おうと思っていてね」

「そうですわね。お兄様ももうすぐ二十五歳……。次代を約束する儀式には、ちょうど良いかもしれませんわ」


 アルフレッドの言葉に、エレノアは誇らしげに頷いた。騎士道精神を体現したような穏やかで優しい兄は、彼女の何よりの自慢だった。


「それで、その儀式の後……あまり間を置かずに、フロルとの結婚式も済ませてしまおうと思っているんだ」

「まあ……フロル様との結婚式も? そんなにお急ぎにならなくてもよろしいのに」


 エレノアは少し意外そうに目を丸くした。兄の婚約者であるフロルもまた、兄に似て物静かで慈愛に満ちた女性であり、エレノアも姉のように慕っている。だが、この時期に畳み掛けるような祝儀の提案には、わずかな違和感を覚えた。


「父が先日、病で静養されただろう? 母も体調を崩しがちだ。二人が元気なうちに、式を見せてあげたいと思ってね。もちろん、フロルのご両親にもだ」

「……そうですわね! そういうことでしたら、お父様もお母様も、きっとお喜びになりますわ!」


 兄の家族を想う深い慈愛に触れ、エレノアの疑念は一瞬で霧散した。やはり私の兄は、世界で一番素晴らしいお方だわ――彼女は確信を持って微笑んだ。


「そこで、準備が立て込むものだから、エレノアにも手伝ってもらえないかと思ってね」

「まあ、そんなお話でしたのね。苦労をかけるね、と言われる必要なんてありませんわ!」

「ありがとう、エレノア」


 どこか浮世離れした、あまりに「美しすぎる」兄妹の会話を、窓辺の小鳥たちが不思議そうに首を傾げて見つめている。


「最高のお兄様にふさわしい、最高の式を私がご用意しますわ。何の心配もいりませんわ!」


 胸に手を当て、眩いばかりの決意を語るエレノア。

 その真下、街の喧騒の中では、ジグたちがようやく安宿に腰を落ち着けていた。


「……やっと、まともなベッドで寝れるぜ」


 ジグが漏らした安堵の吐息とともに、三人の旅路は束の間の休息へと入る。


 ----------


 夕闇が街を橙色に染め上げる頃、ジグたちは活気に満ちた通りを歩いていた。

 山間の冷涼な空気の中に、甘い砂糖の焦げる匂いや、香ばしい香草の香りが混じり合う。この街は「食」の都としても名高いようで、軒を連ねる菓子店や煮込み料理の屋台の数々に、実利主義のジグやガウルも思わず足を止めていた。


「食いもんだらけだな、この街は……。見てるだけで胃もたれしそうだぜ」


 ジグが冗談めかして言うと、ガウルも並べられた色鮮やかな菓子の籠を眺め、深く頷いた。


「これほどの質なら、街道を伝って連合の首都まで売られていくというのも頷けるな」


 二人の傍らでは、アルスが子供のように目を輝かせて街の景色を堪能していた。路銀にさほど余裕があるわけではなかったが、ジグとガウルは顔を見合わせると、旅の景気づけにと、アルスに小さな包み菓子を買い与えてやった。


「……あ! エレノア様だわ!」


 不意に、通りの先から華やいだ声が上がった。

 その名が呼ばれるや否や、街の人々が磁石に吸い寄せられるように広場へと集まっていく。三人は何事かと足を止めた。


 群衆の中心にいたのは、広がる朝陽のような亜麻色の髪を持つ少女――エレノアだった。

 彼女は市民一人ひとりに慈愛に満ちた声をかけて回っていたが、その光景には、どこか芝居がかった奇妙な違和感が漂っていた。

 彼女の背後には、「セバス」と呼ばれる執事が立ち、扇子で彼女の髪が美しくなびくように絶えず風を送っている。さらには数人のメイドたちが、さりげなく、周囲を人払いしていた。一体何の目的があるのか…。


「うわ……。なんつーか、貴族って感じだな。変わった奴だぜ」

「……初めて見ました。あんなに熱烈に歓迎される方を」

「ん……むう……」


 ジグの呆れ顔とアルスの感嘆をよそに、ガウルは一人、腕を組んで唸るのみだった。かつて騎士として生きた彼にとって、その光景はあまりに作為的であり、同時にどこか懐かしく、そして何より身元を隠している身としては居心地が悪いものだった。


「怪鳥だ! 怪鳥が出たぞーー!!」


 唐突に、広場を裂くような叫び声が響き渡った。

 だが、その警戒の声はあまりに白々しく、棒読みの台詞のようであった。


 ギエエエエエ!!


 劈くような鳴き声と共に、空から巨大な翼が舞い降りる。怪鳥は街の建物をなぞるように滑空し、なぜか「偶然にも」人払いされた中心に取り残されたエレノアを目掛けて、一直線に急降下した。


「い、いやああああああ!」


 エレノアの、悲鳴さえもが美しく計算されたかのような叫びが響く。

 怪鳥がその鉤爪を彼女に伸ばそうとした刹那――。


「邪魔だぜ」


 ジグの放った紫電が怪鳥の翼を焼き、怯んだ隙を逃さず、ガウルが岩をも砕くような蹴りをその胴体に叩き込んだ。

 凄まじい衝撃にたまらず怪鳥は再び空へと逃げ延びるが、雲間に消える直前、その姿は眩い光を放って、霧のように霧散した。


「チッ、やっぱ魔術の簡単な幻獣か。たちの悪い嫌がらせだな」

「なんだ……。誰かの悪質ないたずらか?」

「大丈夫ですか?」


 不快げに鼻を鳴らす二人の横で、アルスが膝を突いたエレノアに優しく手を差し出した。

 エレノアがその手を取り、視線を上げた瞬間、彼女の瞳に驚愕が走った。

 フードの陰から覗くアルスの顔立ちは、彼女の自慢の兄にも劣らぬ、透き通るような神々しさを秘めていたからだ。


「ええ……。ありがとうございます。おかげで助かりましたわ」


 気品ある笑顔を取り繕いながら、エレノアは三人を鋭く観察した。

 一人は腕に覚えのある凄腕の傭兵。一人は異国の魔術師だろうか。そして、この世のものとは思えぬ美貌の青年。


「自分の街であっても、外を歩く時は護衛を付けた方がいい」


 ガウルが短く、けれど重みのある助言を残すと、三人は深追いすることなくその場を後にした。


「……セバス。今の方たちは?」


 三人の背中が群衆に紛れるまで見送っていたエレノアが、冷徹なまでの冷静さで執事に問いかけた。


「本日この街へ到着した旅人のようです。お嬢様」

「そう……。悪くないわね。セバス、準備なさい」

「はっ。直ちに」


 背後で交わされた主従の企みなど知る由もなく、ジグたちは今夜こそ手に入る「清潔なベッド」での安眠を求めて、宿屋へと帰っていった。


 ----------


「……で、俺達に仕事を頼みたいって話だが」


 翌朝。街の外れにある、しっとりと落ち着いた佇まいの料亭の一室。

 久しぶりに柔らかな寝具に包まれ、泥のように眠った朝、アルスが扉の隙間に差し込まれていた一通の封書を見つけたのだ。

 領主の娘からの呼び出しとなれば、無碍に断って後で「お尋ね者」扱いされるのも面倒だ。ジグとガウルの意見は珍しく一致し、三人はこうして、まだどこか眠い目を擦りながら席についていた。


「ええ、そうなのですわ。実は今、人手が足りなくて困っていますの……」


 エレノアは昨日と変わらぬ気品を振り撒きながら、優雅に語りかける。隣では執事のセバスが、まるで呼吸をするかのような自然さで扇子を動かし、主人の髪をふわりとあおぎ続けていた。


「宝剣の儀式ねえ。あの丘の上の祭壇で、一体何をやるのかと思ったら」


 ジグが呆れ半分に言いかけるのを、(……堪えろよ、ジグ)とガウルが鋭い肘打ちで制した。


「そうなのですわ。そちらの準備で家臣たちは皆、手一杯。お兄様の結婚式の準備にまで手が回らなくて……困り果てておりましたの」

「その、宝剣の儀式というのは……どのようなものなのですか?」


 アルスの純粋な問いに、エレノアは待っていましたとばかりに胸を張る。


「昔、友好の証として神聖王国より賜った宝剣を、次代の領主が継承する神聖なる儀式ですのよ。今回は私自慢のお兄様が……アルフレッドお兄様がその大役を務めるのですわ!」

「……だが、なぜ俺たちなんだ?」


 ガウルが最も根源的な疑問を投げかけた。昨日会ったばかりの、素性の知れぬ旅人に頼むような話ではないはずだ。


「それはもちろん、昨日私をあのような窮地から救ってくださったからですわ!」

「あー……あれか。……結局、アレは何だったんだ?」


 ジグは昨日の怪鳥を思い出した。魔術による幻獣としてはお粗末極まりなく、実戦を潜り抜けてきた者からすれば、単なる「出来の悪い手品」にしか見えなかったが。


「あれは、私が用意したものでございます」

「はあ?」

「執事様が、ですか?」


 平然と言ってのけたセバスに、ジグとアルスは同時に声を上げた。


「はい。お嬢様の窮地をお救いになる勇気と実力を備えた方にこそ、アルフレッド様の結婚式の準備を……ひいては護衛を、お手伝い頂くのに相応しいと判断いたしました」


 ジグはこみ上げてくる頭痛を抑えるようにこめかみを押さえた。この、論理が飛躍しているようでいて、自分たちの世界観を完璧に押し通してくる感覚……。初めてアルスに出会った時の「あの感じ」に、どこか似ている。


「……誰も助けなかったらどうするつもりだったんだ。あの鳥、確実にお嬢さんを狙ってただろ」

「心配には及びません。その時は、私が一突きで仕留める手はずになっておりました」

「こう見えてセバスは、剣にも覚えがございますのよ」


 誇らしげに微笑むエレノアを見、ガウルは「聞かなければ良かった」と心底後悔した。


「……結婚式の準備というのは、具体的には何をすれば?」


 もはや断れない空気を察したアルスが、好奇心を隠さずに身を乗り出す。ジグとガウルは、精一杯気付かれぬように、けれど重く、深い溜息を吐き出した。


「そんなに難しいことではありませんの。この街には素晴らしいシェフが沢山いらっしゃいますでしょう? お兄様の式にお出しするメイン料理をいくつか、試食して選んでいただきたいのですわ」


 数日後の祝典を思い描き、うっとりと頬を染めるエレノア。


「それと……儀式の際、人知れず護衛をお願いしたく」


 セバスが言葉を添える。相変わらず、主人の髪をあおぐ手は止まっていない。


「護衛? 領主館の騎士団はつかないのか?」

「もちろん、お兄様には二人の近衛が付きますわ。ですけれど、念には念を……何が起こるか分かりませんもの」


 エレノアはそう言うと、ずっしりと重そうな金貨の袋を机に置いた。


「報酬の半分を前払いで。あとの半分は、宝剣の儀式が無事に終わった時に。……試食のための経費も、別に用意してありますわ。いかがかしら?」


 世間知らずの夢見がちな少女かと思えば、こういう実利的な部分は驚くほど抜け目がない。ガウルは、住む世界が違うなりに一筋縄ではいかない彼女の性格に、内心で舌を巻いた。


「……まあ、料理選んで護衛するくらいならな」


 ジグは観念したように袋を手に取った。ここで断れば、さらなる「仕込み」をされかねないという防衛本能が働いたのだ。


「……まあ! 快く引き受けてくださるなんて! 本当に助かりますわ!」


 エレノアは弾けるような笑顔を見せると、すぐに立ち上がった。


「では、私たちも準備で急ぎませんと。セバス、次の予定は?」

「はい。まずはメインディッシュの選定にございます」

「こうしてはいられないわね。セバス! 準備なさい!」

「かしこまりました、お嬢様」


 嵐のような主従は、ひらりとドレスの裾を翻して去っていった。


「……貰ってしまいましたね。お金」

「貰っちまったなあ……、金」


 遠ざかっていくエレノアが、道行く市民一人ひとりににこやかに声をかけ、挨拶を交わす姿を、三人は呆然と眺めていた。


「……まあ、悪い人間ではなさそうだがな」

「悪人じゃねえから、尚更タチがわりいんだっての……」


 魔獣を相手にするよりも精神を削られそうな予感に震えながら、三人は机の上に残された金貨を、ただじっと見つめるのだった。


 ----------


 裏通りの喧騒から切り離されたその一角に、ひっそりと、けれど凛とした佇まいでその店はあった。

 大通りの名店たちが競い合うような華美な装飾はない。しかし、木枠のショーケース越しに並ぶ菓子たちは、静かな矜持を纏った一級品の輝きを放っていた。


(もっと、たくさんのお客さんに食べてもらえたらいいのになぁ……)


 店番を任されている娘は、小さく溜息をついて頬杖をついた。

 幼い頃に母を亡くして以来、父は男手一つで彼女を育ててきた。腕一本で街に店を構えるまでになった父だったが、一等地を借りるほどの蓄えはなく、この目立たない裏通りが彼らの城となった。

 近隣の常連客に支えられ、日々の暮らしに困ることはない。けれど、娘は知っている。父の作る菓子の本当の価値を。


「……! あ、いらっしゃいませ!」


 カラン、と乾いた鈴の音が響き、娘は慌てて姿勢を正した。

 足を踏み入れてきたのは、この界隈では見かけない奇妙な三人組だった。


 深くフードを被り、顔を隠した青年。その隣には、燃えるような赤髪と尖った耳を持つ、神聖王国の伝承でしか聞いたことのないようなエルフの男だろうか。そして最後尾には、甘い菓子とは無縁そうな、鉄の匂いを漂わせる屈強な戦士。


「料理を選べって言われてもなあ……。俺たちにそんな目利きができると思ってんのか、あのお嬢様は」

「でもジグ、ここは良いお店だと思いますよ」

「料理か……。戦場では腹を満たせれば何でも良かったが、いざ選ぶとなると難しいな」


 三人はそれぞれに勝手なことを言いながら、品定めをするように店内を見渡し始めた。昨日の今日でエレノアに無理難題を押し付けられた彼らは、大通りの派手な店構えに辟易し、逃げ込むようにこの裏通りへと迷い込んできたのだ。


「では、こちらのお菓子を一つ頂いてもいいですか?」

「え? あ、はい! ありがとうございます!」


 フードの青年――アルスが、穏やかな声で一品を指差した。派手さはないが、素材の良さが透けて見えるような、実直な作りの菓子だ。

 娘が差し出したそれを、アルスはその場で口に運んだ。刹那、彼の表情がパッと花が開くように輝く。


「……すごい。口の中で優しく解けて、素材の香りが上品に広がっていきます。こんなに心に染みる味は初めてかもしれません」

「へえー、そんなにか。……どれ、俺にも一つ寄こせ」

「俺も……。あ、ああ、確かに。これは……うまい、な。……と思う」


 アルスに勧められ、ジグとガウルも恐る恐る口にする。

 ジグは意外そうに眉を上げ、ガウルは長年の傭兵生活で忘れかけていた甘い味に、少し耳を赤くして視線を逸らした。屈強な男がお菓子の感想を口にするのは、どうにも気恥ずかしいものらしい。


「本当に美味しかったです。ありがとうございました」


 アルスはエレノアへの土産用にと追加で包みを頼み、娘に眩いばかりの微笑みを向けると、仲間たちと共に店を後にした。


「……何だったのかしら、あの方たち」


 娘は、嵐が過ぎ去った後のような静寂の中で、しばらく呆然と扉を見つめていた。


「なんだぁ? お客さん来てたのか?」


 奥の厨房から、粉にまみれた父が顔を出す。


「そう! 常連さんじゃなくて、旅の人たち! すっごく美味しいって、笑ってくれたわ」


 娘は誇らしげに、そして少しはにかむように答えた。

 ただの旅人の気まぐれかもしれない。けれど、父の魂がこもった菓子は、確かに誰かの心を動かした。

 これからも、きっと――。

 娘は明るい予感を胸に、再び店番の椅子に腰を下ろした。

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