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Office love♡私、2人に守られすぎてます!  作者: 亜久美 圭


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相澤真吾の憂鬱。

 橘愛美たちばなまなみは頭から指先まで、とても可愛かった。

 たまに言う小さなワガママさえ、とても可愛く思えた。


 結婚前に何度か食べた手料理も、美味しかった。

 ——いや、正確には「美味しいと思っていた」。


 皆から羨ましがられる可愛い奥さんを手に入れて、

 順風満帆な結婚生活を送る。

 そうなるはずだった。


 それなのに。


 結婚してまだ二か月しか経っていないというのに、

 俺はもう、後悔し始めていた。


「あー……クソ」


 思わず、部屋を見渡して唸る。


 玄関には脱ぎ散らかされた靴。

 結婚前は、必ず二人分きちんと揃えられていたのに。


 ソファには脱いだままのスーツ。ハンガーに掛けられることもない。

 床には雑誌や服、小物が散乱し、ベランダには、いつ洗ったのか分からない洗濯物が干されたまま。


 テーブルもひどい。

 郵便物や雑誌が積み重なり、食事をするスペースすらほとんど残っていない。


 ——家がゴミ箱みたいだ。


 極めつけは、料理だった。


 結婚してから分かったことだが、

 愛美は、実は料理が苦手だった。


 付き合っていた頃、美味しいと思って食べていた料理は、

 デパ地下の惣菜や、Ober Eats。

 それを、うまく盛り付けていただけだったのだ。


 ある晩、晩酌中に

「何か簡単につまめるものある?」

 と聞いたとき、愛美は露骨に慌てた。


 そのとき、ようやく告白された。

 ——料理は苦手だと。


 衝撃だった。


 あれだけ美味しいと思っていた料理が、全部“出来合い”だったと知って言葉が出なかった。


 今になって思う。


 真琴は、俺の身体を本気で気遣ってくれていた。

 血圧が高めなことを気にして、塩分控えめ。

 疲れているときは、手作りの梅ジュースまで用意してくれた。


 それに比べて、愛美はどうだ。


 毎日定時で帰れるはずなのに、平日は何もしない。

 休みの日も、スマホや雑誌を眺めてダラダラ。


「この服かわいい!」

「このバッグ欲しい!」


 ……挙句、物をねだる。


 服もバッグも靴も、すでに十分すぎるほど持っているのに。

 入りきらない分が、部屋をさらに散らかしている。


 付き合っていた頃は、それでも良かった。

 上目遣いでおねだりされると、可愛くて全部買ってやった。


 でも、今は——。


「あっ、真吾さん帰ってきた!おかえり!」


 雑誌を広げたまま、愛美が笑顔を向ける。


「ねぇねぇ、ここ行きたいなぁ。ちょっと高いけど、雰囲気も良さそうだし……。今日はここでご飯しよう?」


 ——またか。


 思わず、舌打ちが漏れた。


 軽く一万円は超えそうな高級レストラン。

 何もしないくせにこの調子だ。


「……今日は疲れたから、また今度にしよう。給料日前だし、近所のファミレスでいい?」


 自分でも分かる。

 笑顔が引きつっている。


「えー!夜景が見えるところで、真吾さんとご飯食べたかったのにー!」


 頬を膨らませる愛美。


 ——勘弁してくれ。


 愛美の理想通りの結婚式を挙げて、こっちはもう金欠寸前だというのに。


「今度な。給料日になったら連れて行くから」


「ほんと?約束だよ?」


「ああ、約束」


 ……疲れた。


 真琴のご飯が食べたい。

 薄味だったけど、身体に染みるような美味しさだった。


 真琴は、無駄なものを欲しがらなかった。

 堅実で甘えることもほとんどなかった。


 だから最初は、愛美の可愛いワガママが新鮮で、魅力的に見えた。


 でも——。


 こんなはずじゃなかった。


 家は散らかり放題。

 料理もしない。

 金ばかりかかる。


 一緒にいて、まったく休まらない。


 真琴といた頃は、家も心も、もっと落ち着いていた。


 俺は……間違った選択をしたんだろうか。


 最近は、仕事にも影響が出ている。

 ミスが増え、契約も取れない。


 営業成績トップ。

 次期部長とまで言われていた、この俺が——。


 このままじゃマズい。


 ……何とかしないと。


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