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Office love♡私、2人に守られすぎてます!  作者: 亜久美 圭


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14/20

歪んだ執着。

「ところで、今さらだけど……なんでアイツと別れたんだ? なんで別のやつと結婚してんだ?」


 真吾(しんご)と、橘愛美(たちばなまなみ)のことだ。


 私と雅也は、大学時代に知り合った。

 価値観も似ていて、自然と一緒にいる時間が増えた。


 でも、私が真吾と付き合い始めてからは違った。

 生活の中心は真吾になり、雅也はきっと、私たちに遠慮して距離を取ったのだと思う。


 顔を合わせれば会話はする。

 けれど、以前のような関係ではなくなっていた。


「……薄々気づいてると思うけど。真吾が浮気したの」


「はぁぁ……」


 雅也が、深く大きなため息をついた。


「やっぱりな。別れてすぐ別の女と結婚したから、そうじゃないかと思ってた」


「目の前で見ちゃったの。浮気現場。それに……私よりその子の方が若くて可愛いって」


「はぁ!? バカかアイツ!!」


 声を荒げ、雅也が続ける。


「真琴がどれだけ尽くしてきたか知ってるだろ! あんな若いだけの女より、真琴のほうがいい女だろ!」


 いい女。


 その言葉に、胸が一瞬、きゅっと鳴った。


「あはは……ありがとう」


 私のために、本気で怒ってくれる。

 その優しさが、素直に嬉しかった。


「大学の頃、あれだけ真琴にくっついて、好きだ好きだ言ってたくせにな」


 思い出す。

 大学二年の冬。


 恋愛に興味のなかった私に、何度も告白してきた真吾。

 最後は、「ここまで想ってくれる人はいない」と思って、付き合うことを決めた。


 ――懐かしい。


「あの時はごめんね。私たちに遠慮してたんでしょ?」


「まぁな。アイツ、俺を見ると露骨にいい顔してなかったし」


「そうだったんだ……」


「最低だな。絶対、後悔するぞ」


「……それがね」


 最近の出来事をすべて話した。

 復縁を迫られたこと。

 毎日のように届くメールと着信。


 話を聞き終えた雅也は、勢いよくテーブルを叩いた。


 ――ガンッ。


 店内が一瞬、静まり返る。


「クソ……!」


 怒ってくれている。

 その姿を見て、私は逆に冷静になれた。


「雅也、落ち着いて。私は大丈夫だから」


「全然大丈夫じゃないだろ! いいか、絶対に無視しろ。関わるな」


「うん……ありがとう」


「今日は飲め。全部俺の奢りだ」


「ほんと? よし、今日は飲む!」


 自分のことのように怒ってくれる人がいる。

 それだけで、少し救われた気がした。


 気づけば、ビール、ハイボール……。

 かなりの量を飲んでいた。


 ――ふらふらする。




 会計を済ませ、店を出る。


 足元がおぼつかず、雅也に体を預ける形になった。


「ごめん……飲みすぎたかも」


「とりあえずタクシー呼ぶから。家まで送るよ」


 コクリと頷いた瞬間、足がもつれた。


「きゃっ」


 倒れそうになった私を、雅也が支える。


「大丈夫か?」


「……ありがとう」


「あまり無理するな。困ったら頼れ。俺はいつでも味方だから」


 その言葉が、胸に染みた。




 ――翌朝。


 頭が、痛い。


 飲みすぎた……。


「大丈夫ですか?」


 久遠郁人(くおんいくと)が、心配そうに声をかけてくる。


「うん……ちょっと二日酔い」


 差し出された水のペットボトルを受け取る。


「ありがとう」


 その間も、机の上のスマートフォンが何度も震える。


「ずっと鳴ってますけど……」


「あはは……気にしないで」


 見なくても分かる。

 真吾だ。


 ブロックすれば逆上されそうで、踏み切れずにいた。


「中村さん、イベントの発注書データ、見せてもらえますか?」


「はい」


 画面を覗き込み、久遠が先に気づいた。


「……この数字だけ、半角ですね。文字サイズも違う」


 やはり。


 他はすべて全角なのに、そこだけが不自然だ。


「間違いなく正しい数を入力しました。こんな初歩的なミスはしません」


 中村の声は震えていた。


 その通りだ。

 彼女がこんなミスをするはずがない。


 ――誰かが、あとから書き換えた。


 それも意図的に。


 業務妨害。

 明確な犯罪だ。


「……中村さん。誰かにパスワード、教えましたか?」


 沈黙。


 中村は俯き、しばらくして、かすれた声で答えた。


「橘……愛美さんに……」


 空気が、一気に凍りついた。



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