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Office love♡私、2人に守られすぎてます!  作者: 亜久美 圭


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12/20

成功の裏側で。

 十時。

 イベント開始の時刻と同時に、会場の扉が一斉に開かれた。


 来場者が流れ込むように入り、企画開発メンバーもそれぞれの持ち場へ散っていく。

 準備は万端だった。


 真琴と久遠は、来場者にノベルティを手渡す担当だ。

 つい今朝方までかかって、ようやくラッピングを終えた品。

 一人、また一人と手渡すたび、胸の奥がじんわりと温かくなる。


「ありがとうございます」

「このノベルティが楽しみで来たんです!」


 笑顔と感謝の言葉。

 諦めなくてよかった——心からそう思った。

 そして同時に、あらためて思う。

 これが実現できたのは、すべて彼のおかげだ。


 会場では、久遠に向けて相変わらず黄色い声が飛んでいた。


「きゃー!かっこいい!」

「芸能人じゃないの?!」


 女性だけでなく、男性までもが足を止めて彼を見る。

 まるでアイドルだ。


 当の本人は、いつもの王子様のような微笑みを浮かべ、落ち着いた様子で対応している。

 これだけ注目を浴びれば、仮面を被りたくなるのも無理はない。

 真琴は、少しだけ彼の気持ちが分かる気がした。


 ――そして。


 十八時。

 イベントは無事、終了した。


 最後まで来場者が途切れることなく、大盛況。

 お客様の表情を見れば、楽しんでもらえたことは一目で分かる。


「みんな、本当にありがとう!片付けが終わったら、打ち上げ行くよ!」


「よっしゃー!」

「あと少し、頑張りましょう!」


 成功の余韻に包まれ、会場には笑顔があふれていた。

 久遠も、いつもより柔らかな表情をしているように見えた。




 一方、その頃。


 橘愛美は、苛立ちを抑えきれずにいた。


 本来なら、耳に入ってくるはずだった。

 イベント失敗の噂が。

 神崎真琴が慌てふためき、評価を落とす話が。


 だが、どれだけ待っても聞こえてくるのは——

 イベントは大成功だったという情報だけ。


「……なんで?」


 思わず声が漏れる。

 ノベルティは足りなかったはずだ。

 自分が、確かに半分の数で発注したのだから。


 他の社員に聞いてみると、

「数も十分で、ほぼ全員に配れた」

「すごく喜ばれてたよ」


 と、あっさり言われた。


「どうして……」


 爪を噛み、愛美は顔を歪める。

 方法は分からない。

 だが一つだけ、はっきりしている。


 ——自分の思惑は、失敗した。


 神崎真琴を引きずり下ろしたかった。

 あの余裕の笑顔を、塗りつぶしたかった。


 昔から何をされた訳でもないが、気に入らなかった。

 仕事ができて、笑顔で、自然と人の中心にいる人。

 努力していないように見えるのに、すべてを手に入れている人。


 だから、許せなかった。


「橘さん、お疲れさま」


 すれ違った男性社員の声にも、笑顔を返す余裕はなかった。

 そのまま足早に、その場を離れる。





 翌朝。


「みんな、おはよう! 昨日はお疲れさま」


 真琴の明るい声に、

「おはようございます……」

 と、二日酔いの社員たちが力なく返す。


「飲みすぎよ、みんな」


 苦笑しながらも、楽しげな空気は残っていた。


「久遠くんは大丈夫?」

「はい、あのくらいなら平気です」


 あのくらい……。かなり呑んでいたはずだ。

 意外なほど酒に強い。

 人は見た目では分からないものだ、と真琴は思った。


 イベントは成功した。

 だが——一つだけ、引っかかることがあった。


 ノベルティの発注数が、なぜ半分になっていたのか。


「中村さん、体調悪いところごめんね。昨日のイベントの発注書のコピーを送ってもらえる?」


 しばらくして届いたファックス。

 真琴は、紙に目を落とした。


 ……違和感。


 数字の一部だけ、文字の大きさが微妙に違う。

 それに最終確認のときには、確かに倍の数が記載されていた。


「……書き直されてる?」


 背筋が、ひやりと冷えた。


 誰が。

 何のために。


 これは単なるミスではない。

 社内の誰かが、故意に操作した可能性がある。


 真琴は、静かに拳を握った。


 ——このままには、できない。


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