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Office love♡私、2人に守られすぎてます!  作者: 亜久美 圭


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10/20

橘愛美の企み。

 ――あぁ、もう!


 なんで神崎真琴の周りには、いつもいい男ばかり集まるのよ!


 会議室を半ば追い出されるように退出した橘愛美は、苛立ちを隠しきれずにいた。

 神崎真琴の周りには、人も運も、そして“いい男”も自然と集まる。


 新入社員のイケメンくんにも慕われているし、あの一条社長にまで特別扱いされて。

 ――一体、何なのよ。


 私のほうが若くて可愛いじゃない。

 なのに、なんであんなオバサンに……。


 考えれば考えるほど、胸の奥がムカムカと煮え立つ。


 仕事もできて、人当たりもよくて、皆から好かれて。

 特別な努力なんてしていないように見えるのに、欲しいものは全部神崎真琴が手に入れる。


 男性社員一番人気は、私のはずなのに。


 一条社長とは大学時代からの付き合いだと言っていたけれど、それにしても距離が近すぎる。

 もしあの頃、私がそばにいたら……一条社長だって、きっと私を選んでいたはずなのに。


 ――相澤真吾と結婚して、半年。


 正直に言えば、この結婚は失敗だった。


 顔も良く、人望もあって、将来有望だと聞いたから結婚したのに。

 まさか、あんなケチでつまらない男だなんて。


 せっかく神崎真琴から奪ったのに、完全なハズレじゃない。


 ……もう返してもいいかも。

 どうせ元々、あの女のものだったんだし。


 そのとき、ふと足が止まった。


 ――あ。


 いいこと、思いついちゃった。


 神崎真琴を蹴落として、私が幸せになる方法。


 さっきまで重かった足取りが、急に軽くなる。


「あれ?橘さん、何かいいことあったんですか?」


 すれ違った男性社員に声をかけられ、愛美はにっこり微笑んだ。


「うふふ、ちょっとね」


 男性社員は途端に頬を赤らめる。


 ほら。

 少し笑うだけで、みんなこうなんだから。


 あんなオバサンには、絶対に負けない。





 ――イベント前日・朝。


「うん、いい天気」


 今日はきっと、楽しい一日になる。

 橘愛美の足取りは、どこか弾んでいた。


 イベント会場では、各店舗が設営を始め、真琴たち運営側も朝から慌ただしく動いていた。


 その中を、血相を変えて走ってくる男がいる。

 企画メンバーの中村だった。


「そんなに慌てて、どうしたの?」


 真琴が声をかける。


「ノ、ノベルティなんですけど……数が足りません!」


 その表情が、事の深刻さを物語っていた。


「どういうこと?ちゃんと確認して発注したわよね?」

「はい!間違いなく……でも、届いた数が半分しかなくて……!」


「……半分?」


 真琴の顔色が変わる。


 来場者限定のノベルティは、今回の目玉のひとつだ。

 楽しみにしている人も多い。


「向こうには確認した?」

「しました。でも、発注数に間違いはないと言われて……」


 混乱しつつも、真琴は深く息を吸った。


 ――今は原因じゃない。対処を考えなければ。


「分かった。こっちは任せて。私は他を当たるわ」

「お願いします!」


 すぐに関連会社へ電話を入れる。

 在庫の有無、融通が利かないか、一件一件確認していく。


 だが返ってくる答えは同じだった。


 在庫なし。

 あっても、ごく僅か。


 時間だけが、無情に過ぎていく。


 ようやく四分の一ほど集められたが、まだ全然足りない。


 ――どうする……。


 そのとき、設営をしていた久遠が、真琴の異変に気づいた。


「大丈夫ですか?何かあったんですか?」

「ノベルティの数が足りなくて……今、他を探してるところ」


 真琴は、思わず頭を抱えた。


「少し、その商品を見せてもらえますか?」


 久遠は驚くほど落ち着いた声で言った。


「これなんだけど……」


 箱を開け、商品を手渡す。


 正直、もう打つ手はないと思っていた。

 それでも、動かずにはいられなかった。


「私はもう少し当たってみるから……久遠くんは、こっちの手伝いをお願いできる?」

「分かりました」


 そう言って久遠は背を向け、少し離れた場所でスマートフォンを取り出した。


 ……誰に電話しているんだろう。


 そう思いながらも、真琴は再び電話をかけ続けた。



 ⸻


 日が傾き始めた頃。


 一台のワゴン車が、会場に入ってきた。


「こちらです」


 久遠が手を上げる。


 運転席から降りてきた男が言った。


「ご依頼の品、用意しました」


 荷台が開く。

 そこには、積み上げられた大量のダンボール。


 ――まさか。


「神崎さん、確認お願いします」


 駆け寄った真琴が箱を開ける。


「……!」


 中に入っていたのは、明日配るはずのノベルティだった。


「久遠くん……これ、どうしたの?」


「知り合いに、この商品を扱っている人がいまして。お願いしました」


 にこりと微笑む久遠。


 限定品だから在庫もあってもそう多くはないはず。

 それをこれほどの数を、電話一本で――?


「……足りそうですか?」

「うん、十分すぎるくらい」


「よかった。じゃあ急ぎましょう。ラッピングが必要ですよね」

「う、うん……本当にありがとう」


 まだ終わりではない。

 今夜中に、すべて包まなければならない。


「手が空いてる人がいたら、手伝うよう伝えてもらえる?」

「はい」


 ――この人、何者なんだろう……。


 電話一本で、奇跡みたいなことをやってのけた。

 新人とは思えない。


「この件は、他の人には内緒でお願いします。色々聞かれると面倒なので」

「分かったわ」


 聞きたいことは山ほどある。

 でも、真琴はそれ以上踏み込まなかった。


 ――彼には、彼なりの事情がある。


 そう思ったからだ。




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