見学
魔の森での出来事から3ヶ月が経った。折れていた腕もすっかり完治して、今はきちんと稽古をつけてもらえてる。慌ただしい日々も過ぎ去って、日常が戻ってきたなと感じて正直ホッとしている。
ところで今日は、父からお前も後二年足らずで学院に入学するのだからと、見学にさそわれて行くことになっている。
ちなみに、この国では十二歳になると強制的に俺が住んでいるところでもある旧都にある学院に入学しなければならないらしい。強制で入学させられるということはおそらく学院での費用とかは全て国が負担しているのだろう。そうでなければ貧しい家庭とかは学院に通えてないからな。
遠出というものがせいぜい稽古を受けに師匠の家に行くくらいしかなかったので、これは嬉しい話だった。
本当は一人で行ったほうがいろんなところをまわれて沢山の情報を集められると思っていたんだが、父がリートにもこの話をしていたからファルも一緒についてくることになった。
あの魔の森の事件以来からだけど、ファルがより一層努力するようになってやばい。だから、ファルを置いて一人で学院に行けば何かもっと強くなれるヒントが手に入るんじゃないかと考えていたんだけどまぁ仕方がないか。
ちなみに、この前ファルから面と向かって魔法を創ったと言われた。幸い、元々あった魔法だったから完全な新魔法と言うわけではなかったけどやっぱりファルは異次元だ。俺が新しい魔法を創れているのはもちろん前世の記憶があるからだ。小説でいろんな技を魔法を見てきた。だからこそ、その経験が少なからず影響を及ぼしていることは確実だ。なのに、ファルはそんなこともなしに俺と同じようなことをやってのけたのだからすごい。
すごいと言うか、普通に俺が恥ずかしい。新魔法が創れたぜって密かに喜んでたのにまだファルと同じ土俵だったんだから。
もしかして、ファルって転生者だったりするのか?そうであったらまだ安心できるんだけどな〜。けどそう考えると、ファル側も相当な手練れってことになる。俺に違和感を抱かせないくらいの子供っぽさを醸し出しておるからな。
ま、そんなことは一旦置いといて、そろそろ時間なので学院に向かうか。今日は休日だから、そもそも学院が休みなので父たちと一緒に見学できるらしい。
母に「行ってきます!」と告げて、父と一緒に家を出て、しばらくすると以前の教会の時よりももっと高い塔が見えてきた。
さらに歩くと、学院の大まかな全体が目に入ってくる。
おそらく敷地全てを石レンガの立派な塀で囲っており、その中に建物がある。高くて塀から飛び出している部分しか見えないがそ)でも、かなり大きい建物であろうことは理解できる。
塀の前にはファルとリートがおり、こちらに気づくと手を振ってくる。こちらも手を振り返すと、ファルは花のような笑顔を咲かせた。互いに「おはよう」などと挨拶を交わしながらも、大きな門から学院を囲う塀の中に入っていく。
塀の中に入ってまず目に入ったのはその荘厳な建物。俺は実物の西洋風の城を観たことがないからなんとも言い難いが、城と言われれば納得してしまいそうなくらいに立派だ。
その本棟とでも呼びそうな建物の周りにはいくつかの本棟と比べれば小さいがそれでも大きな建物がある。こちらは寮か何かの別棟かな?そんなことを思っていると、父が俺とファルに向かって喋りだす。
「いいかい、フリーク、ファルちゃん。今目の前にあるのが主に授業とかをする本棟だよ。そして、その周りにあるのが部活動や寮として使われている別棟だよ」
「へぇ〜。じゃあ、ここに入ったらあの建物に住むってこと?」
俺は別棟を指差しながら父に問う。
「うん、そうだよ。ここの生徒は貴族、平民関係なく寮で生活しなければならないから、同い年の子はみんな寮で生活することになるよ」
今の言い方だと貴族と平民とで寮が分かれてないのか?それだと結構問題が起きそうな気がするけど。
「あぁ、もちろん貴族と平民とで寮の場所は別だけどね」
父が言い忘れたという感じで言い足す。
まぁ、さすがにそうだよな。この世界の貴族がどんな正確かは知らないが、貴族が平民と一緒なのが良くても平民側が嫌がるだろう。平民からしてみれば貴族って上司みたいなものだから、貴族と一緒の場所で暮らせば一々そいつらの顔色をうかがわなければならないからな。
そんな感じで色々と父とリートの説明を歩きながら聞いていると、やがて本棟の前に着いた。
そして、父とリートにしたがって中に入る。建物の中は年季が入っているとは思えないほど綺麗だった。
床は精密な模様が描かれている大理石が一面に広がっており、壁や柱にも同じような美しい模様が彫られている。天井には光源として八面体の青いガラスか何かがぶら下がっている。
外装にも圧倒されてたのにそれを上回る内装の美しさに思わず足が止まる。
すると、リートが「どうだ?坊主すげぇだろ?」と言ってくる。俺はそれに頷き、まだ歩いている父についていく。
ちなみに、ファルはあまり建物に興味がないのかふーん、すごいじゃんとしか思ってなさそうな感じがする。
学院の見学といっても今は生徒が授業を受けているわけでもないので、いろんな教室を周ってここは何々をするところだよと紹介されるくらいしかやることがない。なので、思ったよりも早く終わってしまったので、俺の要望で図書室に行くことになった。図書室に行けばいろんな情報を手に入れられるだろうからな。
図書室もまた圧倒的だった。あたり一面本だらけで、壁に大量に本棚が並んでいる、物理的に本に囲まれている部屋だった。
時間はまだたっぷりあるので、ここから出なければ自由にしてていいと言われたので早速面白そうな本を探しに行く。今欲しい情報は歴史と魔物だな。
しばらく探していると、『世界史』というそのままの題名の本があった。かなり分厚く重かったので身体強化魔法を使って近くの机まで運ぶ。
ざっと目を通して必要そうなものをじっくり読むか。
本が大体読み終わったのでまずは情報を整理する。
今現在、大国として存在しているのは三つの国。俺が住んでいるヴァルディア王国と、宗教国家のフォスティア皇国、実力主義のクラトマキア帝国だ。
歴史的に見ると、皇国が最も長い歴史を誇っており、次いで王国、帝国といった感じだ。
皇国は教皇を国家元首に置いており、神キリアスを崇める完全な宗教国家だ。
王国は建国の際に、皇国による援助を受けたので昔からキリアス教の信徒が多いのだとか。この世界はキリアス教以外に力を持った宗教がないらしいので、おそらく母が崇めているのもこの神キリアスなのだろう。
帝国は他の大国の援助をなしに自力で建国したらしく、あまりキリアス教は広まっていない。帝国は実力主義を謳っており、力があれば身分関係なしにいい職に就ける。
そして、帝国の魔法使いの特徴として、日本語でいうカタカナを使いたがるのだとか。ということはリートは帝国の出身なんだろう。魔物のことをモンスターと呼んだり、炎魔法を使うときにファイヤと言っていたりしていたかな。
その他にも勇者と聖女に関する話があった。結論から言えば、勇者と聖女は異世界人で、250年に一度皇国で召喚されるらしい。
そして、これはなんともありきたりな話だが勇者と聖女が召喚されるのは魔王を倒すためだ。
それにしても、勇者はともかく聖女まで召喚されるのか……。大体こういうときは勇者だけ召喚されて、聖女は皇国の選ばれた聖職者がなるみたいなのがテンプレな気がするけど。
まぁ、いいや。次は魔物についての本を探すか。
しばらくして、『魔物図鑑』という本を見つけたので、これも見てみる。見ている途中で本を読むのに飽きたのか、ファルがこっちに来たので一緒にこの本を読むことにした。
「へぇ〜、ウォーグか」
俺は狼の魔物版みたいなやつを見ながら言う。
「なんか、怖そうだね」
「まぁ、魔物だからな」
「今の私たちで倒せると思う?」
「できんじゃね?ていうか、ファルは魔の森の中で戦わなかったのか?」
「うーん、あんまりあの時のこと覚えてないんだよね。フリークを探すことで精一杯だったから」
「そうか。そりゃなんというか……悪かったな」
「いいよ別に。もう過ぎたことだよ」
「それもそうだな」
ペラペラとページをめくっていると、オークという言葉が目についた。
その説明をよく見てみると、意外なことに気づく。勇者だとか、魔物だとか、テンプレ的な展開しかないのに、オークが女性を襲うという記述はない。いくら学院にある本とはいえ、そういう記述を消すことはないだろう。正しい情報を伝えないのは逆に悪影響を及ぼす危険性があるからな。
ということは、そういう習性はオークにはないということなんだろう。なんというか、中途半端のテンプレ異世界だな。
他にも何か面白そうなのがないかな〜と見ていると、竜という言葉が目に入る。ここはちゃんと異世界らしいなと思いつつ、そのページを読み込む。
うーん、なんか説明するまでもなくテンプレ通りの竜だ。巨大なトカゲのような体に大きな翼、四本の足。どれをとっても普通の竜。あ、肉は美味いのかな?大体の異世界モノでは竜の肉は美味いとされているからな。丁度良くリートが近くにいたので聞いてみるか。
「ねぇねぇ、リート」
「お?どうした坊主」
「この竜の肉ってさ、美味い?」
「竜の肉か?俺は美味いと思うんだけどな。あんまし人気はねぇなぁ」
「どういうこと?」
「なんていうんだ?こう……なんか、筋肉質で変な味がすんだよ」
「マズイの?」
「いや〜、マズくはねぇよ。ただ、好き嫌いが分かれる味ではあるな」
「ふ〜ん」
なるほど、多分ジビエ的な味なんだろう。じゃあ、万人に対して美味いってわけではないんだな。まぁ、適切に処理すれば美味いものにはなるのかもしれないがな。
俺が色々とリートに聞いているとファルが興味を持ったのか俺に聞いてくる。
「フリークは竜食べてみたいの?」
「食べてみたいっていうか、ただ竜が気になるだけだな」
「どうして?」
「なんか強そうだからだな。いつか戦って食ってみたいと思ったんだよ」
「へぇ〜、面白そうだね」
「だろ?」
「いいな、坊主。夢がデカくてなんぼだからな」
そんな感じでいろんな魔物の話を聞いていると、いい時間になったからか父が帰るかと言ってきたのでみんなそれに同意して、家に帰ることにした。
学院のことはあんまりわからなかったが、色々と情報が得られて有意義な時間だったな。
かなり投稿が遅れてしまいました。申し訳ないです。




