表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/20

稽古とお使い

リハビリを始めて一週間が経った。鈍っていた感覚は取り戻してきたが、三日寝込んだことで失った筋肉はまだ取り戻せていない。相変わらず左手は折れてるので片手でしか運動できないんだけどな。


 今日は休日なので、久しぶりに午後から師匠に稽古をつけて貰うことになっている。まぁ、まともに戦闘はできないから、軽い模擬戦くらいしかできないだろうけどな。


 いつも稽古は街から少し離れたところの平原で行う。近くに師匠の家があるからだな。師匠は学院の先生なので、平日は学院近くの借家で生活してるんだけど、元々人混みがあんま好きじゃないらしくて休日は街郊外の持ち家にいると聞いた。俺も住んでるこの街は昔の王都でいわゆる旧都と呼ばれている街だからこの王国では一番栄えているらしい。だから、休日となれば余計に人が多い。

 うちも人通りが多めの場所に家があるから、ひどい時には人混みをかき分けながら進むしかないときもある。

 今日は特段そういったことはなかったが、やっぱり人は多いなとは思う。


 しばらく歩いていると師匠の家が見えてくる。特色もなく普通の中世の一軒家って感じの家だ。

 ドアをノックして「ごめんくださーい」と言うと、「はーい」と言う声とともにすぐにドアが開く。


 夜を閉じ込めたように美しい漆黒の髪は綺麗に束ねられており、着ている服は運動をするための簡素なものでありながらも彼女が着ればたちまち輝いて見える。何度見ても見惚れてしまうような師匠がそこにはいた。


「久しぶり、フリークくん」


 彼女は笑顔で俺を出迎えてくれる。


「おひさです」


 彼女は俺の布でぐるぐる巻きにされている手を見て「あちゃー」と言葉を零す。


「こりゃ、ひどくやられたね」


「そうっすね。相手がかなり強くて」


「アレックから少しだけ聞いてるけど、一応君からも聞いときたいから中で話を聞かせてくれる?」


 俺はその言葉に頷き彼女の家に入る。何度か家の中に入れてもらったことはあるが、あまり生活感のない家だとは思う。まぁ、休日くらいしかここにいないから必然とそうなっているのかもしれないけどな。


 リビングで椅子に座ると、俺は事の経緯と内容を母に話したのと同じ感じで少し誤魔化しながら話した。師匠はその話を多少驚きながらも終始冷静に聞いていた。

 話を聞き終わると少し師匠は考えてから話しかけてくる。


「話は大体わかったけど……なんとも不思議な話だね」


「そうなんすよ。あいつが何者だったのか見当もつきません。技能か魔法のどっちかではあるんだろうけど……」


「そうだね、私もその意見には賛成かな。魔物がそこまで人間を模倣することなんて聞いたことないから」


 そこで会話は途切れ互いに少し悩んでいると、師匠は手をパンッと叩き俺は彼女のほうに顔を向ける。


「いくら考えても埒が明かなそうだし、外出ようか」


「そうしますか」


「どう?どのくらい動けそう?」


「軽い模擬戦くらいなら」


「了解。じゃあ、軽くやろっか!」


 絶対軽くで終わらないだろうな……と思ったがそれは言葉にはせずに師匠について俺も外に出る。街中で木剣を持って出歩くのはなんか恥ずかしいので、師匠の家にも一本置かせてもらっていて、それもついでに引きずって外に出た。

 外は街の郊外ということもあってポツンポツンと家があるくらいなので思いっきり戦える。


 互いにある程度距離を取って、剣を構える。もちろん俺は身体強化を使っている。


 大きく息を吸い込み、足を踏み込み、師匠に向かって駆けていく。



 ところで、突然の自語りだけど、剣を習い始めてやっぱり一番思うのは剣を正確に扱うことが結構ムズいってことだな。いろんな小説でも読んだことがある言葉だか、剣をただぶつけるように振るだけではダメで、剣を斬るために刃を滑らせる必要がある。そして、これが存外難しい。

 特に難しい点が三つある。刃の向きと移動方向が一致してないといけないということ。剣で斬る時の押し引きのタイミングを見極めること。剣を持つ腕を脱力しながらもブレないように固定すること。

 これがなってないと剣をただ相手に叩きつけることになってしまう。

 で、俺は何度も練習してやっとのことで少しは身についたんだが……まぁ、いつも両手でやっていたのに、それが片手でできるはずもなく、今は何もできずに一方的に師匠に痛めつけられているという悲惨な事態に陥っている。

 身体は既にボロボロで、軽めと言っていた師匠は俺のあまりの弱さが許せなくなったのかいまだに攻撃を続けてくる。【思考加速】も【並列思考】も使っているけど正直焼け石に水だ。剣がまともに扱えないんだからそれも当たり前なんだけどな。


 この人には人に教えているという自覚があるのだろうか。俺が教えを請うている側だから文句を言う資格はないんだけど、それでも別にここまでしなくてもとは思う。それとも、このくらいするのが普通だったりするのか……?


 考えても仕方のないことだから、もう一本腕がいかれるなんてことにならないよう今は防御に徹するか……。



 かれこれ十五分くらい経ってようやく軽いはずだった模擬戦が終了した。そして、俺はすぐに地面にへたり込んだ。もうマジでムリ……。十五分って模擬戦の一戦の時間としてはあり得ないほど長い。体力的な問題でせいぜいが五分が限度なのに……。

 で、その諸悪の根源である(原因は俺だけど)師匠はやっぱり汗一つかかずに涼しい顔をしている。俺を散々痛めつけて怒りは収まったように見える。


 その後、師匠から散々ダメだしをされたけどなんとか無事(?)に稽古は終わりを迎えた。

 今すぐにでも帰ってベッドに飛び込みたい気分だけど、今日は母から買い物を頼まれているから帰るついでに寄っていかなければならない。母さんは怒ると怖いし、ちゃんと買って帰らなきゃどんな目に遭うかわかったもんじゃない。稽古でもひどい目に遭って、家でも同じ目に遭うなんてごめんだからな。


 寄るべき所はお店というよりも露店の並んでいる市場で今は夕方だから結構人がいると思う。人の波に飲まれないようにしないといけないな。

 母から買うように頼まれた食材はカブやキャベツ、玉ねぎなどのポタージュとかに使う野菜類だ。

 買うようにきちんと小遣いも十分に渡されてる。この世界のお金の単位って少し独特で小さい順にリン、セリル、アルデアとなっていて、100リンで1セリル、1万セリルで1アルデアとなっている。カブ一個が8リンくらいで、昔のカブの価格は知らないけど確か現代だと一個100円くらいだったっけ?そう考えると、ざっくり1リンで10円だな。

 結構独特な単位だけど、わかりやすくはある。リンはいろんな金属が混ざっている合金貨で、セリルは銅貨、セリルとアルデアで数が離れすぎているからか、100セリルは銀貨で、アルデアは金貨になっている。

 これは結構わかりやすくて助かると個人的には思う。円で慣れ親しんできた身としてはきちんと素材で分けられている方が覚えやすいからな。


 そして、俺は人混みに揉まれながらもきちんと言われた通りに食材を買って、無事に帰宅することができた。ちなみに、母さんはきちんと買ってきたことを褒めてくれた。

 今日は大したイベントがなかったはずなのに色々と疲れた一日だったな。一刻も早く腕を治さないと……。


 あけましておめでとうございます!今年もよろしくお願いします!

 新年ということで、一話更新しました。

 次回は予定通り土曜日に投稿する予定ですが、もし遅れてしまったらすみません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ