異世界転生
俺の名前は織田久遠、ただの高校生だ。
そんな俺には読書という趣味がある。読書といっても評論文やエッセイとかを読むのではなく、俺がよく好んで読むのは異世界ファンタジー系の小説だ。
この単語はおそらく俺の造語だが、俺は自称「異世界オタク」だ。
「異世界オタクって何?」って思っただろう。
では、説明しよう!俺の定義では、文字通り「異世界のオタク」だ。異世界に住んでるわけじゃなくて、異世界が大好きな人のこと。
さらに、ただ異世界モノの小説を読むだけじゃ足りない。毎日「もし俺が異世界に行ったら…」と妄想しているやつのことを、俺はこう呼ぶんだ。
多分これを聞いて、毎日異世界のことを妄想してるなんて、お前の頭はイカれてるんじゃないかと思う人がいるだろう。
でも、別に妄想してもいいじゃないか!大体、異世界がないという証拠はないし、あるという証拠もないので、異世界はシュレディンガーの猫のような状態なのだから。
そんな俺が異世界オタクになったきっかけは、中学生の頃まで遡る。当時の俺は読書がかなり好きだったのだが、まだ異世界系の小説は読んだことがなかった。いや、厳密にいうと、転生や転移モノのテンプレ異世界は見たことがなかったんだ。そんなものがあるなんてことも知らなかったし。そんな俺は、ついに初めて異世界モノの小説を読んだ。
そして、すぐに夢中になった。興奮した。痺れた。憧れた。こんな物語がこの世にあったのかと心が震えた。
それから、今日に至るまでちょっとでも時間があれば、いつも小説を読んでいた。別にうちはさほど裕福というわけでもなかったので、俺は基本的に、Web上でたくさんの小説が投稿されているサイトで小説を読んでいた。Webのやつは無料で読めるからな。
そして、読めば読むほど俺は異世界に強い憧れを持つようになっていった。
そんな異世界に魅入られた俺だが、高校生である以上、今日も学校に行かなければならない。だが、その道すがらには、いつも欠かさない習慣があった。うちの近くには何を祀っているのかもわからない小さい神社があるのだが、俺は毎日そこにお参りして、こうお願いしている。「どうか異世界に連れていってください」と。
もちろん、お賽銭も五円だけいつも入れてる。少ないって?別にいいじゃん毎日入れてんだし。
そして、ようやく学校に向かうことになる。
俺はこんな生活をかれこれ3年くらいしていると思う。正確に数えてはいないが、そのくらいだろう。
いつも通り、「異世界に行ったらな〜」と妄想しながら横断歩道を渡る。「よくある異世界モノだったら、ここで横からトラックが爆速で来るんだよな!」と浅いことを考えつつ横を見ると……なんとトラックがすごいスピードでこっちに向かってきているではないか‼︎驚きすぎて体が硬直する。だが、トラックはそんなことお構いなしに迫ってくる。
そして、とうとう俺はトラックと衝突し、痛いと思う暇もなく意識を手放した。
誰かの声が耳に届き、意識が覚醒する。まずは無事を確かめようと、体に手を伸ばした。
しかし、俺は強烈な違和感を覚えた。体の勝手がいつもと違う気がするのだ。さらに、不思議なことにまるで視力を失ったかのように視界がはっきりとしない。
俺は自分に何が起きたのかを今一度思い返す。確か、神社にお参りしてそのあと学校に向かって……そうだ、思い出した!俺はトラックに跳ねられたのだ!ということは、ここは死後の世界なのか?それにしては何も見えないんだが。普通、テンプレだとここで神様が出てくるはずなんだけど。やっぱり、現実だとそんなことはないのかな?
それにしても、この不思議な感覚はなんだ?まるで誰かに抱っこされているような感覚なのだが。何もかも謎すぎて状況がイマイチわからないが、とりあえず助けを呼んでみるか。誰かいるかもしれないし。
「あう〜〜〜」(誰かいませんか〜?)
⁉︎ まさか、まさか本当に?
俺は、自分の身に何が起こったのかについての一つの推測を立てた。
もしかしたら違うかもしれないが、俺はおそらく異世界転生したのだ‼︎
さて、俺は異世界転生をしたかもと思い、とてつもない興奮を覚えたのだが、俺は周囲の音を聞いて、すぐに異世界小説あるあるのご都合主義が働いてないことに気づいた。
なんと言語がわからないのだ。俺が本当に赤ちゃんに転生していたら、聴力が弱いからきちんと聞こえてないという可能性はあるが、赤ちゃんでもある程度は聞けたはずなので、おそらく言語がわからないのだろう。
まあ俺は異世界オタクで、日々異世界について妄想していたのでもちろんこういう時の対策も考えていた。
知らない言語を知るには、まず自分の使う言語でのあるものの言葉と、知らない言語での同じものの言葉とを照らし合わせて単語を知ることから始めるのだ。
例を出すと、車のおもちゃを持ちながら、単語っぽいものを連呼していれば、その言葉が「車」だと推測できる、みたいな感じだ。
この勉強法を試すにしてみても、まだ視界がはっきりとしないので、視界がはっきりするまではひとまず周りの状況確認に努めるか。




