ep.56 覗き疑惑
(どうしてこうなってしまったのか⋯)
オクスは現在正座をさせられている。
「で、です。おにいさまどうして寒い時期におにいさまはかえってこなかったのですか?」
寒い時期。おそらく冬の休暇中のことだろう。ミレイが頬を膨らませていることからわかる通り僕が帰ってこなかったことに対して拗ねているらしい。
「ミレイごめんね。去年は忙しくて⋯」
忙しかったのは本当だ。冬は氷に関する精霊達が活性化する影響で豪雪地域が発生することがあるらしい。
それが去年の冬は謙虚に現れたのだ。
それはある日念話で届いた報告だった。
(オクス様。私です。フレアです!)
(そんなに慌ててどうしたの?)
(それがですね⋯冬精霊達が今年は活性化しすぎてしまって)
(しまって?)
(ハッキリ言ってしまうとこのままでは一帯が永久凍土とかします⋯)
フレアからこの報告を聞きたときはあまりの驚きに咳き込んでしまったぐらいだった。
原因の中心と思われるスノウリアと名付けた氷の中位(?)精霊曰く『湖を凍らせていて何か物足りないと思って雪精さんたちに雪を降らせてほしいってお願いしたらこんなことに⋯』
この後自分の命で償うしかと言い出したスノウリアを止めたり、オクスを含む全員で雪とかし(雪かき)地獄が始まったりで、気がつけば冬季休暇が終わっていたのだ。
「なるほど、おにいさまはしごとでいそがしかった」
「そうなんだ。ミレイならわかってくれるよな?」
「つまりおにいさまは『しごととかぞくどっちがだいじなの?』ということですね」
なんか急に火曜サスペンスに出てきそうなセリフが出てきたことが気になっていた。
「なあミレイその言葉どこで覚えたの?」
「そ、それは『きぎょうひみつ』です!」
明らかにこの世界では存在しないはずの言葉が混じりだしたことでオクスは勘づいたが一度黙って置くことにした。そして、焦ったのかミレイは
「おにいさま、『おぼえてろー』です!」
と捨て台詞を吐いて部屋から飛び出していった。
僕は、その晩罠を張ることにして。
さり気なく手に入れていた空間魔法強いて言うなら収納魔法で生み出した空間の中からとある実験で生み出した品々が雪崩のように飛び出してきた。その中の一つはまさにテレビであった。
前世でのささやかな趣味は死んだ父が残したDVDを見漁ることだった。父は元から収集癖だったのでジャンルは多彩。流石に電波を繋ぐことなどできるはずもなく、あくまで描写用としか使えないが、記憶にある番組を再現してみたことがあった。
そして、ミレイが口に出したセリフはどれも俺が印象に残っている定番のセリフたちであった。
(ということは多分どこかから⋯)
感覚を研ぎ澄ませていると天井からガサっと物音が聞こえた。天井を見上げれば天井の一部がずらされている。僕はそこに石弾を一つ。
すると上から『いたっ』という声が聞こえてきた。
そんな声の主を回収すべく天井を押し上げ人一人分のスペースを確保すると魔法で覗き犯を回収すると風魔法で包みながらゆっくりと地面に座らせた。
「それでミレイこれはどういうことか聞いてもいい?」
オクスは犯人⋯ミレイを問い詰めることにした。




