ep.54 帰省
最近書いてなくてごめんなさい⋯
「前の夏季休暇ぶりに帰ってきたな」
僕は、スイとレイを引き連れ転移で屋敷の裏の森へと帰ってきていた。
え?エーシャはどこに行ったかって?
それは⋯
遡ること三年前、専属同士の仁義なき戦いがあったらしく、そこで敗北したエーシャは『オクス様に相応しいメイドになってみせます〜!』とオクスに宣言して本家の方へと戻ってしまった。
あんまりそういうのを気にするタイプではないと思っていたのだが、メイドらしいことがあまりできないことを当の本人も気にしていたらしい。
今も屋敷で修行に勤しんでいることであろう。
「帰ってきたはいいんけど屋敷には戻りたくないなぁ⋯」
顔を見せに来たというのになぜオクスが頭を悩ませているのか。それには、れっきとした理由があった。
そんな主人の苦労を見かねてかレイは無言で肩に手を置いた。
「レイ〜」
「気持ちはわかるぜ。俺もスイに振り回されているからな⋯」
確かにレイがスイにあれして、これしてと指示を受けているのは知っているが振り回されるの方面が違う気がする。
「同情してくれるならどうにかしてほしいものだけどね⋯」
「できるんだったら助けてるぜ⋯」
こればかりはどうしようもないので涙目で我慢するしかないので帰省する回数を減らしていたんだ⋯
「嫌だからと言って森に飛んでは行けませんよオクス様。私達が先に行ってどうにかしておきますからちゃんとあとから来てくださいね」
スイの意見はごもっともである。というかもうスイのお母さん属性がすごい。背中から強者感があふれ出てやがるぜ。
しばらくして二人が先に行ったあとオクスは少し森を奥に進み、少し思い出にでも浸ろうと思った。
オクスは手をポケットにいれ、握られた懐中時計を見つめた。すると懐中時計は光を放ち光からエルが出てきた。
「オクスさんどうかしましたか?わざわざ呼ぶなんて珍しいですね」
「しばらくそっちにいけないかもしれないからね⋯」
エルは今、暇を持て余しているらしく何か手伝えることはないかということで精霊たちの指揮に勤しんでいる。そんな頼れる天使は物わかりもいいようで
「あぁ、なるほど」
状況を察してくれた。
「そういえば、シルフィアが少し気になることを言っていましたよ。『結構前から気がついていたんだけど何か端っこの方にいる』とのことです」
「『何か』か危ないものじゃないといいけど⋯」
「今度私も見に行っておきましょうか?」
少し不安そうなオクスの顔を見てかエルは自分が行くことを提案をした。
「いいかな。でも少し別のことを頼みたいからしばらく一緒にいてほしくて」
今この街で不穏な影がうごめいている。どうしても一人では警戒しきれないだろう。こういう時にちゃんと頼れるひとがいるのはいいことにだと思う。
「もちろんいいですよ。なんて言ったって私はあなたのお助け役ですからね!」
久しぶりに頼られて嬉しかったのか鼻歌を歌いながら僕の横へと飛んできた。
「ありがとう。あとエルって確か人型になれたよね?」
「なれますね。でも少し魔力効率が落ちますし、誰からも見えるようになりますね」
デメリットもあるようだがメリットも十分に大きい。
「魔力の方は僕が渡せばどうにかなりそう?」
「それなら問題ないですね」
オクスは精霊たちを呼んだことであることができるようになった。それは、他の人と魔力のパスがつなげるようになったことだ。今はそれで精霊たちに魔力を分け与えている。
「じゃあ、魔力のパスは繋げておいたから」
「それじゃあ少し離れていてもらっていいですか?」
言われた通り離れるとエルはみるみるうちに十八歳ぐらいの女の子の姿へと変化した。
「この姿をするのは久しぶりです。でもどうして急に?」
今までそのようなことを言ったことがなかったのでエルは不思議そうにしていた。
「今までなら気にしなくてもよかったんだけど、ここ数年で真理教とか言うところが精霊術師は異端だって言い出しちゃって」
確かに、種族同士の仲が悪いこの世界にとって精霊術師は異端なのだろう。獣人と仲良くできているのは、あの国が強さ絶対主義だからである。
世界情勢は非常に不安定なのだ。
(本当はそんなことしている場合じゃないのに)
神様が言っていた『世界の危機』というのが何かはわからないが、確実に近づいてきてはいる。そんな気がするのだ。
そんな僕にエルは笑顔で一言。
「オクスさん一人で抱え込まないでくださいね?私は貴方の事情を知る唯一の者なのですから」
その時の彼女の笑顔を何より輝いて見えた。
ツクモはお留守番中です。




