ep.52 報告
「いや、よかったよかった」
込み入る話もあるだろうと思い、オクスはスイを連れ部屋を出た。
「オクス様が、わざわざこのようなことをなさるのは珍しいですね」
スイは少し不思議そうに僕の顔を覗き込んできた。
オクスは、できるだけ何事にも関与せずできるだけ目立たたないようにしていたので不思議だったのだろう。
「確かに、珍しく学園で人助けじみたことをしたかもだけどちゃんと理由はあるよ」
そう、最果ての地を浄化を初めて三年、三年が経ったのだ。
時々、精霊達に顔を見せながら現地確認を行い、前回で既に問題ないほどに土地が回復していることを確認した。
それで今日は元々国王にこのことを報告しに行くつもりだったのだ。
「前々から話していた浄化の件ですね」
「うん。それでしばらく戻ってこれなくなるかもだし、やり残しはないようにしないと」
せっかく実技の授業を受けられるのに出席できる日数が少なくなるのは致し方ない。
「そうですね。そういえば旦那様から言伝を頼まれていました。『オクスが休み期間の間帰ってこなかったから、ミレイが会いたがっているから一度帰ってきてもらえるか?私では、手に負えなくてな⋯』とのことです」
今年の冬休みは帰えれてなかったんだっけ⋯
いつでも帰れるからと帰省を疎かにしていたことを改めて感じて少し後悔の念にかられた。
「じゃあ、報告した後に久しぶりに帰省してみようかな?せっかくだし、スイもレイも一緒にどう?」
「それは名案ですね!それでは、馬車を手配しておきましょうか?」
「いいかな。直接転移していくよ。報告が終わったら屋敷に戻るから準備しておいてくれる?」
「わかりました。二人して楽しみにしておきます」
───────
「よっと。王城は久しぶりだな」
転移で王城の敷地内に飛んだ僕は、国王のいる応接室へと向かった。
本当はリスクを回避するために直接部屋に飛びたかったのだが、それではそれでは近衛騎士団の尊厳に関わるとかで控えて欲しいと言われた。
そういった経緯で廊下を進んでいるわけで、何とか執務室には到着することができた。
扉の前に立ちノックをしようとした瞬間ちょうど扉が開き、鈍い音を立てながらオクスの顔に直撃した。
「ん?あぁ、済まないオクスくん⋯まさかいるとは思っていなくて」
「特にお気になさらず。アレシウス様、お久しぶりです」
この人は、アレシウス・フォン・ミュラー。ルーナの父にしてこの国の宰相だ。こうして会うのは、久しぶりである。
「お取り込み中でしたか?浄化の件でご報告に来たのですが」
どうも様子を見る限り事は深刻そうである。
「話してもいいものか⋯とにかく一度中に入ってくれ。話を聞かれるのはマズイ」
そうアレシウスに急かされるままオクスは部屋に入っていった。




