ep.51 旧友
僕はその日の放課後、セイル先生に後で話がしたいから教員室に来るようにと呼び出しを受けた。
僕はノックした後、部屋に入りセイル先生と目が合った。
「来てくれたか」
「話とは何でしょうか?」
僕は単刀直入に本題へと入った。
「君のお父上についてだ。もしや、君のお父上はレインと言う名ではないか?」
「はい、そうです!どうしてそれを?」
わざと家名を名乗らなかったのに、何故か急に父の名前が出てきたことに驚きが隠せないが彼は様子見をしながら話を続けた。
「君の剣が彼に酷似しすぎていた。もしかしたらと思ってな」
と昔を懐かしむように理由を語った。
「先生は父上とどのようなご関係で?」
「私と彼、君の父とは親友であり、ライバルであり、互いに剣術を極める仲間として騎士団で共に奮起していた」
父上にそんな人物がいたとは初耳だったので思い出話に僕は聞き入っていた。
「切磋琢磨しているうちに、私は副騎士団長に、彼は、騎士団長へとなっていた。その頃は、天才だとか百年に一度の剣聖だとか持て囃されていたものだよ」
さらに深う思い出すためにセイルは一息置いた後深呼吸をし、過去へとページをめくり始めた。
「だけど、レインは私より遥か高みにいた。彼は千年に一度の天才だった。そうして、肩を並べていたはずが気がつけば背中すら見えなくなって劣等感を感じ始めたんだ。だけど、レインはみるみる功績を挙げ、辺境伯になってからは会うこと自体なくなっていた」
レインは、辺境伯になった時に騎士団を抜けている。
つまり、繰り上がり的に騎士団長へとなってしまったのだ。
「こんな風に昔に向き合うことになるとは⋯でも、きっと私は嫉妬していたんだ。でも、圧倒的にレインは凄かった。私なんかと比べれないくらいにね」
「それは違うと思いますよ。我が父、レインは時々頼れる奴がいて、そいつはすごくすごいのだと自慢気に語っていました。あいつには、自分より指揮官に向いているって、だから騎士団は安心だって」
「ありがたい言葉だ⋯でも、私には彼に合わせる顔がない」
と怪我で動きづらくなった左足を眺めた。
「なら、実際に話してみてはいかがですか?」
するとドアがノックされた。
「どうぞ。おや、君は?」
「私は、オクス様の専属メイドのスイといいます。主人からのお願いを聞き、ある方を連れてきました」
そう言って、スイが下がると代わりに部屋に入ってきたのはレインだった。
実は、オクスは魔法を使ってスイに念話であることをお願いした。
(スイ?今ちょっといい?)
(どこからかオクス様の声が聞こえてきました。どういうことでしょうか?)
いきなりだったからスイの混乱した声が聞こえてきた。
(念話って魔法。スイに少しお願いがあって。今ちょうど王都にいる父上を呼んできてほしいんだ)
僕はスイに事情を話し、仕事のためにちょうど王都にいるはずのレインを連れてくることを頼んでいたのだ。
「おー!セイルじゃないか。何十年ぶりだ?ん?おーい、どうして黙ってるんだ?」
「私は、君に合わせる顔がない⋯親友から託された騎士団は怪我で早期に引退してしまった。それに私は君の才能に嫉妬してしていたんだ⋯」
苦しそうな顔を何とかこらえながらセイルは自分の後悔を、懺悔を抱え、下を俯いた。
「そんなことを気にする必要はなかったのに。セイルは必死にやってくれたんだろう?それに私達は親友じゃないか」
レインはセイルの肩を掴み、続けた。
「それに誰もお前のことを責めなかっただろう?お前の話はダイアス領にまで届いてた。だから誇れ!」
と笑顔を浮かべた。
「私は、誇っていいのか?」
「もちろんだ!自信を持って切磋琢磨している姿こそセイルには似合う!」
と子供のように二人は笑い合っていた。




