表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/63

ep.50 実技

オクスはその日の夜一人密かに喜んでいた。

それもそのはず、中等部に上がったことで実技の授業を受ける許可が下りた。ただ、力は抑えて欲しいと懇願されている。

それでも、オクスにとってはありがたいことで。

実のことを話すと最近剣を振れていない。

(ちょうどいい時期と言ったらいい時期なのかも)

学園長によると授業を受けていないのに、全単位を取っていく異例中の異例の出来事に不服に感じている生徒が多いという話を聞いた。

それはつまり、高みの見物をしていると見えているようだ。おかしな話である⋯本人自身は、授業を受けたがっているのに受けれない。何ともむず痒いというのに、勘違いでそんな風に捉えられているとは⋯

「で、でも、明日でその誤解も解けるわけで、誰も損することのない!うん、今日は遅いし、もう寝よう」

そうして、ベットの上で意識を手放した。




────────



後日、早速演習場へと向い、僕は講師の話を聞いていた。

「私は、剣術授業担当のセイルだ。さっそくの授業となる。しかし、中には初めての者もいるだろう。だから、経験者は経験者同士と模擬稽古、経験者でも自信がない者、初めての者は基礎を学んでもらう。授業を始める前に何か質問があるものはあるか?」


すると一人の生徒が声をあげた。


「セイル先生はあの元騎士団長の剣聖セイルですか?」


「私は既に怪我で引退した身。だからただのセイル先生として私とは接してもらいたい」


その事実は生徒たちを高揚させた。先程まで静まり返っていた演習場は熱気であふれかえっており今にもその熱気に押しつぶされそうだ。


「それに、上には上がいるものだ。私もまだまだ学ぶ身、慢心することなく互いに学び合っていこう」


その後、僕は基礎の方を受けることにした。力加減を把握するためだ。


「それでは、この中に経験者はいるか?」


すると僕を含む数人が手を挙げた。


「ふむ、なるほど、この中で誰か私と一度打ち合ってくれる人はいるだろうか?」

要するに見本になって欲しいとわけね。ちょうどいいと思い僕は手を伸ばした。

「はい」


「いい心構えだ。勇敢な君、名前を聞いても?」


「オクスです」


「では、オクス。私に好きなように打ってくるといい。もちろん反撃はさせてもらうが」


と彼は訓練用の木刀を構えた。

僕もまた木刀を構えるが、全く打ち込む隙が見えてこない。


「どうした?来ないのか?」


すーっと深呼吸をするとオクスは目を見開き


「行きます!」


と地面を力強く踏み込んだ。

休暇の間、僕は父上に稽古をつけてもらっていた。


(オクス、戦争で一番強い剣術とは、なんだと思う?)


(やはり誰も近づけさせないほど素速い剣術でしょうか?)


それに対してレインは


(不正解だ)


(では、答えを教えてください!)


(おお、潔いな。あぉ、それは⋯)


僕はあえて本来狙うべき急所から少し外れた場所を狙い木刀を振った。

(この戦い方は⋯!)

セイルは驚いた顔をしながらも、僕の木刀を軽くあしらうように振り払った。そして、木刀は力に従い僕の手から離れ中を回転しながら地面へ突き刺さった。

「流石、剣聖様です。初めての人はなかなか反応しても間に合わないことが多いのですが」

「いや、初めてというわけではないのだ。その剣術を誰から?」

「父上にたたき込まれました。戦争では、早く生かしたまま戦いを終わらせることが終戦への近道だと教わってきたので」

レインはあの時僕に対してこう言った。

「それは、相手を殺さず生かしたまま倒す剣術だ」

「それでは、意味がないのでは?」

「まあ、意味のないときもあるな。それでも、捕虜がいれば早く戦争を終わらせることができるし、それに殺さず終わらせることで復讐の連鎖を断ち切る事もできるだろう?」

この言葉は今でも、僕の心のなかで響いている。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ