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ep.43 新しい日常

そして、時は現在へと戻る。

「それでは、次は新入生代表よりお話をしていただいます」

うー、やっぱりやだなぁ。正直目立ちたくなかったんだけどもう手遅れだよ⋯

そう渋々壇上に上がるとスピーチを始めた。

「まず、自己紹介を。私は、今年度特待生に選ばれましたオクス・フォン・テランと言います。ところで皆さんは特待生とはなんだと思いますか?」

その言葉に会場はどよめいたが気にせずオクスは話を続ける。

「私はただ少し有利な立場に入れただけの運のいい人だと思っています。私も例外ではありません。今、私たちはまだ、小さな輝きしか放てない新星に過ぎません。ただ、私は少し早くから自分を磨けただけだと思っています。だからこそ、この学園での経験を大事に自分を探求していただきたいと思います」

そう締めくくると盛大な拍手が送られ、オクスは何とか緊張を隠しながら舞台から降り立った。

「ありがとうございました。続いては⋯」

そう進行していく声もオクスには届いていなかった。



─────────



「はぁ⋯こんなこともう一生嫌だよ」

オクスは入学式後、説明を受けていた通りに自分の新しい学び舎で机に突っ伏していた。

そこにルーナがやってきた。

「オクス様素晴らしいスピーチでした!」

「それはありがとうございます⋯でも、もうしたくはありませんね⋯」

「そうかい?舞台の上に立っている君は輝いているように見えたけれど」

そう声の方をみるとそこにユリウスがいた。

「ユリウス殿下、いつの間にいらっしゃったのですか?」

「さっきからいたよ?」

気配消してたってレベルで気づかなかったけどな⋯

「あと、気軽にユリウスと呼んでほしいな。これから同じ学び舎で学ぶ仲間なのだから」

「流石それは⋯」

「悲しいな⋯周りの人たちは遠慮して話しかけてくれないんだよ。唯一君たちだけが話し相手なのに⋯」

「⋯わかりました。これからはユリウスとお呼びすればいいですか?」

「うん。そうだね。あと、敬語も無くしてもらえるかな?」

「わかった⋯」

それに続くかのようにルーナが

「それなら私も!敬語では距離を感じます!」

「わかった⋯」

「それでは、私たちは今日から友だ。共に精進していこう!」

そうして、三人は友となった。

「ところでルーナはユリウスと普通に話せるようになったんだね」

「はい、一応は」

「最初は大変だったんだ⋯ルーナ嬢は目が合っただけで逃げてしまうからね」

ユリウスはそう思い出すかのように疲れた声で言った。

「あれは本当に申し訳ありませんでした」

「気にしてないよ。ところでオクス。名誉伯爵になったそうだけど調子はどうだい?」

「え!?」

そこにルーナが驚きの声を上げた

「おや?アレシウス殿から聞いてはいないかい?オクスは今外交官の任と名誉伯爵を父上から授かっている。まあ、いずれ辺境伯になるのだし妥当なところかな」

「どうして教えてくれなかったのですか!」

「だって聞かれてないし⋯」

言う必要もなかったしな!

「あの、あまりそのことを話さないでくれると助かるのだけど⋯正直目立つのは好きじゃない」

「本人がそう言うなら私は黙っておこう」

「教えて知らなかったことには怒っていますが、オクス様がそう言うなら」

とりあえず、オクスが名誉伯爵なことは誰にも知られずに済むだろう。

「ありがとう。僕はそろそろ。後で学園長室に来るように言われているから」

「そうか。多分特待生関連の話だろうね」

「そうなんだ。教えてくれてありがとう」

(まあ、違うのだけど⋯)

オクスは手を振りながら教室を飛び出していった。

「オクス・フォン・テラン⋯」

そうオクスの後ろ姿を誰かが睨んでいた。




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