ep.41 試験に落ちた?
名前が無かった。つまり、落ちたということだ。
やはりあれか⋯会場を破壊したせいか。
このときの顔は落胆と文字で見えるぐらいにあからさまだっただろう。
「駄目だったかぁ」
そう声をこぼしたたことにルーナは疑問を抱いた。
「何が駄目だったのですか?」
「それは合格では無かったみたいですし⋯」
それを聞いてルーナはクスッと笑った。
「オクス様はご存じないのですね。毎年特待生が一人ずつ選ばれているのですよ」
と指差す方には、筆記満点実技満点と書かれた横にオクス・フォン・テランの名前があった。
「クラスは一緒ですね」
オクスは唖然とした。
(え?筆記はまあまあ良かったと思うよ。満点なのは意外だったけど。でも、実技はおかしくない?あれぐらい普通だよね?なんなら会場を破壊しちゃってるし減点も視野に入れてるはずだよね!)
「流石ですね」
「あ、は、はい、そうですね⋯」
動揺しているのが自分でもわかる。口もあんぐりとしたまま開けっ放しだし、思考力が鈍っている。
そんな状態の時に限って出会いはあるものだ。
「少しいいだろうか?」
と二人に誰かが話しかけてきた。
見る感じでは、服装には、金色の糸の刺繍が入った服を着ているし、近くには護衛が控えていた。おそらく、高貴な身分なのだろう。
しかし、お披露目会場では、見なかった顔だ。
「テラン家嫡男のオクス・フォン・テラン殿とミュラー家次女ルーナ・フォン・ミュラー嬢でよろしいだろうか?」
「「はい」」
「それは良かった。私はユリウス・リル・アストレリオこの国の第二王子だ」
急な爆弾投下にも動じず、ルーナは話を始めた。
結構手は震えているが⋯
「失礼ながらお披露目会場では、お目にかかりませんでしたが」
「ああ、実は父上が毒殺されかけたせいで出るに出れなくなってしまったんだ」
オクスはそれを聞きハッと意識を取り戻した。
「犯人はどうなったのですか?」
「未だに捕まっていない状況だ」
「そうですか⋯」
どうやら騎士団などを総動員して探したが未だに犯人は捕まっていないらしい。
「その件で、私はオクス殿にお礼を言いにきたのだ。改めて、父上の毒殺未遂の件感謝してもしきれない」
そう深々と頭を下げた。
「それを言いにき来てくださったのですか?」
「ああ、貴族の模範となる王族たるもの礼儀はわきまえて置かなければならない。それにこれからクラスメイトとなるのだから言える時に言っておこうと思ってな」
⋯(記憶を辿っている)
ハッ(思い出した)
(確かに一番上にあった名前がそうだったよな?)
「はい、よろしくお願いいたします」
「ああ、よろしく。ルーナ嬢も」
「は、はい!よろしくお願いいたしましゅ!」
噛んだ⋯
限界だったんだろうな⋯
ともかくこうして無事にオクスはアストラリス学園に入学を果たした。




