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ep.38 入学試験

ゆっくり休んで試験当日、無事試験会場へと着くことができた。正直な話、道に迷う可能性を恐れていた。

そうして、受付を済ませ、筆記試験の会場へと向かった。誘導された部屋には知り合いはいなさそうだ。

もしかしたら、ルーナに会えるかもと思った考えは甘かったようだ。

しばらくして、試験が開始された。

内容はごく簡単のものである。それはそのはず、だって小学生と同等の内容なんだから。

というわけで迷うことなく進め続けること十分。

(一時間のテストなのに終わっちゃった⋯)

とは言え試験中なので何かすることもできない。

ん?待てよ。よく見たらまだ問題が続いてる。

(解答欄にない問題だけど解いてみようかな)

と進めていくたびに問題がどんどん難しくなっていく。最終的には、高校生レベルの問題まで出てきた。

そんなこんなで問題を解き続け、気がつけばテスト終了のベルが鳴っていた。

「まあまあできたかな」

実は俺、勉強は得意な部類であった。

しかし、前世ではよく補修に行っていた。それには、ちゃんとした理由がある。いくらテストの点がよくて成績を落とさなかったとしても、出席日数が足りなかったのだ。両親は、既におらず一人暮らしだった俺は、何とか補助金をやりくりして生活していたがそれでも限界があった。そうして、俺はバイトを始めたのが原因で出席日数が足りなくなり、俺の面倒をよく見てくれていた先生が事情を考慮して補修をしてくれていたのだ。

(先生には、感謝しないとな。実際高二に上がれたのも先生のおかげだし)

恩を返せず死んでしまったが、先生の人生に幸があらんことを願う。

ちょっと過去に浸ったあと、次は実技の会場へと向かったが違和感を感じた。

(なんか周りの人でかくね?)

違和感を感じつつもオクスはその場にとどまった。

「それでは、試験を開始する。今回の試験は実戦形式。模擬戦だ。今回のためにギルドからAランク冒険者の方々を派遣してもらっている」

(随分気合が入った試験だなぁ。流石国内最大の学園)

そんな感じで感心しているうちに説明は終わり冒険者の一人が声を上げた。

「今回、試験を担当させてもらうAランク冒険者のギメルだ。そして、こっちが同じくAランク冒険者のサラ」

と杖を持った女性がコクリと頷いた。

「さっそくだが、試験を開始しようと思う。最初にかかってくるのは誰かな?」

そう言っても最初は様子見がしたい。だから、誰も手を挙げない。

「まあ、誰も手を挙げないだろうな。なら、そこの黒髪の少年!」

ん?黒髪の少年?俺は周りを見渡すが俺意外いない。おかしいな黒髪は珍しくないんだけど⋯

まあ指名されたからには立たなくては

「好きな武器を選んでくれ。こっちは剣で行かせてもらう」

色々並んでいる中から俺が選んだのは

「刀か。珍しい」

「教えてくれえる人が身近にいるもので」

「じゃあ、始めようか」

「その前の聞いていいですか?」

相手は受けの構えだ。こっちを動きうかがっているらしい。なら行かせてもらう!

足に力を入れ大きく踏み込み初撃を放った。

(やっぱり受けられるか)

オクスは、砂煙を起こし、その隙に距離を取った。

ギメルが砂煙を払ったあとオクスに声をかけてきた。

「お前さん凄いな。ちょっと舐めてたぜ」

「ありがとうございます?」

「そこは素直に受け入れるところだぜっ」

軽く会話を挟んだあと大きく踏み込んできた。

今度はこっちが守備をする番ということだ。

バックステップしながら捌き続けるのはさすがに厳しい。ここで一撃入れておくべきだ。

オクスは一瞬の隙のうちに木刀を左腰に合わせてこうつぶやいた

風切り(かざきり)

そうして放たれる一太刀によってお互いに木刀がぶつかり粉砕された。

「あー、壊れちまった。これは引き分けだな⋯」

そう声が響くと周りがざわざわし始めた。

どうやら、ハダルは名の売れた冒険者であり、Sランク昇格間近とまで言われているらしい。

「剣の試験はここまでだな。次は魔法だ」

「続きは私が相手をする⋯君は多分私より強い。本気でいくからそっちも本気できて⋯」

「善処します」

「その言葉嘘だったら承知しない⋯」

そう牽制するかのように魔法が飛んできたが、防御結界で軽々しくオクスは防いだ。

そこから始まったのは、地獄のような景色だった。

ひたすらに魔法が飛び交い、空中で衝突しあった。

周りには結界を張っているとはいえ大惨事である。

そこに待ったをかける人物がいた。

「何の騒ぎですか?」

そう大きな声を聞いて、魔法を放つをのやめて会場をみるとそこは無残にもボロボロであった。

「何があったか教えてもらえますか?」

と監督の教員にその人物は駆け寄った。

「学園長先生!これはですね⋯」

軽く説明が行われたあと学園長と呼ばれる人物は俺に近づいてきた。

「あなた、お名前は?」

その瞬間サラは目を逸らしてハダルを盾にして隠れていた大人げない⋯

「オクス・フォン・テランです」

「そうですか⋯ところで初等部の受験生である貴方がどうしてここに?」

と入る時に渡されたバンドを指さした。

この言葉にまたまた会場はざわついた。

今年の受験生が自分たちを超える力を誇示していたのだから驚くのも仕方ないだろう。

「それは実技試験を受けに⋯」

「ここは中等部の会場ですが⋯」

「え?」

その言葉にオクス完全に固まる。

「確かに初めての生徒ですから間違えることもあるでしょう。実技試験は私も見させてもらいました。それを成績に参照しておきましょう」

「すみません!すみません!」

流石にこれは土下座案件である。会場を破壊した上に会場を間違えたとなると⋯

「と、とにかく会場は直していきますね!」

大慌てで土の魔法で地面を作り、平たくした。

「ご迷惑をおかけしてすみませんでした!」

そう言ってオクスは逃げ帰ったのだった。



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