ep.4 祈り
オクスは馬車の窓から街の景色を見ていた。
「どうだ父さんの街は?」
「すごく素晴らしいです。みんな生き生きしているように見えます」
街の人は馬車に気がつくと手を振っていた。
それにお父様とお母様は手を振り返ししている。
父がここまで街の人と仲がいい事を俺は知らなかった。
考えてみれば、今日が初めて街に出る機会。初めて見る屋敷の外、初めての景色、初めての経験。
今日の経験は記憶時に残るものへとなるだろう。
レインが手を振り終えて馬車に座り直したあとレインはオクスに向かってこう言った。
「オクスこれは現当主から時代当主のお前への言葉だからよく聞きなさい」
「はい」
オクスは静かに頷いた。
「私はお前が知っているように成り上がって貴族になった口だ。だから、私たちには貴族たちのように誇りはない。ただ、泥臭く誰かを守るために戦っている」
レインは一息置いたあと
「だからこそ、人と人との縁を大切にして欲しい。そうすればお前は素晴らしい領主になれる」
とオクスの肩を持ちながら熱く語った。
「僕にできるでしょうか⋯」
俺はこちらに来てまだ五年。分からないことだらけだ。常識だって違う世界でうまくできるだろうか?
「大丈夫よ。オクスには人を引きつける力があるわ。あなたの周りには自然といい人が集まるわ」
このときには俺はこの言葉の意味が分からなかったが心にはグッと響いた。
「お、神殿についたみたいだぞ。オクスがどんなスキルを得て、どんな魔法に選ばれるか楽しみだな」
俺はお父様に手を引かれながら馬車を降りた。
すると神殿の人間であろう人が出向かいにでてきていた。
「ダイアス辺境伯御一行様、よくぞお越し頂きました」
「司教やめてください。私たちは今一人の神を信じるものとしてここにいるのです。神の前では皆平等でしょう?」
司教様は驚いた顔をしたあと
「辺境伯様には敵いません。では、今日はご子息様のオクス様の洗礼ということで。こちらへどうぞ」
と神殿の扉を開いたあと大聖堂へと案内してくださった。
「それではここで膝をついて神に願ってください」
「はい」
言われるがまま膝をつき両手を合わせたのを確認すると
「この清きものに神のご加護があらんことを」
そう司教様が言ったあとオクスはより強く願った。
(凄い魔法とかスキルを得られますように⋯)
三十秒祈って何も起きないことに違和感を感じ目を開けるとそこは神殿ではなかった。
(え?ここどこ?)
オクスは普通に混乱に陥るのだった。