ep.36 欲望は失言を生む
メイヨハクシャク?ガイコウカン?チョットリカイガオイツカナイナァ⋯
そもそも、五歳の子供に背負える役回りなのか?
呆気にくれているオクスを脇目に話は着々とまとまっていく。
「五歳で叙爵は反感が起きるでしょうが、テラン家の名前を出せば何とかなるでしょう。陛下の命を救ったという功績もあるわけですし」
とアレシウスが言うとそれに同意するかのように国王は首を振った。
「うむ、では叙爵式の準備が必要だ。アレシウス、全ての貴族たちを招集せよ」
「承知いたしました。この時期ならすぐに招集することも可能でしょう」
それからは忙しい日々だった。
その日のうちに屋敷の受け渡しを行い、その後は入学手続きなどなど今後あってほしくないほどに動き回る羽目になった。
そして、さらに数日後叙爵式が行われた。
「オクス・フォン・テラン。お前を今日より外交官及び名誉伯爵とする。また、最果ての地の領主とする」
「国王陛下の手足となれるよう、国の発展のため全身全霊をもって役目を全うできるよう日々精進していきます⋯」
拍手は起きているがその中から小声だが色々なことが聞こえてくる。
「最果ての地とは戦場跡地の?」
「不可能だ」
「五歳の子どもが名誉伯爵など⋯」
「そもそも、外交官の職は戦後廃止になったはず」
(あぅ~、胃がキリキリするぅ⋯早くここを抜け出したい。明日、入学試験も控えてるのにぃ)
正直なところ満身創痍であった。
あまり目立つのは好きじゃない。トラブルに巻き込まれる予感がするからだ。
開拓してみたいという欲がこんな結果をもたらすとは思ってもみなかった⋯
やはり、欲は身を滅ぼす。心に刻んでおこう。
それから、何か起きそうな雰囲気を持ちながらも均等を何とか保ったまま叙爵式は終了した。
その後、オクスは引き渡しを受けてから一度も行っていなかった屋敷に行ってみることにした。
最初来たときは中はほこりを被っていたから掃除しないとそう思いながら玄関扉を開くとそこは新品同様の様に輝いていた。
⋯え?何があったんだ?
オクスは、そこに倒れている戦闘狂の二人に駆け寄って話を聞いてみることにした。
「二人ともここで何があったの?」
すると辛うじてかレイだけは掠れた声だったが反応があった。
「オ、オクスか⋯」
「そうだよ。本当に何があったの?」
「ああ、早く逃げないと⋯」
「誰から?」
「それは⋯」
「二人とも?何で横になっているのですか?」
すると二階の方から声が響いた。
声のほうを向くとそこには、スイとスイに手を引かれているツクモがいた。
「あ!オクスだー!」
ツクモはこちらに気づくとすぐに駆け寄ってきた。
「久しぶり。みんなと馴染めたみたいだね」
と頭を撫でるとツクモは嬉しそうにしていた。
よく考えれば獣人たちは友好的だ。ただ、強い人に対してだが。
他の種族との交流がなくなっても、獣人たちとは、交流があった。
他の種族ともこんなふうに仲良くなれればいいなと本心から思う。
おっと、本題からズレすぎた。
気がつけばそこに佇んでいるスイに事情を聞こう。
「えーっと、スイさん?これは何があったんでしょうか?」
「それはですね⋯」
スイはそう淡々と事の経緯を話し始めた。




