ep.34 褒賞
会場へと戻るとパニックはファルとアレシウスによって収められていた。
「オクス君!ここからでも聞こえたよ。陛下を助けてくれたようだねありがとう」
「そんなに頭を下げないでください。当たり前のことをしただけですから」
「あたりまえか・・・それができる人間はそう多くないよ。君はやっぱりすごいと私は思う」
こう他人から褒められるのは初めてかもしれない。レインからは褒められたことはあるがこうして身近な人以外に褒められるのは本当に初めてだった。
前世では先に死んでしまったから。ふと過去を思い出し
あの子元気かなぁ、元気なら家族との時間を大切にできているといいな、そう思った。
「アレシウス様、父上がどこかご存じないですか?国王陛下に両親と主に執務室まで来いと言われまして」
「なるほど、テラン卿ならおそらく騎士団のところだろう一斉に騎士が動き出した。おそらく話をつけてきたのだろう。さすが元騎士団長といったところか」
どうやら犯人捜索に協力しているらしい、近くにいた岸さんに聞いてみると騎士団本部で指揮をとっているのだとか。
「この国の宰相としてオクス君のことは私が送り届けよう。テラン夫人すこしいいですか?」
「レインを連れてきてほしいのね。わかったわ」
「話が早くて助かります。では、オクス君は私と」
最初は軽い気持ちだったオクスは後で貴族社会とは何か思い知ることになった。
──────────
「遅かったな」
執務室に着くとなぜかあとに出たはずの両親が先についていた。
(え?なんで?)
まあ、そんなことは後で聞けばいい事としておこう⋯
「急に呼び出して済まないな。一度座って話そうではないか」
そう発言したのは、国王その人だった。
その言葉にアレシウスを除く一同は着席した。
「では、今回の件。まずはオクス・フォン・テランよ。感謝するぞ」
「陛下よりそのようなお言葉をもらえるとは光栄の極みでございます」
正直うる覚えの礼儀に頼りながら何とか話を進めていく。
「私は、今回の件でお前に褒賞を与えようと思う。だが、お前はテラン家の嫡男。むやみに爵位を与えることはできん。だからまずお前には、白金貨十枚と王都に屋敷を授けよう」
屋敷の方も驚きだが白金貨のほうが驚きだ。
白金貨一枚は日本円換算で一枚一億円程度。
(それが十枚ってことは⋯十億円!?)
あまりの額に衝撃が走りうっかり椅子から落ちそうになったが持ちこたえた。
そんな、何とか持ちこたえているオクスの顔に何かの資料が飛び込んできた。
「なんだろう⋯『種族関係問題による領地の未発展問題』?」
「おっと、済まないな。窓が開いたままになっていたようだ。ところで、オクスよ。それをを見てどう思う?」
どう思うって言われてもなぁ⋯
とりあえず、正直に思ったことを言うことにした。
「やっぱり外交が滞っているのでそれを改善するべきなのと、あの土地には街がないので種族間交流のきっかけがないのが問題だと思います」
「そうか街か!あの土地に街を作ろうと言ったのはお前が始めてだ」
と高々と笑っていた。なぜなら、その土地は幾千もの争いの跡地なのだから。




