ep.3 家族
「わぁ〜、この服すごいね」
オクスは鏡に映る自分を見てそう言った。
「それはもう、このためだけに用意された専用のものですから」
オクスが今着ている服は恐らく礼服になのだろう。
装飾が他の服よりも豪華だ。
「着るのはめちゃくちゃ大変だったけど⋯」
「何かおっしゃいました?」
「いえ、何も」
「なら早く行きましょう〜。旦那様も奥様もきっと見たら喜びますよ〜」
とエーシャに背中を押されながら部屋を出た。
「あ、ちょ、ちょっと」
少し歩いたあと屋敷の玄関へと出た。
「旦那様〜オクス様をお連れしました〜」
「エーシャおつかれ。いつもオクスの面倒を見てくれてありがとうな」
「私には身に余る光栄です。それでは私は一度外します」
エーシャはその場を離れる直前オクスに目配せをして去っていった。
「オクスすごく似合ってるな」
「本当ですかお父様!嬉しいです。ところでお母様はどこに?」
「ファルならそろそろ来ると思うぞ。お、噂をすれば来たみたいだ」
とレインは階段の方を見るとそう言った。
ファルは身を乗り出して
「オクス似合ってるわ!流石私達の子。最高に可愛いわ!」
「お母様こそお似合いですよ」
髪色に合っている青いドレスを来たファルはとても輝いて見えた。
「まぁ!褒められちゃったわ。嬉しくて倒れちゃいそう」
「実際すごく似合ってるよ」
「もうあなたったら」
凄く仲がいいと思う。それが凄く嬉しくて虚しかった。
俺の前世では両親はすごく仲が悪かった。
毎日リビングから喧騒が聞こえてくる。
そんな状況で家族は持つわけがなく両親は離婚もした。俺は父親についていくことになった。
そして、父は仕事を増やし、その結果体を壊し、病院に入院した。そして、父はお見舞いに行ったある日俺にこういった。
(春樹、お前は俺と母さんのようになっては駄目だ。お前は優しい子だ。きっと春樹は誰かを助けられる子になる。だから覚えておいてくれ。人間関係でみんなから頼られる人間になるんだ。きっとお前ならすぐ周りに人は集まってくる。だから、その人たちを大切にするんだ⋯)
その次の日父は息を引き取った。
お医者さんによるとすでに体が限界だったらしい。
過労による疲労死だと聞いた。
その日から俺は一人になった。
そんな俺がまたやり直せてる。だから、この人生を大切にいきたい。
「オクスそろそろいくわよー」
「はい、お母様」
とオクスはファルに駆け寄り差し出された手を強く握った。
「じゃあ二人とも馬車に乗ってくれ。神殿に向かうぞ」
オクスはレインに連れられるがまま荷馬車に乗り神殿へと向かうのだった。