幕間 二人が屋敷に馴染むまで スイ編
時は遡ること数カ月前。
まだ、スイとレイが屋敷に来たの頃。
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スイ視点
私はスイ。昔は孤児でしたが今は屋敷のメイドとして働いています。
改めて考えると私がここに立っていることでさえ奇跡だと思えてきます。オクス様が来てくださらなければ私は死んでいたも同然ですから。
噂をしていれば、オクスが角を曲がって現れた。オクス様は私に気がついたのか駆け寄ってきました。
「あ、スイおはよう。屋敷には馴染めてきた?」
「いえ⋯」
今はあくまでも主人と従者の関係。できるだけ主人であるオクス様の希望は叶えなくてはいけません。
「申し訳ありません」
このとき私は自分の非力さに心を痛めました。
「え!?別に気にしないで謝ることじゃないよ」
「しかし、私はまだ屋敷には馴染めていませんから⋯」
「あーなるほど。僕が二人をここに連れ来る時なんて言ったか覚えてる?」
「えーと⋯」
「スイに話した時は家臣って言っちゃってたから知らないか。あのね、僕は二人を対等な仲間として迎い入れたんだよ」
「え?」
始めてそんなことを聞きました。
なんでで頭が埋まっていきます。
「だから、屋敷の中とかでは気を使わなくていいからね」
「わかりました。頑張ります!」
彼がそう言うならできるだけ頑張ってみようと思えました。ですが、どう話せばいいのか見当がつきません。それを見かねてなのか
「ねえ、スイ。やってみたいこととか好きなことってある?」
「そうですね⋯料理がしてみたいです」
昔、まだ孤児ではなかった頃の憧れであった料理。もう諦めた夢ですが⋯
「そっか!じゃあついてきて」
とオクスはスイの手を握り走り出した。
「どこに行くつもりですか」
「それはもちろんここ!」
ここは確か⋯
オクスは扉を開け、一番近くにいる人物へと声をかけた。
「ユーリさんいますか?」
「おはようございますオクス様。ユーリ料理長なら奥にいますよ」
そう一番近くにいた料理人さんが教えてくれた。
「ありがとう」
と再び厨房の奥へと進んでいった。
「ユーリさん」
「オクス様じゃないですか。今日もシンたちへの差し入れですか?」
「今日は違いますね。厨房の角でいいので貸してほしいのは同じですけど」
「もしかしてスイちゃん関連ですか?そこにいますし」
「相変わらず鋭いですね。さすが元暗殺者ってところですか?」
「昔の話はやめてくださいよ〜。もう捨てた自分なんですから」
少し笑い話を挟みながらユーリはお願いを了承してくれた。
「道具一式はここにおいておきます。材料はあそこの冷凍室にあるので好きに使っちゃってください」
「ありがと」
ユーリは手を振りながら元の業務へと帰っていった。
「じゃあ、材料取ってくるから待ってて」
「私が取りに行きます」
これぐらいしなければ、メイド失格だと思います。
なので勇気を出してそういいました。
「じゃあ、運ぶの手伝ってくれる?」
「はい!」
このとき凄く嬉しかった。誰かに頼ってもらえることがこんなにも嬉しいことだとは⋯
そんなことを考えているうちに冷凍室に入っていました。
「えっとじゃあ探してほしいのは⋯」
そう言われて二人で手分けしながら材料を探して行きました。
探しているうちに必要な材料はあと一つになりました。
「どこでしょうか?」
周りを見渡せば似たような高い棚ばかり。まるで同じところを歩いているかのように錯覚してしまいそうです。
「あった!オクス様ありましたー」
その声は少し反響したあとオクスに届き
「わかったー。今からそっちに向かうよー」
と返事が返ってきた。
「じゃあ今のうちに取っておきましょう」
届きそうもないのでハシゴを近くから取ってハシゴの上から体を精一杯伸ばしました。
「うーん。届かない。もう一回!うーん。あとちょっと⋯届いた!」
そう最後の材料を手に取ったときバランスをくずしてハシゴからスイの体は飛ばされた。
「あっ」
スイはこのまま頭から落ちてしまうそう思った。
(ごめんなさい)
死をも覚悟したその時
「間に合えぇぇ!」
オクスがスイのことを急いでキャッチして、止まれず受け身を取る形にはなったが何とか最悪の事態は回避できたようだ。
「大丈夫!」
「ありがとうございます。でもこの体型は⋯」
今二人はオクスが上からスイを抑えているかのような体型になっていた。
「あぁ!ごめん今すぐ離れるから」
オクスは急いで後ろへと下がった。
(とても恥ずかしいかったです。でも、それ以上に心臓がバクバクしています)
それに
「嬉しかったです」
「え?」
「私のためにそこまでしてくれて」
「後悔したくなかっただけだよ。つまり⋯ただの自己満足」
「それでも嬉しかったですよ」
とさっきまでこわばっていたのが嘘のような笑顔を見せた。
「ッ!」
オクスはつい見惚れてしまったが我に返って
「とりあえずここを出ようか」
「はい!」
(今日のことは一生の思い出にしましょう)
スイはそう心に決めるのだった。




