ep.23 新人冒険者オクス
「なるほどねぇ」
オクス達は奥の部屋で話をしていた。
「というわけだ。登録したら帰るからさ」
説明を終えたレインはさっきとは違って真剣にそういった。
「わかった。別に登録するのはいい。お前の息子だけでいいか?」
「あ!ちょっと待ってください。この二人もお願いします」
急いでオクスは二人の分も頼んだ。
「わかった三人だな。紙を取ってくるからそこに座って待っていてくれ」
オクスは置いてあったソファーに腰を下ろし、今日に至るまでのことを考え始めた。
(ついに冒険者だ!なんか貴族のしきたり?たしなみ?⋯なんだったか忘れたけど)
そんなことは置いておいて、やっぱり異世界転生したなら冒険者にはなってみたいものだ。
うんうん、と首を振りながら後ろをちら見して、スイとレイのほうを見た。
(やっぱり今日は黙りだな⋯身分とか立場気にしてるのかな)
そう思ってオクスは二人に声をかけることにした。
「二人とも身分とか気にしないでいいからね?」
するとスイがゆっくり白藍の髪を揺らし
「表向きは主人と従者ですから基本は大人しくしているのですよ。決してオクス様の優しさを無下にしているわけではありません」
レイは無言ながらも首を縦に振った。
「どうしてレイは喋らないの?」
「それは⋯」
レイが口を開きかけたがそれを遮り
「それはこのバカ兄は口を開けばだいたいろくなことにならないからです!数カ月たっても敬語一つ覚えないんですよ!」
とスイはビシッとレイを指さした。
「ギクッ⋯だってそれはオクスがいいって⋯」
「ほら!また呼び捨てにしてるじゃないですか!何度言ったらわかるんですか!外では敬語を使ってとあれほど⋯」
「はい⋯すみません⋯」
まるで子を叱る母親のようだ⋯
そう思いながら外から見ているつもりだったがそれは違ったらしい。
「オクス様もですよ!甘すぎます!」
「え!?僕!?」
「そうです!部下は上を見て育ちます。次の領主としてもっと自覚を持ってください!」
「えぇ⋯」
まさに、藪から出た棒。まさかの方向転換にオクスは面食らった。
「ごほん。そろそろそっちに行っていいか?」
声の方を見ると、リアトルがドアを開け立っていた。
スイは恐る恐る聞くことにした。
「どこから聞いていました?」
「バカ兄がから」
するとスイはポンと音が聞こえてしまうほど赤面をした。
「別に恥ずかしがることじゃない。それはよく人を見ている証拠だ」
と誇れと言わんばかりの顔をしながら、反対側のソファーに座り三枚の紙とペンを差し出してきた。
「これが登録用紙だ。名前とあと使える魔法属性とスキルを書いてくれ」
うーん?どうしよう⋯こういう時頼れる父親なら⋯
よかったんだけどねぇ。これ何も考えてなかった顔だぁ。なんならパニクってるし⋯
その勢いでオクスの肩をつかみ
「全部自分で考えろ。それが未来のためになる」
とサムズアップしているが、 絶対責任負いたくないだけだろ。
そう思いながらもペンに手を伸ばした。
(名前をいいとして。魔法属性とスキルは?属性の方は一旦火と風でいいとして、問題はスキルだ)
オクスが今持っているのは『創造』『精霊術』『看破』『薬物生成』の四つ。これの中で位置番目枝たなさそうなのは⋯
「僕はこれで」
オクスはリアトルに紙を差し出した。
「ふむふむ、この年で二属性持ち⋯ん?これは⋯」
「どうかしました?」
特に何も書いていなかったはずだが。
「この薬物生成っていうのはどんなスキルなんだ?」
なんか説明することあったっけ?まあとりあえず
「何でも薬を作れる力ですかね。病気薬でも傷薬でも⋯」
オクスここにきて気がつく。
(これやばくね?)
「オクスくん⋯」
「はい⋯」
「今この国は薬不足で悩んでいる地域も多い。そこに君が行ったらどうなる?」
「薬をつくりますね⋯」
「そういうことだ。貴族じゃなかった監禁するところだった」
「え!」
「冗談だ。冒険者登録は受理した。これからよろしく頼むぞオクスくん!ハッハッハ」
「ハハハ⋯」
オクスは最初からやらかしながら冒険者登録を済ますのだった。




