ep.20 オクス、◯になる
ちなみにあれからお母様に勝てる日は来ることはなく、お母様は妊娠のため三ヶ月前から訓練をしなくなった。やってる方がおかしかったんだろうけど。
今日で、スイとレイが来てから数ヶ月が経った。
今では二人は屋敷内では引っ張りだこなぐらい大人気だ。スイは、積極的に厨房に通って料理を手伝っていたり、救護団の手伝いをしているうちに回復魔法が使えるようになったりとスイがどこに所属するかでバッチバチだ。
レイの方はというと、詰所に通いシンからいろいろな武術中でも刀術を教えてもらったり、ノラと実戦形式の訓練を繰り返していたりしている。こっちもレイの所属でバッチバチらしい。
でもどこからの誘いも断っているようだ。
そして、二人は揃ってこう言っているらしい
「「オクス(様)の専属だから(ですから)」」
どうやら俺はいいように使われているらしい。
ちなみに俺は毎日、剣と魔法の日々を送っている。
まあ、俺の訓練には勝利という言葉が存在しないかもしれない。どちらも技量で劣っているのだ。
どちらも人並み以上のできるようになったとは言え、やはり勝てない。というか人並みはどれくらいなのか。俺にとって人並みはうちに兵士たちを基準にしていたりする。
そんなことを考えながら自室で魔導書を読みふけっていると
「オクス様、旦那様がお呼びですよ〜」
「なんだろう」
オクスはその後執務室へと向かった。
「お父様失礼します」
「オクス来たか。急だが話というのはだな」
ゴクリ、なんの話だろうか⋯
「今日からお前もお兄ちゃんだ!」
「えぇ!本当ですか!」
とつい飛び跳ねてガッツポーズを取ってしまった。
「今日救護団から連絡があってな。オクス今から一目見にかないか」
「行きます!行かせてください!」
「よーしじゃあ行くぞー!」
「おー!」
そして、救護室へとカチコミに行く親子。
そして、案の定ゲンコツを食らう親子。
「もうちょっと静かに入ってこれないのですか!」
「「すみません」」
「さっき寝たばっかりだと言うのに⋯」
「そうだ名前。名前を決めたんだ!男の子だったらゼノ、女の子だったらミレイっていうのはどうだ」
「この子は女の子よ」
「じゃあミレイでいい?」
とご機嫌を伺いながら聞くレイン。
「いいと思うわ」
「じゃあ、お前は今日からお前ミレイ・フォン・テランだ」
と起きぬように静かにそういった。
町の住民たちや兵団その他諸々からのお祝いの品で玄関先が埋まるまであと数時間。




