ep.13 スラム病
「あ、おかえり」
扉を開けるとそこには横たわっている少女がいた。
「ただいま。これ今日の分の食料」
「また盗みを働いたんですか?」
「今日は違うよ」
「それならいいのですが⋯ところでそちらの方は?」
顔をこちらに向けてそうレイに尋ねた。
「ああ、こっちはハルキ。お前の病気を治してくれるかもしれないやつだ」
「私たちと同じぐらいの年齢に見えますが⋯」
実際オクスはまだ5歳だしそう思うのは仕方のないことだろう。
「そう思うのは仕方ないと思う。けど信用して欲しいってのも無理があるか⋯」
「信じますよ」
弱々しい声ながらも返事をしてくれた。
「いいの?」
「ええ。頼れる兄が連れてきた人ですよ。信じますとも。それに私はもう長くないでしょうし⋯」
「そんなこと言うなよ!きっと治してくれるって」
「そのとおりだよ。治してみせる」
オクスはまず病気が何か調べるために看破のスキルを生み出した。
看破によると彼女のかかっている病気はスラム病と言う伝染病らしい。
(ねえ、エル。病気を治すスキルってある?それに近い効果でもいいから)
(⋯⋯)
(エル?)
(あ、はい!直接治すスキルはありませんが、薬物生成と言うスキルがあるはずです。それで病気の薬を作るのはどうですか?)
(なるほど)
魔法で薬を入れる容器を創り出して、そこへ薬物生成のスキルで薬を流し込んだ。
(これでできたはず)
「レイ、これを飲ませて上げて」
「お、おう任された」
レイは容器を持って駆け寄り
「スイ、これを飲んでくれ」
今更だがこの子の名前はスイというらしい。
「わかった」
と薬を喉に流し込んだ。
「どうだ?」
「体が軽いです⋯動けます!」
と立ち上がって何回か飛び跳ねてみせた。
少しふらついてレイが支えに行ったがそれでも十分元気そうだ。
超即効性の薬だからこれでもう大丈夫のはず。
「とりあえず元気になったみたいでよかった。それじゃあ僕はこれで」
とちょっとかっこつけて帰ろうとしたが
「ちょっと待ってください」
引き止められてしまった。
さりげなく去るやつやってみたかったんだけどなぁ⋯
「どうしたの?」
「料金などは⋯」
「いらないよ別に。やりたくてやったことだし」
「ちゃんと恩は返して料金を働いて払いたいです」
「でもなぁ〜」
雇ってくれるところなんてないだろうしな⋯
でも、これをすると⋯
考え込んでいるとレイが立ち上がって。
「俺からもお願いだ。ちゃんと恩は働いて返したい」
「⋯はぁ、わかったよ。そこまで言うならまあ」
「ありがとうございます」
と言ってもどうしたら良いのか。
少し気になったという不純な理由であったが二人のステータスを覗いてみた。
(あれ?どうしてだろう)
「ねえ、二人とも」
「どうしたんだ?」
「二人は昔は孤児じゃなかったんじゃないかと思っ
て」
「どうしてわかったんだ?」
「本当は駄目なんだけど少し二人のステータスをみたんだけど、そこにちゃんとスキルと魔法適正が書かれていたから」
スラム街の人間にとって教会など行く余裕すらない。
だから、スキルを持っていないものが多かったりする。持っているということは何らかの後天的理由でここに来たということ。
「スキル?使い方がよく分からない奴か?」
「え?」
まさか使い道ではなく、使い方とは⋯
「だって、二人で共有分割としか説明文は書いてないんだよ」
「そうですね。私達は二人とも同じ名前のスキルを持っているんです」
『分かち別れず』それが二人のスキルらしい。
正直なところはよく分からないらしい。実際つかったこともないそうだ。
(でも、このスキル使いようによってはなんにでも化けるのでは?)
オクスには説明文が何でも共有及び分割できると書いているように見えていた。
それに魔法の素養があるのはいいことだ。
もちろん魔法が使えない人も世界にはいる。
だからこそ、チャンスを逃さぬようオクスは決めた。
「二人ともうちで働かない?それならすぐ会えるし」
「え?でもお前ただの子供だろう?」
そう、きっと普通の子供に見えるだろう⋯
「本当はただの子供じゃないんだ。先に名前を偽ったことを謝罪します。僕の本当の名前はオクス・フォン・テランここの領主の息子です」
この言葉を区切りに空気は一変した。




