ep.10 恐るべし天使パワー
さて、どうしたものか。
俺も一応貴族の身ということなので、街に出るにもそれなりの理由がいるわけで⋯
「理由⋯理由ない。どうしよう」
困ったな。仲間探し以前の問題で行き詰まった。
「それなら視察と言う形にしたらどうですか?」
「確かにそれなら違和感はないけど、疑われないかな?」
「疑われそうになったら私が魔法でチョチョイっと誤魔化せますから」
とエルは人差し指を上に立てて指をくるっとさせた。
「それって大丈夫なの?」
「大丈夫⋯⋯です。きっと大丈夫です!精神に干渉するだけなので」
天使恐るべし。思考が人とは違いすぎる。
それに精神干渉は犯罪なんだよなぁ⋯
「できればそれはなしで」
「なんでですか?」
「色々と倫理に反してるからだめ」
「そうですか」
⋯⋯
⋯
「思ったんだけどエルって他の人から見えてるの?」
ふわふわ浮いているこの天使は他人に見えているのだろうか?と言う素朴な疑問を浮かべ聞いてみた。
「見えてないですね。見えるようにもできますよ?」
「あ、そのままでいいです」
見えてる方が問題なんだよ。
何が起きるか分かったものじゃない。
「でも、稀に見える人もいるみたいです。神を深く信仰していれば見えるかもしれません」
「要は信じるものにだけ神は微笑むってやつか」
「そういうことです」
そういうものなんだろう。そう考えていたほうが楽そうだ。
「とりあえず屋敷に戻るか⋯」
魔法を試すのはまた今度ということで⋯残念。
──────────
さりげなく屋敷の裏から部屋へと戻った俺は街に出るために交渉することにした。
よし、行くぞ執務室!
ノックをして、ドアを開けて
「失礼しますお父様」
「オクスどうした?」
「お父様にお願いがありまして、街に出てみたいのです」
結局ストレートに頼むほうが早いからそういうことにした。はてさてどうなることやら。
「⋯」
「⋯」
静寂が執務室に続く。
(やっぱりだめなのか⋯)
「もちろんオッケーだ!」
「え?」
思っていたのと逆の返事が返ってきた。
「いつかこんな日来るとは思っていたが今日か!」
と後ろの合ったクローゼットを開き
「街に出るならやっぱりお忍びのほうが楽しいよな!だから、これ変装用だ。好きなを選ぶといい」
とワクワクしながらそういうこの父親。
親バカ過ぎる。
「なっ」
まさかの用意周到さに驚きが隠せず、さすがに引腰になった。
(よかったじゃないですか)
(えっ?今度は何?)
誰かが頭に直接的話しかけてきた。
(もしかしてエル?)
(正解です。理解が早くて助かります)
(そんなことできたの?)
(できますよ。天使ですから)
天使パワーすげぇー!
(いえいえ、これ魔法ですよ?今度お教えしましょうか?)
(やった〜)
(無邪気に喜んでいないで早くしたほうがいいですよ。この時期は日が沈むのが早いですから)
(そうだね)
オクスは念話的な何かを一度やめて服を選んだ。
「それだな。わかった!」
レインがベルを手に取り鳴らすとドタドタと何かが迫ってくる音が聞こえてきた。
「旦那様お呼びでしょうか?」
「あ、メイド長さん」
「オクス様⋯旦那様そういうことですね」
「そういうことだ」
目で意思疎通するのやめて。こっちなんにも分からないから⋯
「それでは、オクス様失礼します!」
「え?あ、ちょっ⋯」
オクスはそのまま部屋にある着替え用のスペース(どう考えても前もって準備していた)に連れ込まれ、服を剥がれ三十秒後には着替えさせられていた。
(なんという早業⋯)
「似合ってるぞ〜。まるで、どこにでもいそうな子供だ」
「それは褒めているのですか?」
「褒めているさ。母さんにバレる前に早く行っておいで」
「お母様?よく分かりませんが行ってきます!」
とオクスは執務室を飛び出した。




