表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

前章 日常が変わる日


なにげない朝 なにげない日々

毎日同じことの繰り返し

そんなことに疲れながら会社へ向かう

するとそこには、可憐で綺麗な顔をした

知らない女性が首を吊っていた


2008.4.8

カチカチと時計が煩わしく針を動かしている。

6:50 いつも通りの時間に眠たい目と重い身体を起こして洗面台と顔を合わせる。

冬とは思えぬ日差しの中、冷え切った水と慣れ親しんだ洗顔を使い顔を洗う。

目が覚めたのか覚めてないのか全く働いてない頭を起こし、身支度を済ませる。

7:15 いつも通りの朝食。トーストにバターを塗り、ホットコーヒーで喉に流し込む。毎日決まって同じものを食べている。飽きないのか?と思われがちだが、ルーティンの一つになっていて全く飽きない。

7:30 強い日差しと冬らしさ溢れる風に吹かれながら重い足取りで会社へと向かう。

ここで働いてどのくらい経っただろうか?今まで何度か職を変えてきている。自分に合う職場だと思って、就職した。蓋を開けてみたら全く合わず転職の繰り返しだった。

そんな中、今の会社に出会った。仕事内容は子供達と接すること、簡単に言えばね。現代の言葉遣いやモラルなど色々気にせずに言うならば、いわゆる``普通の子’’ではない。最初は大変だとしか思えなかったが、今は楽しめている気がする。

8:00 会社に到着した。いつもより少し早めに着いてしまったからか、一番乗りだった。鍵を開け、中に入ると普段とは違った光景が目に入る。

子供たちが過ごす部屋にいつもだったら無い物体が見えた。

近づいてみると、それは明らかに人だった。

『だれだ?』と不審に思い近づくとそれは、可憐で綺麗な顔をした女性だった。ドキッとした胸を抑えながらも全身を見るとあることに気づいた。

それは、死体だった。首を吊っている。

まるで寝ているかのような、今にも起きそうな穏やかな表情に見惚れてしまう。

『ちがうちがう』と自分に言い聞かせ警察に通報した。

通報した直後、会社の同僚3名が出勤してきた。

状況説明と取り乱している心を落ち着かせた。

『今日の営業…いやしばらくは営業難しいな』と同僚ながらの所長ポジションの人がつぶやいた。

それはそうだろう、人が死んでいた所に子供を預けたいなんて思うはずがない。それにストレートに説明も出来るはずがない。なんと言って休業にするのか?どういう対応を迫られるのか?頭の中がパンクしそうだった。

…もしかしてここに犯人がいる?

そう心の中で思ってしまった。振り返ると、私は昨日休みだったため出勤していない。他の3名は出勤していた。昨日何もなかったと言うことは、3名が帰ってから私が出勤するまでの間の時間にこの状況になったということになる。鍵を持っているのは私含め4名とチーフマネージャーのようなポジションの1名だ。

9:00 警察が到着した。

各自順番に事情聴取が始まったらしい。第一発見者の私が一番に事情聴取された。

昨日は何していた?今日朝来た時不審なことはなかったか?など自分自身の心の奥隅々まで洗いざらい抉り取るかのような気分になった。

警察によると死亡推定時刻は、今日の早朝5:00から6:00の間と見ているようだった。

早朝のアリバイを聞かれたが、4名全員『寝ていた』と口を揃えて答えた。事情聴取を待っている者・終わった者はそれぞれ今日営業ができない旨、今後の対応など忙しく迫られていた。『とりあえず今日は適当に施設の不良とか言って締めよう、親御さんには申し訳ないけど!』という決断に至った。15名以上いる子供の中から今日利用予定のご家庭に一報いれた。

『仕方ない』と言って納得してくれる者。『そんなこと急に言われても困る』と不満を語る者。三者三様それぞれに家庭の背景を感じられた。

『なにかあったんですね』と、ふくみを込めた言い方をする家庭もあった。その言葉を聞いた時、胸の奥でざわつきを感じたがその時は対応で忙しなかったせいか気にも留めなかった。


2008.4.9

同じような時間に起き、同じように顔を洗い、同じように身支度を済ませ、同じような朝食を摂る

そして同じような時間に出勤をする


昨日はあんな事もあり、家に帰ってきたのは22時頃だった。警察の現場検証や事情聴取などに付き合い、解放された思いで家に帰ってきた。

疲れた目を閉じると脳裏には、あの可憐な女性がこっちを見ていた。


『だれだ、君は』

そう問いかける

『私はあなたをよく知っている』

そう答えが聞こえた気がした。

衝撃のあまり勢いよく起きると窓の外は明るく鳥が囀りを響かせていた。

寝てしまっていたようだ。


シャワーを浴び二度寝をし、変わらぬ日常へ戻る。


あの時見た夢が忘れられず、目を閉じると何度も鮮明に蘇るように感じる。


『俺が彼女を殺したのか…?』


そんな疑問すら湧く。。


会社へ出勤するが現場は警察により差し押さえられているため、同僚と私4名で近くの喫茶店に入店した。


外観は緑のツタが張り巡らされた古びた民家のような建前で、内装は改築を仕立てのように綺麗な洋風喫茶になっている。

ここの名物は、定番のナポリタンとホットコーヒーのセットだ。

コーヒーを一口飲み、それぞれ無言で様子を伺っているかのような時が流れた。


2008.4.8

私は、会社へ出勤するとそこには同僚が1人立ち尽くしていた。

その先には、屋根から吊るされた紐に絡まったかのように女性がいた。その見た目は、どことなく寂しさを感じた、私のように。


その日は、警察の対応や利用している家族への対応に追われ帰路に着くのがとても遅くなった。

3LDKの一軒家、ここが私の癒しの場。

この広さに1人はどことなく寂しさを感じるが、今はもう慣れた。離婚から3年。時の進みは早く寂しさも共に過去に置いていってくれた。

疲れた身体を休ませ、布団に倒れ込む。

目を閉じるとあの光景が浮かぶ

吊るされた女性はなにか言いたげに見える。

『何か言いたいことがあるの?』

そう問いかけた。

『私はあなたと同じ』

そう答えが返ってきたように思えた。


…私と同じ?


2008.4.9

出勤すると会社は警察により入れなくなっていた。仕方なく同僚たちと喫茶店へいく。

私はこの喫茶店が嫌いだ。何が嫌いかと言われるとこれと言ってないが、どことなく雰囲気が苦手。

どこか絡みつかれているかのように感じてしまう。

コーヒーを口に運び、みんなの様子を伺う。

みんなそれぞれ同じように様子を伺っているように。


みんなそれぞれが同じ日常を繰り返してるように思えて、時たま違う日常を過ごしている。

私だって会社へ行く日と休みの日とでは過ごし方は違っている。

あの日、あそこで吊るされていた彼女だってそうかもしれない。


あの子…どこかで見た覚えが。


〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・


2008.8.8

あの事件から4か月

未だに警察は犯人を捕まえることが出来ていないらしい。

それはそうだ。

この会社の中、この同僚の中に犯人がいるのだから。

動機としては何かと考えてみる。

金銭トラブル?

不倫?

交友関係?

たくさんのことが想像できる。

犯人に問い掛ければ正解は分かるだろうが、そんなことをしたら自分まで殺されてしまう。


警察はどこまで情報を掴んでいるのか?ドキドキと好奇心を擽られワクワクが止まらない。


『さあ、暇つぶしのはじまりか』


そう心の中でつぶやいてみた。気づいたら笑みが溢れていたらしく、近くに座っていた同僚に不信そうな顔で見られてしまった。

『なんでもないです、すみません』

そう言い私は席を立った。


〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・


2008.4.7


私はなぜかここにいた。

知らない場所にある子供たちの施設。

なぜここにきたのだろうか?

頭をフル回転させ思い出しても全く思い出せない。


『おまたせ、待たせてごめんね』

そう後ろから声がしたので振り返った。


ゴンッ鈍い音と共に私は気を失った。


あぁ、死ぬんだ。そう心の中で。

狭まる視界の中に麻縄が見えた気がした。


〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ