第25話 エピローグ
「ただいま」
美琴は自宅に帰った。杉原は美琴の清々しい笑顔に驚いた。もう帰らないのではないかと思っていた。美琴は、
「今まで心配かけました。」
と言った。彼と別れて来たのか?それにしては明るい。秘密の関係を続けるのか?色々と聞きたい気持ちだったが、夫は無言で美琴を抱きしめた。美琴が今までごめん、と呟いた。それを聞いて、夫は理解した。
帰ってきたんだ、そう実感した。
光瑛は無事に外国へ旅立った。美琴の見送りはなかった。柊一は優華から預かっていたものを光瑛に渡した。それは、美琴が長野で拾い作った紅葉の押し花を入れたキーホルダーだった。光瑛は微笑んであの日の美琴の想いを受け取った。
柊一は気になって光瑛に尋ねた。だが、光瑛は穏やかに笑うだけで何も言わなかった。柊一は思った。二人はもう大丈夫なんだ、と。二人が結ばれた事を理解した。柊一は良かった、とホッとし目頭が熱くなるのを堪えた。
それから美琴は、ずっと夢だった看護学校の教師を目指す事にした。看護師の仕事も大好きだが、その仕事を人に伝え育てたい、といつしか思うようになっていた。
子供たちも手を離れて落ち着いた。そろそろ自分もやりたい事を始めたいと夫に相談すると応援してくれると言ってくれた。それから美琴は大学に編入し必死に勉強した。そして無事に卒業し、看護大学の講師となった。
人の役に立ちたい、ずっと変わらない美琴の夢だ。
光瑛は、海外でも有名になった。美琴はたまに彼らの事をニュースで知る。ニュースに出ている光瑛を優しく見つめた。
光瑛の胸にはあの青い石が常にあった。美琴の胸にも同じ石がある事を杉原は気づいていた。そんな様子を見て杉原は、離れてても二人はお互いを今も愛してるんだな、と感じていた。だが二人が直接連絡を取り合うのを見た事はなかった。夫は時折美琴に、
「光瑛さんに会いにいかないの?」
と聞いた。が、美琴は何も言わず微笑むだけだった。夫は、美琴が穏やかに相手を思っている様子を見続けるうちに、会いに行かないの、とは聞かなくなった。
実際に二人は、直接連絡は取り合ってなかった。ただ、お互いがどこにいるのかは知っていた。あの日の美琴の提案を二人とも遂行していたのだ。
一年に一度のお互いの誕生日に、カードを贈り合い祝っていた。それがお互いの居場所を知る唯一の手段だった。会えない分の年の数だけ、バースデーカードが増えていった。
海外へ渡ったきり美琴に会いに行こうとしない光瑛に、柊一は心配になり、
「たまには日本に帰って、美琴ちゃんに会わなくていいのか?」
と聞いた。だが光瑛は、
「あぁ…。」
とバッグに付けた美琴からもらった紅葉のキーホルダーをみて、少しだけ考えると、フッと笑って、
「いや、美琴、とても元気にしてる。大丈夫だよ。」
と言う。まるで会ってきたかのように言うので、柊一は、
「どうしてそんな事がわかるんだよ?」
と不思議そうに聞いた。
「わかるよ、美琴の事は。離れてても、すぐにわかる。」
と自信たっぷりに言った。柊一には理解不能だったが、光瑛の表情を見て、それ以上は聞かなかった。光瑛と美琴が何かの絆で繋がっているんだと、柊一にも何となくだがわかった。
二人は、自分の夢を叶え続けた。お互いに会えなくても寂しくなかった。毎日充実していて、そんな事を思う暇もない程だった。それでも会いたいと思えば、胸のペンダントを握りしめて相手を思った。また夢の中で会えば色々な事を話し、抱きしめ合って愛を育んだ。周りからは会えずに寂しいだろうと心配されたが、本人達は全く思わなかった。
お互いの胸にはいつまでもパライバトルマリンのペンダントが輝き続けた。
あれから何年が過ぎただろう。
杉原も美琴もいい歳になり、子どもたちも巣立っていった。毎日穏やかに過ごしていた。
ある日、美琴達の決意に気づいてからは言わなくてなっていた言葉を、杉原は久々に言った。
「光瑛さんに、もうそろそろ会いに行っておいで。」
杉原は、それぞれの人生充分に過ごしたではないか、と美琴に伝えた。美琴は、清々しい表情を浮かべ、
「そうね。会いに行きたい。」
と言った。夫は、微笑んで、
「ああ、行っておいで。」
と言ってくれた。
美琴はあれから長いようで、あっという間だったな、と思いを巡らせた。
すると、突然、家の呼び鈴が鳴った。美琴は何か予感がして玄関へ走った。玄関のドアを開けると、そこには光瑛がいた。
「ただいま。美琴。」
大きな花束を抱え、笑顔で美琴を見つめる。その顔には随分とシワが刻まれていた。だが、あの日のままの愛しい魂の半分がそこにいた。
「おかえりなさい。」
自身も歳をとった、少しだけ恥ずかしかったが、笑顔で光瑛を迎えた。
美琴が花束を受け取ろうと腕を伸ばすと、光瑛は花束を床に落としその美琴の腕を引き寄せ抱きしめた。二人はやっとお互いの所に帰ってきた。やっと。
杉原は、そんな二人をみて、やっとか、長かったな、二人ともよく頑張った。静かに微笑んで、そう感じていた。
美琴と光瑛は、笑顔で抱きしめ合いながら、魂の半分同士がお互いに溶け合うのを感じていた。あの日のように、繋がりを感じていた。
二人はツインレイ。何度も生まれ変わり、別れと出会いを繰り返し、お互いに夢を叶え魂は成長し続けてきた。そして、やっと本当の再会を迎えた。
二人の魂は、もう二度と離れる事はないだろう。
自分でまた読み返して、感慨深く感じます。
初めて、人に見せるために書いた小説です。
恥ずかしいとか、言葉の使い方とか、みなさんにわかってもらえるか、などいろんな思いもありましたが、
ずっと、書いてみたいテーマだったので
書き終えて、
ここに出せて
本当に嬉しいです。
読んでいただき、
ありがとうございました。




