第16話 繋がる
手紙をもらい美琴は戸惑っていた。彼の素直な気持ちが綴られていて読むたび会いたさはつのる。でも会っていいのだろうか?会ったら自分を抑えられなくならないか?自分の思い通りにしたらきっと苦しむ人が出てくる。前世で人に裏切られる事がどれだけ辛いか、嫌という程経験した。
自分では答えが出せず、優華に相談した。すると、優華は、冷静に、
「今の美琴は、前世に振り回されている。私はむしろ、今、の彼にちゃんと会って整理をつけるべきじゃないかな?」
と言った。たしかに今の彼と前世の彼は違う人だ。生まれや育ちも全く違う。それに自分の気持ちにも整理をつけないと、この先もずっと幽霊に怯えて生きるような人生になりかねない。美琴は、そう思い決断した。そして、優華と柊一に会う場所のセッテイングをお願いした。
初めてちゃんと会う場所として、芸能人らしくホテルの高層階に部屋を用意してくれていた。そこへ上がるには特別な鍵が必要だ。優華から鍵を渡され指定された日時にそこへ向かった。美琴は緊張してはいたが、今までの苦しさに比べたら、やっと楽になれるのかも、との思いも大きくなっていた。
高層階に上がる専用エレベーターでプレミアムルームフロアにたどり着いた。ルームナンバーを見ながら部屋を探す。一番奥の大きな部屋がそうだった。
すごく高い部屋なんだろうな…と思いインターフォンを鳴らそうとした途端、ガチャッとドアが開いた。美琴は驚いた。光瑛は彼女がそろそろ到着するのでは、とちょうどドアの前に来たところだったようだ。
「こ、こんにちは。」
困ったように顔を赤くしながら美琴が挨拶すると、
「この間はお世話になりました。来てくれてありがとう。」
光瑛はにこりと笑い部屋へ通してくれた。
部屋は広く、スィートルームのようだった。奥の部屋に入ると、そこはリビングになっていて、既に優華と柊一がいた。
「こんにちは、看護師さん!」
柊一がにこやかに挨拶をする。
「なんでそんな風に呼ぶんだよ。」
と、光瑛が少し笑った。美琴は、二人、本当に仲良いなぁ、と改めて思った。だが優華を前にすると、彼女の王子様だ、と思いちょっと照れてしまった。二人が一緒にいるのを見たのも初めてだった。彼はこんな素敵な人なのにお付き合いしないんだ、なんだか変なの、と思って優華を見る。優華は美琴が何か言いたげな表情をしていたので、
「どうかしたの?」
と首を傾げた。が、美琴は何でもない、と首を振った。
四人はソファに腰を下ろした。優華が入れてくれた紅茶がいい香りだ。
四人とも何から話せばいいのかわからなかった。黙ってお茶を飲む。だが、柊一が切り出した。
「まずは、お互いの事から紹介し合おうか。実はちゃんと知らないよね?」
と言った。たしかに。お互いの前世の事は知っていても今の自分達の事はほとんど知らない。おかしな話だ。
それぞれが自己紹介のように、生い立ちや今のこと、いつからファンであるか、など色々と話した。柊一が途中途中に話の腰を折りながら盛り上げようとする。時折笑いながら、四人は話をしていった。
話しながら、美琴は今の彼がどんな人か、みていた。ステージの彼とそんなに変わらない。飾らない笑顔で話している姿に親近感が湧く。だが目が合うとドキドキしてしまう。光瑛は、美琴が今はとても幸せなのだ、という事を感じていた。それが不思議と自分には嬉しいと感じた。彼女の口から結婚や夫の話を聞いたら心が乱れるのでは、と心配していたが、気持ちは穏やかだった。
ひととおり話が落ち着くと、光瑛が
「二人で話をさせてくれない?もちろん、美琴さんが良ければ、だけど。」
と切り出した。美琴もそう思っていた。きちんと話したい。
「私も、そう思ってました。」
美琴が伝えると、
「じゃ、ぼくらは帰るね。」
と笑顔で柊一は、優華を伴って部屋を出て行った。優華はドアの前で少し心配そうな顔をしていたが、美琴が大丈夫、と口をパクパクさせて言うのをみて安心していた。
「あの子、随分と落ち着いたな…。」
優華がつぶやく。柊一はそっと肩に手を回して、頷き、
「俺も、光瑛があんなに誰かを大切に思ってるの、初めてみたよ。」
二人とも、ホテルから出て、最上階をみあげていた。二人の幸せを祈りながら。




