旅の途中
第5話です!
レビューありがとうございました!
自分でもなろうでは少ないタイプの文体のような気がしますが、きっとこう言った雰囲気も好きな同志がいることを信じて書きました!
久しぶりに自分の手癖で創作しているのですが、テンション上がりますね!w
日も落ちかけた頃、目を覚ましたアレンはマサールの影に隠れるようにして荷車に揺られていた。
昼頃に目を覚ましたアレンは、起きるなり視界に入ったヴァルターの姿に再びしゃくりあげ、慌ててマサールが御者の交代を提案したのだ。
マサールは、そこまで悪い奴じゃあなさそうなんだけどなぁ、と内心思いつつも「おじちゃんの顔怖いよなぁ? でも上着掛けてくれたのおじちゃんなんだぜ」なんてアレンに声をかけ、ヴァルターの反応を伺った。
ヴァルターは、一瞬ちらりと二人を振り返っただけで、何も言わず御者に徹している。
その姿を見て、急に怒鳴りつけられることはないと認識を改めたのか、アレンも少し気を和らげたように見えた。
アレンは、栗毛色の髪に琥珀色の目の小さな子供だった。
街にいる母親の元で暮らすために、父親のいるあの町から一人で出ることになったのだ。
小競り合いが終わったばかりで、脱走兵や仕事を失った傭兵があちこちで盗賊になり、町周辺の治安は更に悪化していた。
そこで、離れて暮らしていた母親の元へ避難するような形でアレンは町を出たのだ。
町で一番目と二番目に有名な傭兵の紹介と護衛依頼の仲介をしてくれ、と言うのが傭兵の取りまとめ役に来た地主からの依頼であった。
一番目は言わずもがな、ヴァルター。
二番目は、意外にもマサールだった。
マサールもまた、名の知れた傭兵であった。
ヴァルターのように二つ名や武勇伝はなくとも、依頼の達成率はほぼ百パーセント。
安請け合いも無理な報酬の釣り上げもしない、一度受けた依頼は投げ出さない。ならず者だらけの傭兵には珍しい男だと、人から人へと評判が回っていた。
「今日はここで野宿だ」
ヴァルターが荷車を止め、荷物を担いで、街道の端にある広場へと足を進めた。
マサールとアレンもそれに続く。
広場には前の通行人がそのまま残して行ったのか、石で組まれた竈が五つ。それを囲む椅子のような切株があった。
少し離れた場所には土嚢と薪が積んであり、簡単な屋根も建てられている。
このあたりは街最寄りの休憩所なので、街も少しは手を入れたのかもしれない。
三人は屋根の下へと荷物を下ろし、それなりの広さがある広場を見渡した。
「誰もいないな」
「ああ。ここはあの町にしか繋がってないからな、この時分に通る奴なんかいないだろう」
ヴァルターは荷物の中からマッチを取り出し、竈に薪を放り込んで、乾いた針葉樹の葉を火種にして火を付けた。
火種が移ると、薪はパキパキと音を立てながら燃え上がった。
「マサール、お前は飯の用意をしろ。俺は先に寝る」
「おう。できたら起こせばいいな?」
「ああ」
そう言って、ヴァルターは屋根の下まで移動して、寝袋を広げた。
寝袋と言っても、端切れを縫い合わせただけの質素なもので、背中側に縫い付けたツギハギの革が、硬い地面の感触を僅かばかりに和らげる低度のものだ。
その中に入らず、上にごろりと寝転がったヴァルターは、数分もしないうちに寝息を立て始めた。
「傭兵には肝の太さが大切だって言うが、のび太かよこいつ……」
「おじちゃん、お腹空いた」
「おう、アレン。ちょっと待っとけよ。美味しいスープを作るからな。ライ麦パンもあるぞ!」
ここまで読んでいただきありがとうございました!
お気に召したら、↓の☆をタップして★にして頂けたら嬉しいです!
これからも頑張りますー!