勇者と???と魔王(トーク調)
『はい、ではお互い自己紹介しましょう』
「モモでーす」
「アオです」
「...クロ」
モモ「あれれー?一人協調性のないネクラがいるぅ」
クロ「ああ?」
モモ「ぷふ、自分のことだって自覚してんじゃん」
クロ「うるせーな。てめえのキンキン声が頭に響くんだよ」
モモ「何ですって!?私の超絶プリティーな声が、う、うるさい!?」
クロ「ぐふ、プリティーって、中身ババアかよ」
アオ「まあまあ、二人とも落ち着いて」
モモ「どっからどう見てもセブンティーンのうら若き乙女なんですけど!」
クロ「いや、見た目じゃなくて言葉が古いだろ。今どきセブンティーンって言うか?」
アオ「僕に聞かないでくれる?ノーコメントで」
モモ「はっ!あんたは見るからに陰険そうだわね。そっちのやつも、笑顔が胡散臭いし」
クロ「俺はクールだって言われるんだよ。こっちのやつは知らんけど」
アオ「あれ、僕がディスられてる?もう勝手にやってくれ。僕はこっちの説明文読むから。えーっと何々、“この中に勇者と???と魔王がいます”“ここで会話をしながらお互いの正体を当ててください”...?」
モモ「あっ、景色が変わった。さっきまで真っ白な空間だったのに」
アオ「本当だ。平原っぽいかな?なんか、動物が出てきそう」
クロ「おっ、新しい看板が立ってるぞ」
アオ「本当だ」
モモ「まあ~この中だったら?モモが勇者で間違いないでしょ!魔王ってキャラじゃないし、???なんて意味わかんないもん」
アオ「え~、僕も魔王ではないと思うなあ。そうなると、???か。???ってなんだ?」
モモ「とりあえずアオ、あれ読んで」
アオ「何で僕が。自分で読めばいいじゃん」
モモ「モモさっきの説明も読めなかったもん。モモの国の言語じゃないし」
アオ「ああ、ビザンティン帝国のラテン語だよ」
モモ「なんて?」
クロ「東ローマ帝国のことだろ?確か東ローマ帝国はラテン語からギリシャ語に変わってたはずだけど。時代もバラバラなのか?つーか、ラテン語に違いなんてあんのか?」
モモ「...なんて?」
クロ「ちなみに俺も読めないから解説ヨロシク」
アオ「しょうがないな。えーっと、“いまから野生の小動物が出てきます。可愛がり方をヒントにしてください”だって」
モモ・クロ「へぇー」
モモ・クロ・アオ「・・・」
モモ「何も出てこないよ?」
アオ「おかしいなぁ。うさぎが出てくるって書いてあるけど」
クロ「えっ」
Пиии×××...
一部不適切な画像が流れました
アオ「ちょっとクロ、それ何!?」
モモ「ぎゃー!ありえないんですけど‼」
クロ「いや、看板見る前に美味しそうだなーって思って。から揚げの下準備してた」
モモ「もう絶対あんたが魔王でしょ!」
クロ「はぁ!?だっていつ出られるかわかんないし、食料は早めに確保しといた方が良いだろ!?」
モモ「いやいやいや、ソレ、絶対今から出てくる予定だったウサ」
アオ「モモちゃん、言わないほうがいいんじゃない?」
モモ「うん、そうね。お墓立てとく」
クロ「ちぇっ、お前らには俺のから揚げ食わせてやらないぞ?」
アオ「小学生か」
モモ「はっ!」
クロ「モモ!?どうした?起きろ!」
アオ「!!」
クロ「アオまで!?くそっ、揺さぶっても起きねえ。俺がから揚げ食わせねぇって言ったからか...?」
ヒタヒタ、ヒタヒタ
クロ「なんだ!?うっ!」
ギョロっとした目の黒い影が一人ずつゆっくりと確認するように近づいてきた。
クロ「(動いたら喰われそうだ)」
ペロリ
ヒタヒタ、ヒタヒタ
モモ「...ふぅ、行ったわね」
アオ「危なかった~」
クロ「お前ら、ヒドイな。特に自称勇者!気づいてたんなら言えよ!」
モモ「はあ?何言ってんの?あんたがドンカンなだけじゃない。アオも気づいたワケだし?」
アオ「いや~、モモちゃんが倒れたからすぐ気づいたよ。あれ、動いたり目が合ったらアブナイやつだし」
クロ「マジでヒドイなお前ら!俺危なかったじゃん!」
アオ「たぶんクロからはうさぎの匂いがしたから仲間だと思ったんじゃないかな?あれもうさぎの一種だし」
クロ「出てくるうさぎってあれの事だったのかよ…。ん?たしか、可愛がり方をヒントにしましょうって書いてあったんだよな」
アオ「そうそう」
クロ「じゃあ、一番最初に死んだふりしたモモは勇者じゃないだろ!」
モモ「え?生存レーダーも勇者のスキルの一種ですケド。むしろ、いの一番に気づいたからモモが勇者だって証明されたんじゃん?」
クロ「笑わせんなよ。俺なんてペロって舐められたし?動物から好かれる俺の方が勇者っぽくね?」
モモ「その動物をから揚げにしちゃったクロに言われたくないんですケド!」
アオ「まあまあ落ち着いて。ほら、次のお題が出てきたよ」
モモ・クロ「…」
クロ「そう言えば、お前も俺の事見捨てて死んだふりしたよな」
アオ「え?やだなぁ、僕はモモちゃんを真似しただけだよ」
モモ「な~んか怪しいのよね。色々知ってるみたいだし?さっきの変なやつの特徴も知ってたじゃん。っていうか、モモのせいにしないでよ」
アオ「ははは、気のせいじゃない?まあ、???が賢者だったら僕かもね?」
クロ「ん~、それなら確かにあり得るか?ビザンティン帝国のラテン語を知ってるくらいだし。ちなみに次の看板には何て書いてあるんだ?」
アオ「ああ、あれ。“勇者は魔王の正体を見破りなさい、魔王は勇者に見抜かれないようにしなさい、???は自分が何か当てなさい”だって」
クロ「…へぇ~」
モモ「なんか、さっきと表記違くない?」
アオ「こっちは旧ソ連時代のロシア語で書いてあるよ」
モモ「…違いがわからない」
アオ「現代ロシア語との違いは、文字の配列かな。ソ連崩壊後はороからолоに変わったからね」
モモ「なんて?」
クロ「確かに色々知ってるし、アオが賢者ってのは可能性あるな。でも、そしたら俺かこいつが勇者か魔王ってことか?」
モモ「モモが勇者に決まってんじゃん。ってことはクロが魔王なんでしょ」
クロ「いやいや、何言ってんの。自称勇者、お前が魔王だろ」
アオ「魔王は勇者を名乗らないんじゃない?」
クロ「...えー、じゃあ俺が???で料理人だったりして?から揚げ作ったし」
モモ「料理を分けてくれない料理人とかウケるんですけど」
クロ「人を助けてくれない勇者に言われたくねぇ」
アオ「...」
モモ「何ですって!?ふん、モモ、あっちの方行ってみる。二人で仲良くやってれば〜?」
クロ「モモ!ちっ、俺は反対の方見てくる」
アオ「そう、いってらっしゃい」
モモ「クロのやつ、ムカつく。アオも胡散臭いし。はー、やだやだ、そもそも女一人に男二人っていうのがバランス悪いよね。もう一人女の子降ってこないかな~」
アオ「モ~モちゃん!」
モモ「あ、アオいたんだ」
アオ「女の子が一人は危ないからね」
モモ「...今まさに危険を感じるけどね」
アオ「ん?何か言った?」
モモ「何でもない。クロはどうしたの?」
アオ「ああ、あっちに行ったよ。それより、その先に綺麗な花畑があったから、行ってみたら?」
モモ「へぇ。気になるかも。どこにあるの?」
アオ「あっちだよ」
モモ「え~?何も見えないけど?」
クロ「はい、ストップ。その手に持っているやつを下ろせ」
アオ「...クロ、こっちに来てたんだ」
クロ「アオこそ、何してんの?」
モモ「別に助けて何て言ってないし」
アオ「へぇ?気づいてたんだ、意外」
モモ「モモ、一度もアオのこと???だって言った覚えないし」
クロ「何だ、気づいてたのかよ。助けて損した」
アオ「...何で気付いたんだ?」
クロ「俺、スラブ語系だったら大体読めるからな。旧ソ連の言葉だったら楽勝」
アオ「なるほどね」
モモ「ん?どういうこと??」
クロ「お前よくそれで気づけたな。アオが読んだ最後の看板、全然違うことが書いてあったんだ“勇者は魔王に気づかれないようにしなさい、魔王は勇者を殺しなさい、???は魔王の味方になってはいけません”ってね」
アオ「そ。最初は二人とも殺しちゃえばいいやって思ったんだけど、都合よくバラバラに動いてくれたから変えたんだ」
モモ「まじサイコパスじゃん。ってか、弱そうなモモから殺そうとするとか、サイテー」
アオ「そう?合理的だと思うけど。それに、モモちゃんが弱そうだからじゃなくて、モモちゃんが勇者だと思ったから殺そうとしたんだよ」
モモ「...ぜんっぜん嬉しくない」
クロ「まあ、そんな訳でモモを囮にしてアオの犯行現場を取り押さえようと思ったワケ」
モモ「クロもサイテー」
クロ「ま、これで答えは出たんだし、さっさと脱出しようぜ」
モモ「結局、???って何だったわけ?モモが勇者でアオが魔王、???はクロなんでしょ?」
クロ「ああ、俺?しがないタビビトさ」
『ピンポーン!答えが出揃いましたね。脱出おめでとうございます』
クロ「つーか、俺が魔王じゃないって知ってて俺のこと魔王だって言ってたのか?」
モモ「…てへっ(*ゝωδ)⌒☆」
*当人たちは自分がどれか知らないので、他の人の正体から自分の正体を推理しています