雑念
最低人間だって自分でよく知っているから。
せめてあなたの前ではいい人でありたいと願う。
あなたの前では、いい人。
あなたの前では、いい人。
あなたの前では、いい人。
・
・
・
ときおり、私はいい人なんだと悟る。
悪いのは周囲で、世間で、社会で。
私こそがいい人なんじゃないかと。
そんな疑いを持つことこそがいい人じゃないことの証左だって気づいたとき、何もかもが嫌になった。
苦しいよ。助けてって言いたいのに、まだ言えないの。
いや、違うな。本当は全部知っている。
あなたが、私に助けてを言わせないようにしている。
いい人でなければならないと思う、あなたがいるから。
大切にしたい、と思ってしまうから。
これを吐き出してしまったら、あなたを傷つけたあいつらと同じになるから。
吐きだせない。吐き出せない。吐き出しちゃいけない。
あっ、壊れる。
離れなくちゃ。いい人になるのをやめるんだ。
そうすれば、わがままだって言えるようになるんだ。
助けてって。この涙を止めてって言うんだ。
そう思っていた。
あのとき、言う相手がいなくなるってなぜ気づかなかったのだろう。
笑っちゃうな。
社会は、世間は、周囲は、私を知らない。
私を知るあなたもいない。孤独だ。
けど、これでよかった。
こんな醜い内側、あなた、きっと引いちゃうわ。私も手に負えないもの。
それでも、いい人であろうとしています。まだ。
私はいい人をやめていないのです。
それどころか、あなたといたときよりも、さらに、より深く、生かされていることに感謝しようと思っています。
あなたしかいないと思っていたのに。
不思議ですね。
本当に不思議で、嬉しくて、悲しくて、今すぐ外に飛び出したいものです。
暴雨に打たれたら、少しはこの頭も正常になってくれそうです。
しかし、それはできません。
そんなことしてしまったら、本当の迷惑人になってしまいます。積み上げてきたいい人が、台無しになってしまう。
ああ、台風様。
雑念ごと海へもっていってくれませんか。
明日もいい人でありたい。
私にはもう、いい人しか残っていない。




