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僕と異世界姉妹が魔女の黙示録へ送る復讐譚  作者: ワタナベジュンイチ
第三章 : 帰国
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第三章 1 :ミストドァンク

 特筆して自慢するものが何もない普通の引きこもり高校生アキツキユウトは、ある日突然異世界にやってきた。

きっかけは『あの夢』である事は間違いない。

やってきて早々にローシア、レイナの姉妹と出会い、ユウトが『全てを知る者』という、魔女カリューダの黙示録に書かれたヴァイガル国にとっては敵、姉妹たちにとっては待ち望んだ人である事を知る。

姉妹の宿命である『魔女の遺したものを全て壊す』という目的の為、カリューダの黙示録があるヴァイガル国に向かい、透明になれる女の子『クラヴィ』と出会ったりと様々なことが起こったが、ドァンク共和国を運営、管理する組織『貴族会』の実質トップのエミグランに呼び出された。

 そこで出会ったミシェルという女の子を預かることになったのだが、そのミシェルがヴァイガル国の権力の一つである『聖書記の候補』に選ばれた。

 

 ヴァイガル国としてはドァンクから聖書記候補が出てきたことは由々しき事態として誘拐、抹殺を試みるが、ミシェルを守るため、ヴァイガル国で騎士団長の狂犬エオガーデと闘ったりと、さまざまな困難を運の要素も絡みながら立ち回って、最終的にはミシェルの警護要因としてエミグランの屋敷に常駐して今に至っている。


 エオガーデの死闘から二週間ほど過ぎたある日の朝。ユウトは間借りしているエミグランの屋敷の一室で目が覚めた。


 一人で使うには勿体無いほどの広さの部屋は、カーテンを開けるために窓に向かうと、二度寝するのが難しいほど歩かされる。

 

 時計という便利なものはないが、カーテンを開けて、窓から見える太陽の高さが基準になって次に何が起こるかは想像できた。

 

 そろそろ部屋がノックされ……


 コンコン……


 やはり、もうそういう時間だよね、とノックされたドアに返事をする。


「はーい!」


 ドアの向こうからは、これも予想通りレイナの声だった。


「おはようございますユウト様。開けてもいいですか?」


 太陽の高さから、そろそろレイナが来る頃だろうと思っていたので返事をする前から手早く部屋着から着替え始めていた。ちょっとまってね、と声をかけてから服を着替えると。


「うん。大丈夫だよ!」


と声をかける。

笑顔を携えてレイナが部屋を入るなり一礼する。

かしこまったことはしなくても良いのにとユウトは思っていた。



「おはようございます。ユウト様。」


「うん、おはよう。今日はミシェルと一緒にお城に行くの?」


「いえ。今日はアシュリー様とお姉様です。」


 聞いたのは、ミシェルの聖書記の洗礼の話だ。

ヴァイガル国では、聖書記候補が決まると、すぐに洗礼の儀式が行われて、数日後には聖書記が誕生する。

 

 しかし、今回の候補者はヴァイガル国と遺恨のあるドァンク共和国の人間だ。

まずは不可侵条約のようなお互いの立ち位置や役割や責任を明確にする必要があった事と、事前調停すべき事案の擦り合わせ、書面化する必要があった。


 イシュメルがタフに交渉したこともあって難色を示す部分はあったが、概ねドァンク共和国側に優位になるように決着した。


 第一にミシェルの所在については、聖書記となるまではドァンク共和国側で管理、保護する事。

聖書記に就任した場合は、また改めて話し合いがもたれる。イシュメル曰く、「結局は聖書記は手元に置いておきたいという意志がある。本番は聖書記になってからだ。それまでの先送りでとりあえずの決着だ。」という事らしい。


 つまり、この話は必ず揉めるからヴァイガル国から先送りで妥結を申し入れる形になったらしい。イシュメルも策を練る時間が欲しいので、それに乗っかったそうだ。


 第二に儀式はヴァイガル国主導で行う事。これはもうイクス教にしか出来ない事なのでほぼ即決。条件としてはドァンク共和国側の護衛を儀式に同伴させる事だった。

 ローシアとレイナはこの護衛の役割をしなければならなくて、今日はローシアとアシュリーが警護に行くらしい。


「レイナは次はいつが当番なの?」


 レイナは顎に人差し指を当てて右上を見ながら思い出す。


「えっと……たしか、二日後が私とリン様……です。」


「そっか。わかった。」


聞き出した理由は世間話のつもりだったが


「ユウト様……」


 レイナが指を組んでユウトを困り顔で見ていた。


「え……な、なに?」


「もしかして……お寂しいのでしょうか……わたしがヴァイガル国に行ってしまうのが……」


 ――でた……――


「い、いや!そんな事はないよ!大丈夫だから。」


「寂しいならいつでもおっしゃってください! 姉に代わってもらいますから!」


「いやいやいやいや!ローシアが大変じゃないか!大丈夫だから、うん。」


 レイナはヴァイガル国でユウトがエオガーデと闘ってから、大体この調子だ。

姉のローシア曰く「アンタとの距離感がぶっ壊れてる」と。

その時はわからなかったけど、今になってわかる。

毎朝こうやって起こしにくるし、暇な時間に庭で寝っ転がってると膝枕しようとしてくるし、ちょっとぼーっとしているとエオガーデの事を思い出しているんじゃないかと涙目になるし、二人で屋敷の中を歩いているときは、誰かが狙っているかもしれないと警戒してパーソナルエリアを完全無視した距離にいる。


 全てを知る者を守るため、というのも当然あるのだろうけど、もう少し自分の時間を大切に使って欲しいという思いもあるユウトはレイナとの接し方に困る事が多くなっていた。


 本人には言いにくいので黙って見守ってはいるのだが、十日過ぎてもその姿勢が変わることはない。


 ユウトはせめてもう少しこの世界で自由にできる力があればと思っていた。


 もう少し自分の身を守る事ができれば少しは安心してもらえるかもしれない。

 

ユウトは自分の細い右腕を見た。

エオガーデとの闘いで出てきたあの深緑の右腕。あれが自由に扱えるようになれば、こんなに心配されることはないはずだと思っていた。あの力が自由に使えれば、きっとレイナも心配することは少なくなるだろうと。


「ユウト様?」



「は、はい?」



「お食事の準備が整っているそうですから参りましょう?姉もそろそろ起きて参りますから。」


 この時間にレイナが来るのは朝食の知らせだ、断る理由なんてそもそもない。


「そ、そうだね!行こう!」


「はい!」


 ユウトの希望する自分の未来像は一旦置いておいて、二人は部屋を後にして食堂に向かった。




 食堂には、タマモとローシアがすでに食事をとっていた。


「おはよう。ローシア、タマモ。」


「お!おはようなんだ!」

「……おはよ」


 対象的に元気が良いタマモといつもの寝覚の悪いローシアだ。


姉の横に座るレイナと、向かいのタマモの隣に座るユウト。座る席なんて決められていないが、いつもなんとなく同じところに座る。


 席に座るなりリンがワゴンに乗せて朝食を運んでくる。

目の前に手慣れた手つきでスープや色とりどりのサラダが置かれると、ありがとうと感謝を述べて食べ始める。


 人が増えて尻尾を振る速度が上がったタマモがユウトに尋ねる。


「今日はにいちゃん達なにするんだ!?」


「あ……ああ、僕たちはエミグランさんに頼まれておつかいだよ。」


「私も行きますよ。」


とレイナがタマモのとの会話に割って入る。


「どこにお使いなんだ?」


「えっと……どこだったっけ?」


 レイナに聞くとにこやかに


「ドァンクのマナばあ様のところですよ。」


 と答えた。ユウトは昨日の夜の食事の時に突然エミグランに言われた事を思い出す。


 ――明日、全てを知る者はドァンクのマナばぁのとのところにお使いに行ってきてくれんかの。――

 

 ユウトはドァンクで紫ローブの奴らに追われたので、一度断ったが、エミグランは「心配せんでもレイナを連れて行けば良いじゃろう」と、簡単に言った。レイナは乗り気になって、是非!とすぐにエミグランの提案に乗った。

 ローシアも特に反対はしなかったのでそれで問題ないと言うことなのだろう。もしローシアに気になる事があればすぐに口を挟むはずだ。



「へえ!マナばぁちゃんのところに行くのか!何を持っていくんだ?」


「……なんだったけ?レイナ。」


「バニ茶の差し入れですよ。私も飲みたいな……」


 バニ茶好きなレイナからするとエミグランの言う貴族会御用達のものはいくらでも欲しいらしく、羨ましそうに言う。



「なるほど!あのばあ様もお茶好きだからなー!」



ローシアはいつもと変わらない様子で食事をしていたが、エミグランのお使いの理由を知っていた。


 昨日の夜、自室でエミグランとの話を思い出した。




 *******




 月も高く登った深夜、寝る準備をしていた無防備な時に来る辺りがエミグランのいやらしさを感じた。


「明日、全てを知る者をドァンクのマナばぁという者に会わせる。お主はミシェルと彼の国に行くのでな、念のため伝えておくよ。」


 ローシアはベッドに座って脚と腕を組んで聞いていた。


「何故、そんな事をいちいちアタシに言うのかしら?」


「それはお主には言っておいた方が良いと思ったからじゃ。後で何を言われるかわからんからの?」


 いちいち遠回しに本音を言わないのが鼻につくローシアは、足を組み直す。


「アタシがアイツの行動をとやかくいう事はないけど、聞きたいのは、何のために会わせるのかって事なんだワ。そもそもマナばあって何者よ。」


「お主は、全てを知る者の内に秘めたる深緑の腕を見た事はあるかの?」



エミグランに話したこともないユウトの深緑の右腕の事を、世間話のように切り出した。何でもお見通しなのね。と思わず舌打ちしそうになったがこらえた。しかし

『内に秘めたる』というエミグランの言い方が気になった。



「……何のことかしら?」


 声を殺して笑うエミグランは、顔に出ておるとでも言いたげだ、


「とぼけなくてもよい。でなければ狂犬をあの凡夫以下である全てを知る者が屠る事などできようかね。それを知ったお主が驚かんのは……そういうことじゃろう?」


遠回しにくどいと感じたローシアは大きく息を吐いて、見た事があるかの答えは省いた。


「見たからって何かあるのかしら?」


「もし、その力を全てを知る者が意のままに使えたら……」


 眠気が吹き飛ぶようなエミグランの言葉に目を見開く。ユウトにこうあってほしいと願った事の一つをエミグランが口走ったからだ。


「お主達の悲願にも届くとは思わんかね?」


「……そのマナばあに会えば……できるようになるのかしら?」


 心を悟られないように平静を装うが、すこし声は震えていた。その様子を見てまたエミグランは声を殺して笑う。


「それはわからんよ。」


「……どういうこと?」


「どのような結末になるかは全てを知る者次第じゃな。ワシはきっかけを作るだけに過ぎん。」


「……全て、手のひらの上ってことかしら?」


「フフフ……手のひらの上にいる方が色々とうまく行くこともある。どう考えるかはお主次第じゃな……」


 エミグランの言う事は正直腹立たしい。本音を言わないが、知っているはずなのだ。姉妹以上にユウトのことを。


 だが、エミグランの提案は魅力的に感じたのも事実だ。

あの深緑の腕の力が意のままに使えるようになったら、これほど心強い事はない。ユウトが全てを知る者として目覚める事は姉妹にとっても願ってもない事だ。


どう考えてもエミグランの提案に乗るしかない。


「……言いたい事はわかったワ。そのかわり……」



 *******


 ――アタシたち姉妹の目の届かないところでユウトに何かをしない事――


 エミグランのことを信用しきれないローシアは、ユウトを使って何かをしようとしている事を許すわけにはいかない。

 姉妹の目的は黙示録の破壊だが、エミグランはそれ以外のところを重要視している節がある。

 とはいえエミグランの世話になっている事に違いなく、妥協案として、姉妹を抜きでユウトに何かをしようとしないことを約束させた。

 嘘をつかないエミグランなら、一度肯定したら二度と嘘はつけない。

 回答は「問題ない」だったので、ひっそりと胸を撫で下ろしたところまでを思い出すと、食堂の入り口に誰かが入ってきたところだった。


 「ローシア様! そろそろお時間です。馬車の準備が整いますのでお急ぎを。」


 食事を考え事をしながら7割くらい済ませたローシアにアシュリーが食堂の入り口から声をかけてきた。


「ゆっくりする時間もないワ。」


 残り三割を口の中に入れれるだけ入れて咀嚼しながら席を立ち、アシュリーの元に向かう。


「お姉様!お気をつけて。」

「いってらっしゃい。」


 向き合う仲睦まじい二人のように見えたローシアは、ユウトたちがいる位置から見てもわかるほど口をもぐもぐさせながらにべもなく手を二、三回振って食堂をでた。


 レイナはユウトに向き直り


「ユウト様、今日はお使いの前に、オルジア様のところに寄っていきませんか?」


「え?ミストドァンクに?」


「はい! 数日前からずっと街の方で寝泊まりしているみたいですから。」


 ミストドァンクは、ドァンクにできた、いわばミストの二号店のようなもので、立ち上げにオルジアが中心になって忙しなく動き回っている。

 エミグランの屋敷にもオルジアの部屋は用意されていたが、「帰る暇も惜しい」とかでここ数日はずっとドァンクで寝泊まりしている。


「僕たちが行って邪魔にならないかなぁ……何か仕事するわけでもないのに。」


「大丈夫ですよ。きっとよく来てくれたって喜んでくれますよ。」



「僕も!僕も行きたいぞ!」



 タマモが話に割って入ってくる。尻尾は激しく左右に揺れており、興味津々のようだ。だが、レイナはユウトと二人で行きたいらしく



「えっ?……でも……」


と何難色を示す。


「行きたいぞ!絶対着いていくぞ!」


 宣言されてしまった事がレイナはお気に召さないらしく、眉が八の字になって膨れている。

 そんなこともつゆ知らず、ユウトは


「じゃあタマモも一緒に行こう。」


「わーい!やったやったぁ!」


 と喜ぶタマモを見て笑顔になるが、レイナは少し機嫌を損ねたようで、頬が更に膨れた。





**************






 ドァンク街は毎日獣人で溢れかえっている。今日も例に漏れず獣人が多種多様に行き交う。


 ユウトは少し周りの様子を気にしていた。

もちろんあのローブの奴らがいないか。見える範囲ではそんな奴らは存在しないのでひとまずは安堵する。が油断はできない。

 レイナには念のためドァンクで紫のローブを狙った人達に追われた事を説明すると、殺気立出せてしまい、鋭い目線で警戒を怠らない。

 

「ミストドァンクはあっちなんだ!」


 タマモが指差す方向は街の中心の方だ。

ヴァイガル国とは違って比較的中心の方にある。これはイシュメルが設立に関与していたことも関係する。


 ――ドァンク共和国の新しい太陽が昇るのにふさわしい場所を!――


 と大号令で場所が決まったらしい。

三人でその場所まで向かうと、ミストドァンクという看板が見えてきた。


 ミストドァンクの周りにはすでに人だかりができており、一目で傭兵志願者とわかるくらいの体躯や物騒な剣や槍などの武器を持った種々さまざまな獣人ばかりだ。


「……すごいね、もうこんなに来てるんだ。」


 ユウトは、ミストよりも傭兵の人数が多いと感じていた。


「さすがオルジア様ですね、これだけ集めるなんて……」


 レイナの言葉には同感だった。

ミストといえばヴァイガル国の傭兵ギルドだというのに、流石にドァンクでこんなに人が集まるとはオルジアもさぞかし驚いたのではないかと思った。


「入ってみましょうか。」


「うん。そうだね。」


「あのおっちゃん元気にしてるかなー!」


 三人は所狭しと集まっている獣人の間を割って中に入った。




 中に入ると大盛況だった。入ってすぐ右側の壁には、ミストで見た大きな新品のコルクボードがあり、いろんな依頼書が貼られていて、そこに獣人傭兵は集中して集まっている。中に入ったら身動きが取れなさそうで遠目で見るくらいしかできない。

やはり傭兵の人数はヴァイガル国のミストで見た時よりも多いかもしれない。


 そのそばのカウンターでは、猫の獣人らしき女の子二人が受付として対応していた。すでに人を雇っているらしくカウンターにはオルジアの姿はなかった。


「よう。こっちに来てたのか。」


 後ろから声をかけてきたのはオルジアだった。



「おっちゃん!おはよ!」


 忙しそうなのにオルジアは数日前と変わらず元気そうだったのでユウトは挨拶を交わして驚きを声にする。


「すごいですね、こんなに集まるなんて……」


 さすがオルジアさんとでも言いたげなユウトだったが


「ドァンクも、こういう組織が欲しかったんだろうな。人よりも依頼の数が多い。共和国全体からきてる。」


「共和国全体ですか!?」


 レイナが驚く。

それも無理はない。ドァンク共和国の事についてタマモから学ぶ事があったが、人口と国の面積はドァンクが世界一らしく、全てを回ろうとすると馬車でも十日以上はかかるらしい。

 

 ただ、端の方はほとんど人はいないらしく、人が住むところに限定すれば7日くらいで回れるとか。


「ああ。まあ、人口でいうとドァンクの方が多いからな。人が多い分、依頼も増えるって事だろう。料金は少し安く設定しているが内容もピンキリだ。」


 とオルジアが指を刺す方向を見ると、カウンターの端に、紙の束が置かれていた。


「あれ、全部依頼なのですか?」


「ああ。深夜まで伝書で依頼がくるからな。解決希望日順に並び替えるだけで一苦労だ。落ち着くまで当分の間は屋敷には帰れそうにないな……」


 オルジアは、依頼の難易度や緊急度などを仕分けるためにここにいて、基本的には届いた当日に仕分けをして、朝はほとんどやる事がないが昼からまた新たに届く依頼を捌く作業が待っているらしい。

 落ち着くまでの辛抱だとはオルジア談だが、この様子だとまだしばらく落ち着く気配はなさそうだった。


「セトさんに頼まれたとはいえ、まさかギルドの管理をやらされるとはね……何が起こるかわからんな。人生は。」


 その意見にはユウトも納得だ。今自分がこの場にいる事自体がそもそも何かが起こっている証なのだから。


 「ところで、お前さんたちはここに来るだけのために来たのか?」


オルジアがユウトたちの用事について問う。


「あ、いえ。実はエミグランさんに頼まれて、マナばぁさ……」


「あああああああああ!!」


 突然ミストドァンクに大声が響き渡った。

声は入口から聞こえて、あまりの大きさに全員の耳目を集める。


「こんなところにいやがったか……」


 ユウトもレイナも見覚えがあった。レイナは危険を察知してユウトの前に立つ。


 猿と豚と蛙の獣人。

ユウトがこの世界に降り立ち、エドガー大森林で初めて会った獣人達だ。


 そしてつい最近ヴァイガル国からドァンクに向かう時に、ローシアに馬車から蹴落とされた。


 サイが入口からこちらを指差して顔を真っ赤にしていた。


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