勉強・チラリズム・そして義弟です
翌日、朝食を食べ終わり、セリーヌが出掛けたのを2人は、見送ってすぐに、エレインは隣にいる将生に提案する。
「お勉強しましょう」
提案というよりは強制だった。
何故か朝から体のダルさを感じていた将生だったが、エレインの姿を見て驚きの眼で、マシマジと見詰めてしまった。
何故ならエレインはメガネをかけて、長い金色の髪を後ろで結び、教本を脇に抱えて、教鞭を手に持っていたからだ。
紺色のミニタイトスカートのスーツ姿は、まさしく女教師の格好をしているのだ。
マンガやドラマでしか見たことがない、ミニタイトスカートのスーツ姿は、勉強が少し苦手な将生のヤル気を出たせた。
「エレイン先生、何ですかその格好は?」
「昔に国の繁栄に貢献なさった、渡り人の改革から女性の教師の制服だって、セリーヌが言っていたんだけど………ち、違うのですか?」
「いや、はっはは………合ってますけど、こっちの世界で見るとは思わなかったので………?」
「そうですか、では授業内容はこっちの常識についてです、最低限のことを知らないとこれからマサキさんが困るでしょう?」
「そうですね。じゃあ、お願いします。」
事前に必要な物を取ってきたエレインは将生の隣に座る。
「まずは大陸地図を見て、位置を把握しましょう」
将生が頷いたのを見て、エレインは一枚の紙を2人で見やすい位置に置く。
この地図は今2人がいるフロンディア大陸のものだ、昔の魔法使いが空を飛び描いた物らしい。
フロンディア大陸は上部がやや飛び出ている涙滴状の地形だが、東西を隔てるように山脈が縦長に存在している。
エレインの白く細い指が、大陸中央から見て山脈寄りの南西を指差す。
「現在位置はここ。スディア山脈よりのカリュドンの森に隣接している場所よ。
ディアルグ王国に属しているわ、それほど珍しい街はないけど、特徴は、自然が豊かさくらいね。」
そんな将生を見ていたエレインは次にいくことにしようと考えた。
「この話はまた別の機会にしましょうか、とりあえずは現在位置ですけど………」
そう言ってディアルグ王国の街や村を一つずつ指差していき、確認されている種族の事や、使われているお金の勉強と移行していった。
「計算できるんですね。 しかも早い」
「褒められることかな?」
そう言いつつも、自身でも頭の回転の速さに驚いている。
「そちらでは、今のような計算は出来て当たり前なのですか?」
「早さに差はあるだろうけど出来るようになるよ、みんな学校に通い始めて勉強するように国が指導してるしね。」
「勉学に力を入れている国なのですね。」
将生も、今のところは中間や期末テスト以外は、役立っていない。
いい国ですねと羨ましげな顔のエレインに、将生は遠く離れた故郷がいいところなのだということが、ほんの少し前まではわからなかったが、今は実感を得ている。
しかしここにきて便利さはもとより、平穏に暮らせるだけでも羨む人がいるということを、おぼろげながらも理解できた。
こちらでは町から町へ行くだけで魔物や賊に襲われるのだから、それがない日本は羨まれて当たり前なのだろう。
「地理やお金の話はここまでにして、挨拶について話して、ひとまず終わりにしましょうか。
そう難しいことでもないので簡単に覚える事が出来ますよ。」
エレインは椅子から立ち上がり、実例つきで進めていくようだ。
「親しい人やすれ違うときには言葉のみで大丈夫ですけど、丁寧に行う場合は、このように片腕をお腹のあたりに持ってきて頭を下げます。
そして王族や貴族など目上の相手や敬意を払う相手に行う場合は、右手を心臓にあて頭を下げて、3つ数えて下さいね。」
「動作になにか意味あるの?」
「右手を心臓にあてる事にはありますね。
ほとんどの生物にとって心臓は生きていくうえで大事なものですし、そこに手をあてる事で、貴方は私の心臓のような方です、 貴方なくして私は生きていけませんと示しているそうですよ。」
「それって、プロポーズみたいなっ?」
「そうですね、プロポーズに使う人もいるみたいですよ。 そろそろお昼ですが、もう一つ話してちょうどいいくらいですね。 なにか聞きたいことありますか?」
聞かれた将生は少し考えて、エレインはお腹に手を触れただけだったけど、エレインの胸に手を当てるなら、あのおっぱいがどのぐらい潰れるのかなと考えた。
「じゃあ、女性の挨拶も敬意を表す時も胸に手を力強く当てるの?」
「いいえ、女性の場合は………ちょっとやりづらいですけど、こうですね。」
そういうとエレインは短いタイトスカートの裾を少しだけ上げると、短いタイトスカートが更に短くなり、白い肌の太ももが露になる。
その脚をクロスさせるように、片足を後ろに下げて、タイトスカートを両手で摘まみ、もう片方の足の膝だけを曲げるように上半身を下げながら、頭だけ伏せさせた。
最初から太ももの半分は露出していたが、少しだけしゃがんだ白い肌の太ももが更に露出して、脚の付け根が見え隠れしている。
期待したエレインのふくよかな胸が潰れるのは見れないが、将生の視線は見え隠れする脚の付け根に集中させていた。
(………おぉ、これぞチラリズム!)
もちろんエレインは将生の視線が、何処を見ているのか気付いたが、頬を少し赤くする程度で、将生を責める事はしなかった。
(もう、マサキさんも男の子なんだね、バカ)
エレインにとっては、将生は命の恩人でもあるが、おとなしい弟みたいに感じていたので、イタズラされた感覚に近かった。
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その頃、アルメディア王国のルイス・アフィリア第1王子からの正式な婚約の申し込みを受けてから、数日後………私は、お父様に呼び出された。
そして、元気よく部屋に入ると………見た目が可愛いらしい男の子が立って居たので、素の自分を押し込んで、伯爵令嬢として気を取り直し、その男の子と、お父様に淑女らしく、ドレスを掴み挨拶をした。
「おぉ、セシリア来たか、とりあえず座りなさい。」
促されるままにソファに座るが、婚約の返事も、また保留にするって、決めたばかりなのに、何なのかしらと首をかしげる。
「セシリアがルイス王子からの婚約の申し込みも、今回で3度目だろって事は、王子はセシリアを諦めないと、父さんは思うんだよ。
そうすると、いずれセシリアもルイス王子の申し込みを受け入れて貰わなくてはならなくなる、このクロフォード家の立場もあるしなっ!
そうした時に、クロフォード家を継ぐ者がいなくなってしまうから、養子をとることにしたのだよ、もちろん、分家とはいかなかったが、遠縁だがちゃんとした血族になる子だよ。」
そういって微笑むお父様の後ろには1人の可愛いらしい男の子がぽつんと立っていた。
たぶん、私よりは年下の男の子じゃないのかしら??
この壮大な屋敷に、けおされているのか、ひどく居どころがなさそうにしている。
お父様が男の子を前へと促す。
「アランだ。今日からお前の義弟になる。
セシリア、お姉さんとしてしっかり面倒をみてあげなさい。」
そう言われて男の子は前へ進み出た。
「アランです。よろしくお願いします。」
アラン・クロフォード・セシリア・クロフォード、私が15歳にして、義理の姉弟が出来た日になった。
突然の事態に茫然とする私に、お父様から『お前もあいさつしなさい』という視線をいただき、私も慌てて挨拶を返す。
「セ、セシリアです、よろしくお願いいたしますわ。」
私の挨拶にアランはもう一度ぺこりと頭を下げる………きゃーかわいい
その後、同じ年だという事がわかり、とても可愛らしく思った義弟に違和感を覚えたが、それでも容姿は可愛い義弟の事をなんだか、嬉しく思えた。
白銀の髪は少しくせ毛なのかふんわりしており、思わずなでなでしたくなる。
紫ぽい色の瞳は綺麗な輝きをしているのに、真ん丸でリスみたいで、すごく可愛い、もっと幼かったら、それはそれは可愛がりたかった!
可愛い義弟が出来て嬉しい………しかし、私と同い年って……う~、可愛がりたいのに………う~、僅かに誕生日は私の方が早いけど………う~、でも義弟が出来た事は、やっぱり嬉しいので………今日からお姉ちゃんね。
「というわけで彼をうちで養子にすることになったのだよ。セシリア、セシリア。聞いているかい?」
「……は、はい!お父様、もちろんちゃんと聞いておりますわ」
気が付いたらお父様がなんか言っていたみたいけど……やばい、なんも聞いてなかった。
「そういうわけで、アランは遠くからの移動で疲れただろうから、今日はもう休ませるから、明日からしっかりお姉さんとして、面倒をみてあげるのだよ。」
確かによく見ると義弟くんの顔色はあまりすぐれず、疲れているように見えた………長旅だったのかしら!?
少年はそのまま、お父様に促され与えられた寝室へと案内されていった………ゆっくり休んでね。
その寂しいそうな背中を見送り、私は自室へと向かった。
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