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黒き竜殺しの思春期少年、少女達  作者: 正 三元
第3章 変格の兆し
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他人への治療魔法

そして1人の老人が槍を杖にしながら、曲がった腰で待ち構えて、もう1人は木壁に寄りかかって、将生が近付いてくるのを待ち構えている。


頼りになりそうもない門番だな、とセレペスのクロフォード伯爵の私兵と比べてしまうと、正直な感想が間違ってはいないと確信する。


「おい、そこの若いの?この村に何ようじゃ?」


「えっと、僕は依頼の為に来た冒険者です」


将生はフローラに言われた通りに、先ずはマーベラの母親の家を訪ねて来た事を告げる。


「ここマテーラ村のシンディさんの家に、今日は来たんです。」


「シンディのとこかい?」


「はい、シンディさんのお宅は何処か教えてくれませんか?」


「ふむっ!案内してやろう、ではこっちじゃ」


1人の老人が返事をした後、後ろに付いてマテーラ村へと入り、老人は門扉の所にいたもう1人の門番に大丈夫とのニュアンスを示すと、そのまま村の奥へ入って行く。


村内に入ると村人の視線が、一斉にこちらへと集中する。


余所者が珍しいのかも知れないのか?でも、今は気にする必要はないので、歩み続ける。


村内の雰囲気はセレペスとは違って家は、町にあった木造家屋と同じだっただろうと思われる、崩壊している家が何軒かあり、人が住んでると思われる家も、どちらかと言うと山小屋風味の家が、立ち並んでいる。


その内の一軒に老人が近づいていき木の扉を叩くと、中の住人に呼び掛ける。


「シンディさん、いるかいっ!? あんたとこにお客さんが来とるよっ!!」


中で女性の返事が聞こえると、しばらくして木扉がそっと開けられた。


開いた木扉から出てきた人物は、少し視線を下げるぐらいの、女の子が将生を見上げていた。


「おうっ、マーベラか?お母さんはいるかい?この冒険者が用があるそうだよ。」


老人の質問にマーベラと呼ばれた女の子は小さく頷くと、家の中へ入るように促してくる。


「じゃ、わしはこのへんで……」


それだけ言って老人は門の方へと戻って行く。


「えっと、おじゃましまーす。」


家の中に入ると、すぐ脇には台所だろうか?元の世界での昔話やおとぎ話のマニメに出てくる、土を突き固めた場所に火を炊く為の石組みがある。


いくつかの木製の食器類が簡易的な戸棚に、並べられて整理されているのを見ると、ますますむかし話のアニメを思い出して、懐かしく感じてしまう。


一段高くなった、その上に木製の家財道具が配置されているが、その数はあまり多くなく、手前にテーブルと椅子四脚、奥にあるベッドを隠すようにある衝立くらいだ。


テーブルの前で不安げな眼差しで見つめてくる少女は、教会でベッドの上から手を振ってくれた女の子が無事な事がわかって、一安心だと息を吐いた。


だが、マーベラの大きな瞳は奥の衝立とこちらを交互に見ながら忙し気だ。


すると衝立の奥から1人の女性が出てくる、容姿は長くした髪を後ろで束ねて垂らしている、二十代後半ぐらいの女性が、おぼつかない足取りで、歩いて来る。


ケガでもしているのだろうか?と思ったが、表情はおっとりとした雰囲気があり、身長百六十半ば程で、首からはロザリオのネックレスが垂れている。


着ているワンピースに包まれながらも、張り出した胸が生地を膨らませて、大きさを強調している。


「マーベラの母、シンディと言います。

あの、失礼ですが何か御用でしょうか?

貴方のような若い冒険者さんと関わる、御縁などなかったように思うのですが?」


「えっと、あの、足を悪くしているみたいなので、まずは座って下さい。」


「あ、ありがとうございます……それで家に御用とは?」


シンディは礼を言って、テーブル前にあった椅子に静かに腰掛ける。


彼女の用件の問いに、フローラから言われて来た事を告げる。


「えっと、あのフローラさんから、お願いされまして………それを受けた僕がマテーラ村まで来たんですよ?」


「えっ?姫様がそんな事を?マーベラはこのように、此処にいますが、ヘレンは、外に出てますので昼頃には戻るかと………」


フローラの話とは違って、マーベラは家に帰ってきただけなのではと、将生は考えた。


まだ、あどけない女の子なのだから、母親の傍に居たいと思うのも無理はないだけに、フローラの勘違いではないかと思った。


とりあえずは、ヘレンが今は外に出掛けていて留守の様なので、もうすぐお昼になるのだから、ここで少し待たせて貰うとしよう。


「じゃあ、少しこちらで、ヘレンさんを待たせて貰っても構いませんか?」


「えぇ、構いませんが……」


もてなしと言われる前に言葉を発して、シンディが続けて言おうとした言葉を遮る。


「あっ、その前に、えっとシンディさんの、その足は怪我か何かで?」


おぼつかない足取りの女性に、お茶とか用意させるのも、悪いと思っての事だが、待つ間の退屈凌ぎに、当たり障りのない会話を試みる。


彼女は自分の左太ももに手を添える。


その手の動作が、巻かれているだろう包帯は………いや、怪我をしているのは左足の太ももなんだと理解した。


シンディは少し心苦しそうな表情をする。


「最近、近くに盗賊が出まして、逃げる際に足を怪我してしまいましたが、私は突然何かが現れて、助かったので良かった方です。

拐われた女性や、殺された人もいたので……」


ヤバいと思ったが、既に家の中の雰囲気がどんよりとしてしまった。


シンディの背に隠れていた幼いマーベラも、シンディの雰囲気に合わせるように、しょんぼりとしてしまったが、その盗賊を警戒しての2人の門番がいるのか………


んっ?あの2人の老人に盗賊が相手が出来るのか?不安しかないが、ここは聞かなかった事にしよう。


そう言えば、怪我なら治療魔法で治せないだろうか?エレインに叩き込まれた、絶大な効果を与える、僕の治療魔法で………!?


んっ?………そうです、初級レベルだけど?治せるんじゃないか!?


初級と言っても切り傷や火傷に凍傷は治せるし、同レベルの呪いの解除も出来る魔法だ。


………限定はされるがなっ?


「えっと、シンディさん?い、いえ、その……良ければ少し足を診せて貰えませんか、成功するかわからいのですが、傷を治す魔法術を少し使えるので………」


「えっ………ま、まほう?まじゅつ?」


シンディは将生の提案に戸惑いがちに声を出したが、無理もないだろう、今日会ったばかりの相手から、いきなり足を見せて欲しいと言われれば、拒否したくなるのも頷ける。


しかし、幼いマーベラは違ったようで、母親の足が治ると聞いて、真剣な眼差しで見つめながら、一生懸命に母親のお尻の側面を両手で、ぐいぐいと押している。


これには母親のシンディも苦笑しながら、観念した様子でこちらを伺う様に見る。


シンディにもう一つの椅子に足を乗せて、ワンピースの裾を上げていく。


長めのスカートの丈が、みるみると足の付け根が見えそうになるまで捲れると、包帯というより、少し赤く染まった白い布が現れた。


その布をほどき始めるシンディの手伝いをするつもりなのか、小さなマーベラの手が布に伸びる。


マーベラ本人は手伝っているつもりなんだろうと思いつつも、その小さな手のおかげで、更にワンピースが捲れていく。


………ナイス!幼き少女よ。!?


布が赤くなっていた部分から判断すると、太ももの後側が怪我をしている箇所だ。


将生はシンディの前でしゃがむ!


ほっ、ホワイト………!?


将生が目の前でしゃがむスペースを作る為に広げた足の付け根!?


いや、シンディのショーツに包まれている股間部分が、どうしても見てしまうが!!


「あのぉ~恥ずかしいので、あまり見ないで頂けないですか?」


「はっ、はい………ごめんなさい」


注意される程に目が血走っていたのだろうかと反省しつつ、気を取り直して、両手を傷口があるだろう、太ももの裏側に片手を添えて、もう片の手で太ももの上に添えて、肌触りを確認すると、年の割にはすべすべとした肌の感触は………


ちっがぁーう!?


ゴホン、両手で太ももを挟むと、手のひらに魔力を込めて、魔法を発動させる。


【大地に満ちたる命の躍動、汝の傷を癒せ。ヒール】効果:初級レベルの治癒魔法。

切り傷から火傷・凍傷・捻挫などを治すことが出来る。同レベルの呪いの解除することが出来る。


そう詠唱すると両手から柔らかな光が溢れて、怪我をしているであろう足の太ももに、その光が収束していき、やがて弾けた。


その光景を母娘2人が茫然と見ていたが、娘のマーベラが母親の足が怪我をしていた、箇所を覗き見ると、まるで何事もなかったかのように、綺麗な状態になった事を報告する。


「ママっ、怪我が?傷ないよ。!」


マーベラの顔が先程と打って変わって、まるで電球が光るかのように笑顔を灯し、ぴょんぴょんと跳ねて嬉しさを体一杯で表現している。


そんな笑顔を見てシンディも娘の頭を撫でながら嬉しそうにしていたが「あの、充分に堪能して頂けたら、退いて頂きたいのですが?」と、再び将生が見ていた事を知っていますよと促した。


そう言われて慌てて退いた将生は、立ち上がると頭を下げて「ごめんなさい」と言うと、やがてシンディも頭を深々と下げて礼を言う。


頬を赤く染めている2人を、幼いマーベラは不思議そうに見上げていた。


「ありがとうございます。まさかあれ程の傷が痕も残らないなんて信じられません……」


「いや、自信はなかったのですが、傷が癒えた様で良かったです。」


他人に治療魔法を使うのは今回が初めてだったが、そこは何となく黙っている方が良さそうなので、適当に話を合わせようかな………


それにしても母親のシンディの反応から見る限り、魔法を使う人間は一定の認知度があるようだ。




ここまで読んで頂きありがとうございました。


誤字脱字あれば遠慮なくご報告して下さい。


今後も読んで頂けたら、幸いです。


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