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黒き竜殺しの思春期少年、少女達  作者: 正 三元
第2章………待ち構える世界
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美人なエルフさん

次の日も将生は雑務系の依頼を受けていた。


昨日の浮かない表情も今朝のフローラは、いつも通りの表情に戻っていたので、気持ちよく依頼を受けた将生だった。


今回は初めての時と同じような薬草採取の依頼だが、技術的でも力仕事でもないのを受けたことは、いつもだろと言われ兼ねないが、今回はご愛嬌というものだろう。


今日の1つ目の依頼は昼までに帰る事を目標にしている、人には些細な目標があった方が、何事にもいいと思ったからなのだが………


今、依頼を達成したのに、将生は深いため息を吐きながら、ギルド会館がある町、セレペスまで後少しの距離を歩いている、時刻は既に午後の3時近い。


午前中に終わらせ、教会に行くフローラに終了報告と、手に持っている肉の塊を子供達に持って行って貰おうと思っていたが、時間的にギリギリだ、既に精神的に疲れている将生には、急ぐことはしない。


それは午前中の依頼中の事だった。


その瞬間、森の茂みから大きな黒い物体が目の前を横切るかのように、飛び出してきた。


………魔物?幻獣か?


そう思ったが、よく見ると普通のイノシシよりも大きい体格をしているだけで、どうやら普通のイノシシだった。


飛び出してきたイノシシも、将生の存在に気が付いたようだ。


イノシシは里山を中心に生息し、鼻の力が強く、ジャンプも得意で、大きくても、大きさは頭胴長120センチくらい、体重100キロくらいで、走る速さも早く、弾丸形の体型での、突進の破壊力は凄まじい。


そして何より、イノシシは雑食で何でも食べるが、夜行性で夜間に活動する筈なのに、今は将生の目の前にいる。


学習能力が想像以上に高いことから、1度経験した事を恐れないようになるって事は、目の前のイノシシは人との戦闘を経験していると、将生は感じた。


だが、将生の目の前にいるイノシシは臨戦態勢らしく、此方を威嚇している。


大きさは1メーター以上の大きさなのだから、随分と長生きている証だ。


縄張り意識が強いイノシシの縄張りに入ってしまったのか、見るからに荒ぶっている。


目を血走らせている姿はまるで魔物と同じだろう、口からぶくぶくと泡を吹き溢し、反りのある鋭い牙は、将生の膝上辺りくらいの高さだ!?


と、ここまで夜刀が教えてくれた。


『主さま、せっかく主さまの知識のように教えながら、黙っている風にお教えしたのに………はぁ、私はガッカリです。』


「………ご、ごめんなさいって、僕が悪いの?」


『はぁー』と呆れたと言わんばかりの、大きいため息音が将生の頭の中で響いた。


とにかく、夜刀が教えてくれた事を頭の中で考える間に体の方が、勝手に動いていた。


荒ぶっていたイノシシが、いきなり突進して来たのだ。


それを横飛び前転で交わし、受け身をとった状態だと、黒き剣では間に合わない。


将生はとっさに買ったばかりのナイフを抜き、生き物の致命的な弱点でもある首を突き刺そうと、握ったナイフを突き出し、突き刺さった感触と同時にナイフを手放した。


首の根元までイノシシを突いただろか?、ナイフが刺さったままで、イノシシは突進を続けてる。


直ぐに黒き剣を抜いて構えたが、イノシシはその勢いのまま、まっすぐ進み、樹木に激突すると、しばらくよろめき血を吐いて息絶えた。


狙ったわけではないが、首の頸動脈に刺さったか?、突然の慣れないナイフでの戦闘だったが、どうやら上手く主要な箇所を突いたようだ、魔性の幻獣もそうだが、野生動物のしぶとさというのは侮れない。


死んだと思って近づいたところで、突然暴れだして、こちらが大怪我をする場合もある。


少し間を置いて、黒き剣を持ち間合いの外から、一気に確実にトドメを刺そう……と、思った時に夜刀の忠告で将生は気が付いた。


『主さま………』


倒れたイノシシに背骨から腹に向かって、白い矢羽の矢が刺さっているのだが、まったくといっていいほどに、矢が飛んできた事には気付かなかった。


「これは……?」


その意味に、思考が至るより先に、背後から、再び藪の鳴る音に………振り向くと………人が居た。


視界の中に鋭い瞳が、将生を睨み据えている。


その鋭い瞳を少し隠すような前髪の中に少しつり上がっている眉、すらりとした鼻筋に、優美な顎のライン、きっと引き締められた口元は美しい少年だった。


『主さま、よく見ていらしゃいますが、あの胸の膨らみに露出している曲線的な太もも………何よりスカートですから、あれは女性です。』


「いや、それどろこじゃないでしょ?」


その手には弓があり、既に矢がつがえられている。


………白い矢羽の矢だ。


まだ引き絞られてはいないが、その気になれば即座にそうできる、といった緊張感に思わず黒き剣を構えてしまった。


夜刀が言うように見てみると、装備は土色と草色を基調にした上衣に、垂直に立っているスカートから伸びている健康的と言ってもいい肌色の、頬をスリスリしたいと思える。


そう曲線的な太ももをあろうことか、地面から隠そうとしているかのような皮のブーツ。


背中には矢筒が吊るされており、腰には剣を装備している、狩人だろうか………?………それより何より、驚いたのは少し尖ってるその耳だ、そして美しい顔立ち………『おぉ、エ、エルフッ!?』


『主さま、あれは樫または木の聖霊ドリアデスの系属の森の民エルフ族ですが、少しばかりおかしいかと思われます。』


「んっ?どういうこと?僕を狙ったままだよ」


双方ともに言葉を発さず、動作もしない………場に、徐々に緊張感が満ちてゆく………まずい。


『主さま、あの女性はハーフのダークエルフだと思われます、聖霊の力が少し弱いと感じます。』


「ハーフのダークエルフと言われても………これは、まずい局面だと思うんだけど?………………おーい?

黙りかよ。」


最近は直ぐに無言になる夜刀は置いとくとしても、初めてのエルフ族との接触だとか、感情にふける余裕もないのだ。


見知らぬ2人の偶発的な初対面は緊張感を今はもたらしているのだから!?。


きわめて危険とされる状況の中で、自分が危険人物ではない事を証明する手段がないのに、ここの場所ときたら、セレペスから、人里から離れた森の中だ!


お互いが、武装した相手に突然遭遇しての臨戦態勢になっているが、今はお互いに1対1だ。


エルフって、人間の敵なのか?それとも味方たのか?わからない?わからな過ぎて、エルフを討伐したら?人殺しになるのかもと考える。


じゃあ、戦闘しないなら笑顔を浮かべて握手でも求めるのか?


自分が相手だったとして、不意に遭遇した男が剣を持って構えてるのを解いて………突然、にやりと笑って手を差し出してきたとして……それを取れるか……?


僕なら取らないね。


あるいは、武器を手放して無害アピール?


相手が既にやる気だったらどうする?


美少女のエルフだから………許すか?


………ちがぁーう


手放す動作が攻撃行動の予兆と勘違いされる可能性は?………間違いなくあるよな!?


フゥー、気が抜けない。


この状況で、このまま緊張感と警戒が釣り上がって、殺し合いに発展する可能性があるからだ。


でも、人間ではないと言っても、美人のエルフ………いや、女性は殺せないよなっ!?


前世の世界でも女性には手をあげるなって、常識的な事だったし、こっちでもそれは同じ事だと思う?


相手側も、どう対応しようか迷いながらも緊張と警戒を高めている。


将生の武装に対して、確認するように素早く視線を巡らせているのがその証拠だ。


戦闘か逃走かの選択を迫られているのだ。


………まずい、まずい。


このままだと殺し合いだ、何を言えば、何をと?………ふと、頭の中の将生の優秀なパソコンが解決策を導きだした。


そうだ『突然・出会い・戦う・気持ち・ない。』と、ジェスチャーをする?・?・?


『主さま………バカですか?』と、黙っていた、夜刀が将生にツッコミを入れてくる。


それが適切なツッコミだろう、ジェスチャーは共通する物を行動で表現するもので、言葉の一言をジェスチャーで表す事は、非常に困難だろう!!


それにジェスチャーをする動作が攻撃行動の予兆と、勘違いされる可能性はあると思う。


では、残っている可能性は、エルフが人と同じであれば、同じ地域に住んでいるのだから、こっちの言葉で通じるんじゃないかと、一言一言、できるだけ慎重に、綺麗に発音して言葉を発した。


「突然・出会い・戦う・気持ち・ない。」


目の前のエルフが弓を下ろして、一言。


「んっ?突然だったが出会ってしまったけど、戦う気持ちはないと言いたいのか?」


言葉を発した声が鈴の音のような綺麗な声だけど、人間の言葉を話せるんだ。


「お前、ちゃんと話せないのか?」


「いいえ、通じないのかなっと思って……」


良かったと将生も剣を鞘に納める。


たぶんだが将生はエルフの事を誤解していた、こちらの世界で使っている言葉は、エルフが話す事が出来ないと思っていたのだ。


でも、人と同じ言葉が通じて、本当に良かったと、少しは緊張がとけるかもしれないと思ったが、大当たりだった。


「まぁ、意味はわかったわ………それより……そっちのソレは、あんたが仕留めたの?」と、エルフの彼女が指差すのはイノシシだ。


「あぁ、僕が………」


そう言うと、彼女はちょっと眉をひそめた。


「はぁー、ソイツは、私の獲物だったわよ。」


イノシシに刺さった矢を指さして、女エルフが断固とした意思があるような口調で言ってくる。


矢羽根も、彼女の矢筒の他の矢と同じ白いものだ。


あまり時間を発たずに、イノシシを追ってきたことからしても間違いないだろう。


「あんたが、横から殺したのよ」


でも………とどめを刺したのは女エルフ自身だと言いたいのだろうが、そう言わずに「獲物を横取りをした」と言わんばかりの表現をしているというのは………恐らく実際に、そうされることを警戒して、牽制しているのだろう。


………参ったな………


「でも、しょうがないだろう、いきなり突っ込んできたんだ、身を守る為にやむなくだし!」


これはつまりは対人交渉だ。


「とどめを刺したんだから、その分の権利は主張できるんだろうか?」


『(あやつ、もしかして?あいつなのか?)』


夜刀が声を出さずに何かに気付いたようだが、将生には聴こえていないので、それからあれこれ交渉した。


美人の女エルフはなかなかの交渉上手で、まぁ、いいように翻弄されてしまった。


こっちは15才の少年なんだぞ!





ここまで読んで頂きありがとうございました。


誤字脱字あれば遠慮なくご報告して下さい。


今後も読んで頂けたら、幸いです。


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